2018年(平成30年)4月30日 月曜日 徳洲新聞 NO.1131 四面
食道がんに低侵襲な胸腔鏡手術
合併症や神経まひを低減
千葉徳洲会病院がスタート
千葉徳洲会病院は食道がんに対する胸腔鏡(きょうくうきょう)補助下手術( VATS(バッツ)= Video-Assisted Thoracic Surgery)を開始した。開胸手術に比べ低侵襲であるため術後の回復が早いことに加え、モニターに映した拡大術野を見ながら手術を行うことができることから、より繊細な手技で合併症の低減に寄与。VATSの執刀医を務める同院外科の村田一平医長は「地域の食道がんの患者さんが遠方の医療機関を受診しなくても、地元で低侵襲な手術を受けられるようVATSに注力していきたい」と意気込みを語っている。
「VATS では呼吸器合併症を低減し、その拡大視効果によって、より繊細な手術が可能となります」と村田医長
食道がんに対するVATSは胸部の右側に1~2㎝の穴を5カ所開け、肋骨と肋骨の間から胸腔鏡のカメラや手術器具を挿入し、モニターに映し出した術野を見ながら手技を行う。食道切除、リンパ節郭清(かくせい)(切除)、食道再建(胃の一部を切除し管状にして残った食道と胃をつなぐ)の一連の手技を実施する。声帯が近くにあり術式が異なる頚部(けいぶ)食道がんを除く、胸部食道がんと腹部食道がんが対象だ。平均で手術時間は8~10時間、術後2~3週間で退院となる。
食道がんは胃・大腸がんなどと比べ症例数が少ないことから、手術手技の維持・向上が課題となっており、難易度の高い手術と言われている。
村田医長は「開胸手術では胸の筋肉を大きく切るなど胸壁(胸骨や肋骨などからなる胸部の骨格や周囲の筋肉・皮膚)破壊がともない侵襲が大きくなります。一方、VATSはカメラや手術器具を入れるための穴を5カ所開けるだけなので、患者さんの身体への負担は小さく術後の回復は早いです。加えて、胸腔鏡の拡大視効果が得られるほか、人工気胸(胸腔内に二酸化炭素を注入し肺を圧迫して縮小させる)により、良好な術野を確保できます」とアピール。
モニターで部位を確認しながら手術を進める村田医長(左から2人目)。左が小澤教授
食道がんの手術では、肺炎や無気肺(肺の一部に空気が行きわたらない)といった呼吸器合併症が起こりやすい。また、食道の近くには反回神経という声帯を動かす神経があり、この反回神経の周囲には食道がんが転移しやすいリンパ節がある。このリンパ節の適切な郭清が重要だが、手術操作によって同神経が障害を受け、反回神経まひを起こすことがある。反回神経まひになると声がかすれたり、むせやすくなったりして誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクが高まる。
VATSは拡大した映像で、反回神経など微細な神経や血管などを確認しながら、より繊細な手術が可能。これにより呼吸器合併症を低減できる。さらにリンパ節郭清の精度向上により、反回神経まひを減らせる可能性がある。
VATS導入に向け村田医長は昨年11月、日本臨床外科学会の国内外科研修制度を利用し、日本有数の食道がんVATS症例数を有する東海大学医学部付属病院消化器外科で約1カ月間の研修を受けるなど準備。
食道がんのVATSには、患者さんの体位を伏臥位(ふくがい)にして行う方法と、左側臥位(そくがい)で行う2通りの方法がある。千葉病院は東海大学と同じ伏臥位を採用。周囲の他の臓器(大動脈、気管など)にがんが浸潤、あるいは放射線化学療法後などでなければ、切除可能な病変に関しては基本的にVATSを行う方針だ。診療ガイドラインに基づきステージ(病期)2、3は術前化学療法で腫瘍を小さくしてから実施する。
昨年12月に1例目を実施して以降、4月中旬時点で計4例を実施。いずれも大きな合併症はなく手術は奏効。東海大学医学部消化器外科食道グループの小澤壯治教授が1例目は術者として、以降の3例でも直接指導に立ち会った。
「地域の患者さんが遠方の医療機関を受診しなくても、地元で低侵襲な手術を受けられるようVATSに注力していきたい」と村田医長は意欲的だ。
消化器がん研究会で発表
徳洲会消化器がん部会が5月12日に都内で開催する第2回消化器がん研究会で、村田医長は指定演題として食道がんに対するVATSについて発表を行う。開催概要は『徳洲新聞』1127号を参照。