2018年(平成30年)6月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1136 三面
胃・食道・大腸がん早期発見
内視鏡画像診断にAI
多田会長講演 AIメディカルサービス
5月度の徳洲会グループ医療経営戦略セミナーで、ただともひろ胃腸科肛門科の理事長・院長を務める多田智裕AIメディカルサービス代表取締役会長・CEO(最高経営責任者)は「世界初、内視鏡画像人工知能診断支援システム~ピロリ菌胃炎・胃がんを人工知能で診断~」をテーマに講演した。医療分野でのAI(人工知能)活用はホットな話題だけに、セミナー参加者らは熱心に耳を傾けていた。
「AIのアシストは、より良い内視鏡検査の実施とがんの見逃しの低減に貢献」と多田会長
多田会長は年間約9000件もの内視鏡検査(胃・大腸合計)を行う診療所を統括する臨床医である一方、AI開発に注力。AIを活用した内視鏡画像診断支援システムの開発に取り組むAIメディカルサービスというベンチャー企業を昨年9月に設立した。
胃がん検診のガイドラインでは現在、X線検査ではなく内視鏡検査が推奨されている。こうした情勢の変化にともない、内視鏡専門医の負担は年々増加。多田会長が所属する浦和医師会(埼玉県)では胃がん検診時の内視鏡画像に関して、専門医によるダブルチェックを月2回実施し、医師1人につき1日70症例の画像を読影。
1症例に40~50枚の画像があるため1日で約3000枚もの読影を行う計算だ。現場の状況を改善したいという思いがAI開発の出発点になった。
従来、コンピュータによる画像認識は精度が低かったが、人間の神経細胞の仕組みを模したディープラーニング(深層学習)技術の登場で劇的に向上。「2015年2月にAIが人間の画像認識の精度を超えたのは有名な話。医療に何が起こるかを内視鏡医として考え、きっと現場の助けになるだろうと思いました」。
がんが疑われる部位があると内視鏡画面上にマーキングされ、がんの確率も表示(写真提供:多田会長)
まず開発に取りかかったのは内視鏡画像からピロリ菌感染を診断するAI。「専門医並みの高精度で診断するAIの開発に成功しました。続いて、胃がんを診断するAI開発に着手。『6㎜以上の胃がんを98%の精度で発見』、『1画像の診断にかかる時間は0.02秒』など研究成果を、がん研究会有明病院とともに今年1月に発表しました。AIを活用した胃がん内視鏡画像診断支援システムの報告は世界初のことでした」と多田会長。
さらに動画にも対応、リアルタイム診断が可能になった。また食道がん、大腸がんへの対応も完了。撮影部位の認識機能も付加した。これにより撮影漏れによる見逃しを防ぐことができるという。現在、実用化に向けノートパソコンに専用ソフトを入れたプロトタイプ(原型機)での試験中だ。
講演では実際の内視鏡動画を供覧。画面内にがんの疑いがある部位が映りこむと、画面上に四角形の枠線でマークし、がんである確率を示す数値を表示するという仕組み。
多田会長は最後に「AIのアシストは、より良い内視鏡検査の実施と、がんの見逃しの低減に貢献します。そしてその時代はすぐそこまで来ています。画像診断に機能を絞った“特化型”のAIですので、患者さんの状態を見極めて最終的に診断するのは医師です。今後、徳洲会グループと共同研究していければと考えています」と呼びかけた。