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小川 由英(おがわよしひで)修復腎移植臨床研究 総括責任者 宇和島徳洲会病院(愛媛県)泌尿器科 部長

直言 生命 いのち だけは平等だ~

小川 由英(おがわよしひで)

修復腎移植臨床研究 総括責任者 宇和島徳洲会病院(愛媛県)泌尿器科 部長

2021年(令和3年)9月6日 月曜日 徳洲新聞 NO.1303

腎移植を待ち望み困難な透析生活を送る患者さんに
一刻も早く福音が訪れるよう
先進医療の修復腎移植臨床研究が本格スタート

腎移植により、腎機能が回復するとQOL(生活の質)向上が見込まれ、移植腎が生着すれば体調の改善、社会復帰、食事制限、透析からの解放などが期待されます。しかし献腎移植は1万3000人以上の希望者に対し、年間230例前後にとどまっているのが現状です。また、平均待機期間は10年以上にも及び、その間に死亡する透析患者さんも少なくありません。我が国では移植に関する社会的背景・制約により、献腎移植での腎臓提供数が少なくドナー(臓器提供者)不足の状態にあります。

徳田虎雄・名誉理事長から臨床研究を企画するとの話

先人の努力を振り返ると、1956年に特発性腎出血の腎臓を新潟大学で移植したのが(修復)腎移植の嚆矢(こうし)とされ、その後も修復腎移植は継続、腎動脈瘤(どうみゃくりゅう)の腎をドナーとする修復腎移植も全国で15例以上実施されました。宇和島徳洲会病院の万波誠副院長らも修復腎移植42例を報告、これに対し関連学会や行政、患者会などが議論を展開、メディアも巻き込み医学的論争が長く続き、2007年に修復腎移植は事実上、禁止されてしまいます。その後、議論が重ねられ、国際的移植医療の実情、臓器不足の現状、移植を望む患者さんへの配慮、捨てられる腎臓のリサイクルの有用性などが広く知れわたり、修復腎移植に関する考え方に変化が生じました。09年には修復腎移植の対象疾患は制限せず、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に規定する事項を順守し、臨床研究として実施が可能になりました。

私は琉球大学を退官し、東京西徳洲会病院の泌尿器科診療に携わっていましたが、宇和島病院での修復腎移植の問題には当初、蚊帳(かや)の外にいました。08年秋に徳田虎雄・名誉理事長から「修復腎移植に関する臨床研究を企画する」とのお話があり、関わることになりました。まず実施計画書の作成を開始するとともに小径腎腫瘍に注目しました。海外では1995年に小径腎細胞がんを切除して腎移植した14例で、がんの再発がないとの報告があり、2005年には追試により、4㎝以下の腫瘍であれば再発がないとの発表がありました。08年には小径腎細胞がんの腎を移植に用いた43例で、移植腎は良好に機能したとの報告もあり、14年には97例のレビューにより、その安全性と有用性が発表されています。

徳洲会グループは修復腎移植問題を再度検討し、親族間ドナーに腎腫瘍などの疾患が発見され腎提供する修復腎移植と、小径腎腫瘍の治療で腎摘となる腎を用いる第三者間修復腎移植の2種類の臨床研究を企画、09年7月に開始しました。同年12月に第1例を実施、11年の国際臓器提供調達学会では演題が優秀発表として表彰され、研究をさらに推進しました。12年のアジア泌尿器科学会、14年の国際移植学会でも優秀発表の評価を受けました。患者さんからの強い要望をふまえ、12年に第三者間の臨床研究では目標症例数を20例までに増やし、17年までに13例を実施、術後5年時点で腎生着が確認できているのは13例中7例です。この間、11年に先進医療に初回申請を行い、18年にようやく先進医療会議で条件付き承認となり、 19年1月31日付の官報に告示されました。

宇和島病院と湘南鎌倉病院 レシピエントの募集を開始

最近の腎がん診療の動向を見ると、がん登録全国集計報告書(19年)によれば、1万例以上の小径腎細胞がんが毎年治療されています。社会医療診療行為別統計(同)によれば約1万例の小径腎細胞がん手術のうち、ロボット支援腎部分切除が3876例であり、残る6000例以上の小径腎腫瘍の部分切除症例数は報告がありませんが、そこから推察すると、小径腎腫瘍で本研究の対象となる症例もかなりあると考えます。

新型コロナ感染症による影響や臨床研究体制の変更などにより、多少時間がかかりましたが、先進医療としての修復腎移植の臨床研究が本格スタートし、レシピエント(腎移植希望者)登録が宇和島病院と湘南鎌倉総合病院(神奈川県)で始まりました。先行研究の経験を生かし、移植を希望される透析患者さんのため新たな移植医療の機会を提供し、将来的には公的医療保険の適用を目指します。腎移植を待ち望み、困難な透析生活を送っておられる患者さんに、一刻も早く福音が訪れることを祈ってやみません。

皆で頑張りましょう。

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