
直言
Chokugen

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直言 ~
東上 震一(ひがしうえしんいち)
医療法人徳洲会 理事長 一般社団法人徳洲会 理事長
2026年(令和8年)08月03日 月曜日 徳洲新聞 NO.1554
徳洲会グループは“生命だけは平等だ”という根源的な権利意識を表す理念の下、年中無休・24時間診療で命を救うために全力で取り組んできました。今、急速に拡大する組織の中で、単なる規模拡張や病床数増加、医業収益といった数字上の拡大を超えて、徳洲会が大きくなる意義を問い直す必要があります。組織拡大の最大のメリットは「より多くの、より優れた人材を抱えられる」という点に尽きます。医療の本質は「人」です。最新医療機器を揃え、立派な建物を構えようとも、高い志と確かな技術を持つ医療者が集わなければ、医療の質を担保できません。規模の拡大とは医師、看護師、コメディカル、事務職などを全国から惹きつけ、包摂できる巨大な器をつくることにほかなりません。
豊富な人材からなる「知の資産」と「強い経営基盤による行動力」を手に入れることで、単一の病院や小規模グループでは決して成し得ない「大きな構想のプロジェクト」に挑めます。実際的には地域医療への貢献です。医師不足・偏在、人口減少などに直面する地域医療に対し、徳洲会が全国規模で医療ネットワークを構築できれば、これらの問題への一つの答えになり得ます。医療資源が不足する離島・へき地などの病院に対し、迅速な人材派遣(徳洲会応援システム)をさらに強化する必要があります。応援という支援は、教育の側面をあわせ持つ私たちの誇るべき文化です。都市圏の病院で培った高度先進医療のノウハウやDX(デジタル変革)の成果を、地方の病院へ迅速に波及させ、どこにいても最善な医療を受けられる環境を整えることは、徳洲会の理念でもあります。
開発途上地域に対し長期的支援(アフリカ諸国での透析センター開設、タンザニアでの臓器移植センター建設、研修生の受け入れなど)を行うことは、徳洲会が「生命の平等」に直接コミットする重要なことと考えます。今年5月、NPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)はWHO(世界保健機関)からEMT(緊急医療チーム)国際認証を取得しました。国内NGO(非政府組織)としては初のことで、徳洲会の面目躍如と、誇らしく思っています。医療チームを国内外の被災地へ派遣してきたTMATの機能を、WHOの要求に沿い、さらに強化することが今後の課題です。
組織が拡大し社会的影響力が増大する時、私たちは最も警戒すべき敵と対峙することになります。それは私たちの内面に生じる「ありきたりな欲望と慢心」です。「この程度でいいだろう」という現状維持を肯定する心の怠惰は、組織が大きくなればなるほど音もなく忍び寄り、私たちの精神を蝕みます。克己心とは己の弱さに打ち克ち、常に「何のために医療を行うのか」という原点に立ち返ることであり、利己的な欲求を排し、常に利他の精神で患者様と向き合うことにほかなりません。大きくなればなるほど、より謙虚に、よりストイックに自らを律していく必要があります。
組織の拡大は、ともすれば心のつながりを希薄にする恐れがあります。徳洲会のメンバーシップとは「仲間を思いやる心」であり、「深い友情」とも言えるもので、過酷な医療現場で命と向き合う仲間として、互いを尊重し支え合う精神です。ある施設が困難に直面していれば、他の施設が損得勘定抜きで手を差し伸べ、一人のスタッフが悩んでいれば、周囲が温かく包み込み支える――この連帯こそが私たちの強さの源泉なのです。各施設が孤立した「点」として存在するのではなく、メンバーシップという絆で結ばれた「面」となり、巨大な家族として機能する時、どのような困難に対しても、それを乗り越えていけるのです。
医療の未来は決して平坦ではありません。私たちの前には常に巨大な壁が立ちはだかるでしょう。しかし徳洲会には、数々の試練を乗り越えてきた歴史があります。いかなる逆境にも屈しない「独立不羈の心」が、胸の奥底に流れているのです。大きくなればなるほど、救える命は確実に増えるのです。医療の手が届かなかった場所に光を届けるためにも、私たちは拡大し続けなければなりません。克己心と仲間を思いやるメンバーシップで連帯する時、さらなる成長が待っています。
皆で頑張りましょう。