徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2026年(令和8年)08月03日 月曜日 徳洲新聞 NO.1554 3面

東京西病院
科研費でVR画像支援システム開発へ
胆膵内視鏡治療の安全性や多職種教育に効果

東京西徳洲会病院消化器内科は文部科学省科学研究費(科研費)を活用し、「胆膵Interventional EUSにおける空間コンピューティング画像支援システムの開発」をテーマに研究を進めている。同院は2024年8月8日に科研費助成事業の研究機関に指定。院内に構えた臨床研究支援センターで、医療技術の向上や学術的な貢献を目指す研究者をサポートしている。

科研費で研究する意義を語る地主センター長(右)と田嶋・事務次長 胆管・膵管の立体構造を可視化した3D画像をVRゴーグルで確認

同研究の責任者を務める地主龍平・消化器病センター長は、研究内容について「ひと言で言えば、XR(Extended reality)技術を応用した医療支援の研究です」と説明。「消化器内科で行う胆膵内視鏡治療、たとえば内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ER-CP)や超音波内視鏡下瘻孔形成術(Interventional EUS)といった胆管や膵管を造影しステントを留置する治療で、この技術を活用しています」と明かす。

これらの治療では、X線画像を見ながらカテーテルやガイドワイヤーを目的の部位へ挿入するのだが、X線画像だけでは体内の立体的な解剖(構造)を把握することが難しく、今どこにガイドワイヤーが進んでいるのかを直感的に理解しにくい場合がある。

とくに本来は胆管へ挿入すべき場面で、気付かないうちに膵管へ繰り返し挿入すると、治療後に重篤な偶発症である「急性膵炎」を引き起こすリスクが高まる。こうしたリスクを回避するうえでも、事前に走行を正確に理解しておくことがきわめて重要だ。

そこで地主センター長は、「治療前にCT(コンピュータ断層撮影)やMRCP(胆管膵管撮影)のデータから、患者さんごとの胆管・膵管の立体構造を可視化した3D画像を構築し、それをVRゴーグルで確認できるシステムを導入しました。これを治療前のシミュレーションや術中ナビゲーションに活用することで、体内構造をより直感的に理解できるようになり、安全で確実な治療につながることが期待されます」とアピールする。

同院では医師だけでなく、看護師や臨床工学技士(CE)も同治療にかかわるが、同研究は教育ツールとしての側面も大きい。たとえば、胆管を緑、膵管を青などに色分けし表示することも可能であり、視覚的な情報が得られやすい。

地主センター長は「被曝なしで3D解剖を学べるため、若手医師や看護師、CEといった初学者にとって非常に優しい教育ツールと言えます。また、事前カンファレンスで、コメディカルを含めたチーム全体が解剖を正確に把握し手技に臨むことは、結果として患者さんに、より安全で質の高い治療を提供できるというメリットもあります」と手応えを語る。

構築した3D画像は、事前シミュレーションだけでなく、治療後の復習材料としても活用できる。また、画像データさえ残っていれば、術後にも3D画像を再構築できるため、実際の症例をもとにした振り返り学習が可能だ。同院では、これまでに悪性腫瘍による狭窄症例などを中心に数多くの3D画像を構築し、臨床および教育の場で活用してきた。

田嶋康宏・事務次長は、民間病院で科研費を活用し研究する意義について、「大きくふたつあると感じています」と説明。ひとつ目は“若手の教育”と“モチベーションの向上”。「民間病院でも、公的な資金を得て最先端の研究に取り組める環境があることは、若手医師や看護師、CEにとって大きな刺激になります。実際に当院のコメディカルスタッフは非常に意欲的で、本研究の成果について、主体的に学会発表の準備を進めています」と力を込める。

ふたつ目は、“豊富な臨床経験を学術的価値につなげられること”。「徳洲会グループの豊富な症例や日々の診療現場で生まれる工夫や課題を、研究として体系的に検証し、学会発表や論文として発信することで、より良い診療につながる知見を共有することができます」(田嶋・事務次長)。

今後、同研究は対象を胆膵領域だけでなく、食道・胃・十二指腸・大腸などの消化管狭窄治療にも拡大し、より幅広い疾患への応用を進めていく考え。地主センター長は「1〜2年ほどVRゴーグルで解剖を学べば、従来の2D画像でも深い理解が得られるようになると考えます。今後も初学者への教育ツールとして有効に活用し、現場の診療に還元していきたいです」と意気込みを見せる。

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