徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2021年(令和3年)9月6日 月曜日 徳洲新聞 NO.1303 一面
学校法人徳洲会が3月に文部科学省に設置認可申請していた湘南鎌倉医療大学大学院の設置が、8月27日付で文部科学大臣から認可された。同大学院は2022年4月の開学時点で看護学研究科・看護学専攻を開設し、博士前期課程(2年間、入学定員6人)で修士(看護学)、博士後期課程(3年間、入学定員3人)で博士(看護学)の学位が取得できる。同大学の理念、目的を基盤とし、さらに学びを深め、次代を担う質の高い看護職を育成する。
「世界の医療に貢献できる人材輩出を目指す」と鈴木理事長 「目から鱗の発見をひとつでもしてほしい」と荒賀学長
湘南鎌倉医療大学は"生命だけは平等だ"の開学理念に基づき、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療・ケアを受けられる社会の構築を目指し、日々研鑽する医療人を育成する」ことを目的に、昨年4月に開学した。来春スタートする同大学院では、同大学の理念・目的を基盤とし、さらに深く幅広く医療職として必要な自己研鑽を続け、医療分野の実践・研究・教育の発展に寄与する人材を育成する。
具体的には、博士前期課程では「研究的視点をもった実践者としての能力をさらに進化させ、看護専門職者として地域や多職種連携において、保健医療の発展に貢献できる能力を修得した人材」、博士後期課程では「幅広い視野と深い学識をもって自立して研究する能力を備え、人間の生涯および地域に対する看護の質の改善・向上のためリーダーシップを取る能力を有する人材」を育成。
博士前期課程の修業年限は2年。教育課程では、看護学で研究過程を遂行することができ、リサーチ・エビデンスを教育や実践に活用することができ、また人間の生涯および地域に対する看護の課題解決のために多職種や地域との連携ができる人材を養成する。
博士後期課程の修業年限は3年。教育課程では、博士前期課程で培った研究能力をさらに発展させ、幅広い視野と深い学識を基盤に自立して研究できる能力を備え、人間の生涯および地域に対する看護の質の改善・向上のために教育・研究をとおして発信できる人材を養成する。
両課程ともに「共通科目」と「専門科目」で編成し、専門科目には「生涯発達看護学分野」と「広域看護学分野」のふたつを設置。生涯発達看護学分野には「リプロダクティブヘルス看護学」、「小児看護学」、「成人看護学」、「老年看護学」、広域看護学分野には「在宅看護学」、「公衆衛生看護学」の計6科目を置き、博士前期課程の定員は各科目に1人ずつの計6人、博士後期課程では定員3人が6科目のいずれかに所属することになる。
文科省による設置認可を受け、学校法人徳洲会の鈴木隆夫理事長は「大学院も徳洲会グループとして、同じ理念を掲げています。"生命だけは平等だ"のマインドをもった次代のリーダーとなる看護師、研究者を育成します」と意気軒高だ。
さらに、医療大学の柱として臨床、教育、研究を挙げ、「まず臨床ありきと考えています。それを支えるのが研究です。大学院では博士号を取得することだけが目的ではなく、臨床のための研究を行い、現場に還元してもらいたいと考えています」と期待を寄せる。
学校法人徳洲会の今後の展望として「医療大学として、医療に関するすべての分野に関与していきたい。とくに重視しているのが病院経営学です。今後は医師ならば誰でも院長になれる時代は終わり、経営を学ばないと院長になれない時代が到来すると思います。がん医療に寄与する診療放射線技師や医学物理士、AI(人工知能)の進化で大きく変わるリハビリテーションセラピストの育成も必要です。最終的に、世界の医療に貢献できる人材を輩出していきたい」と鈴木理事長は明かす。
2020年4月に開学した湘南鎌倉医療大学 大学の授業ではアクティブラーニングを採用
大学院の設置認可申請時に、一般的に苦労するのが教員の確保。しかし、同大学では開設時に優秀な人材を集めていたため、大学の教員がそのまま大学院でも指導を行える体制を整備できた。荒賀直子学長は「当大学の教員の多くは、大学院での研究指導の経験者です。若い教員も学部から大学院での教育に触れ、ゆくゆくは教授を目指してほしいです」と抱負を語る。「開学から2年で大学院が開設でき、ようやく"大学としての形"が整ったと考えています」(荒賀学長)。
同大学院の特徴ある授業のひとつとして、共通科目の「地域生活看護論」がある。これは老年看護学、在宅看護学、公衆衛生看護学で構成、高齢者が退院し地域に戻った後、在宅でどのような看護が必要になるのか、どのような公的支援を活用できるのかなど総合的に学ぶことができる。
荒賀学長は「これは徳洲会グループ病院・施設が、地域包括ケアとして実践していることであり、学べる現場が多くあります。また、専門科目に進む前に、視野を広げるためにも必要な授業です。これ以外にも、臨床で生かせる知識を学べる科目を多く用意しました」と強調する。
大学院では「目から鱗が落ちる発見を、ひとつでもしてほしい」と願う荒賀学長。「大学でも大学院でも、誰かに言われるままに動くのではなく、自分で考え、行動できる看護師を育てたいと考えています。そのためにはデータを分析する方法や、臨床で起きていることを理解するための研究も必要です」と意気込む。
また、同大学院は働きながら学び、研究できるように、基本的に平日夜と土曜日に授業を行う。荒賀学長は「徳洲会グループ病院から、当大学院を希望する方がいればうれしいです」と熱望。ゆくゆくは同大学の卒業生も同大学院で学んでほしいと考えているが、「学部卒業後は、まず3年くらい臨床を経験することも大事。そのなかで自分が研究したいテーマが生まれてくると思います」とアドバイスしている。