
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)08月03日 月曜日 徳洲新聞 NO.1554 4面
徳洲会グループは6月20日、吹田徳洲会病院(大阪府)講堂で大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)と将来的な共同臨床研究を目的とした合同カンファレンスを初開催した。互いが注力している研究内容や、徳洲会内での研究・データ収集体制の現状を提示し、協力できるポイントを探った。徳洲会は阪大に異種移植に関する共同研究講座を開設している。
IFReCと徳洲会合わせて43人の医師らが参集
冒頭、大橋壯樹・徳洲会副理事長兼名古屋徳洲会総合病院総長は「徳洲会グループは長年、急性期医療に注力してきましたが、基礎研究にも力を入れなくてはいけない時代になってきています」と指摘、共同研究の意義を強調した。続いてIFReCの竹田潔センター拠点長兼粘膜免疫学教授が、昨今の流れとして「免疫学の基礎研究においても、ヒトの免疫システムを解析し、実際の疾患の克服に直接つながるような研究が求められています」と明かし、徳洲会との連携に意欲を見せた。
IFReCの荒瀬尚・免疫化学教授は「ネオセルフ:自己免疫疾患、癌の新たな診断・治療標的」と題し発表。免疫システムの中心的役割を担うMHC(主要組織適合性抗原)のうち自己免疫疾患発症にかかわるMHCクラスⅡのなかでも、特定のタンパク質の発現が低下する自己抗原「ネオセルフ」(阪大が命名)が自己免疫疾患を誘発する機序を解説。また、ネオセルフを標的とした治療法の開発が、これまで治療が困難だった自己免疫疾患やがんなどの新たな治療選択肢となり得ることを示唆した。
IFReCの山本雅裕・免疫寄生虫学教授は「腫瘍微小環境の免疫細胞サブセットの機能解析とその制御によるがん免疫療法の開発」がテーマ。免疫チェックポイント阻害剤の使用にともなう自己免疫による有害事象(irAE)を回避し得る抗PF4中和抗体の開発に至った経緯を解説した。山本教授は、同治療法は現在、特許出願中で、今後の研究のため「徳洲会グループにヒトのがん検体を提供してもらえれば」と呼びかけた。
IFReCの松岡悠美・皮膚アレルギー生体防御教授は「アトピー性皮膚炎・慢性蕁麻疹病態解明と新規予防および治療法の開発」。アトピー性皮膚炎(AD)に対する保湿剤の効果に関する研究を紹介。また、皮膚のランゲルハンス細胞を標的とした阻害薬の早期投与がAD発症予防につながるか、その可能性を調べる研究を実施するなど未病の解析に取り組んでいる。今後、より詳細な病態解明のため、地域特性のない臨床データをもつ徳洲会グループの協力に期待を寄せた。
IFReCの竹田教授は「炎症性腸疾患の病態解析」。炎症性腸疾患(IBD)は、腸内細菌が内粘液層に入るのを阻害するバリア機能の異常と、腸内細菌自体の異常が複雑に絡み合っていることなど解説。さらに、患者さんごとに異なるさまざまな要因もあり、今後はこれを探っていくため、治療前、治療中の患者さんの検体提供に向け、徳洲会グループの協力を得たい考えを示した。
札幌東徳洲会病院の前本篤男・副院長兼IBDセンター長は「IBD(炎症性腸疾患)臨床の実際~臨床研究に向けて~」。近年、IBDの高齢発症例が増えていることに言及。若年から高齢まで幅広い患者さんがいるなか、「その人が人生をどう全うできるか」を念頭に「多様な治療選択肢をいかに使いこなすかが臨床医としての課題」と強調、IFReCに共同研究を呼びかけた。これに対し、IFReCから「若年発症と高齢発症の病態の違いは、私たちも知りたい。ぜひ一緒にやりましょう」と応じた。
八尾徳洲会総合病院(大阪府)の瓜生恭章・副院長兼腫瘍内科部長は「~『徳洲会における学術活動』徳洲会リアルワールドデータが広げる新たな可能性~」。グループ病院は電子カルテの医療コードが統一されていることなど、研究しやすい環境が整っていることを紹介した。また、先行の研究事例として肺がんのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の第一~第三世代までの使用状況の調査や制酸剤併用の有無などによる治療成績の比較を紹介した。
野崎徳洲会病院附属研究所(同)の山口智之・免疫システム研究部門部長は「自律的制御理論:ランダムな増殖と死の繰り返しで適切なバランスを実現する」。免疫バランスがどのように制御されているかを報告。2種類の細胞の数が増殖や死で変動する場合をシミュレーションした結果、一時的な変動はあっても、細胞死の確率が低くなる細胞比率に戻る動きを見せた。試行錯誤的に適切なバランスを自動的に実現するこの仕組みを医療に応用できるのではとの持論を展開した。
閉会の挨拶では、小林修三・徳洲会副理事長兼湘南鎌倉総合病院(神奈川県)院長が登壇。小林・副理事長は「異なる分野・領域の研究内容を聞くことで、新たな(研究の)アイデアが湧くこともあります」と指摘、「1回で終わらせるわけにはいきません」と来年以降の開催に意欲を見せた。