2018年(平成30年)4月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1129 四面
読み解く・読み得“紙上医療講演”⑬
本当は怖い食後高血糖
今回のテーマは「食後高血糖」です。これは食後2時間血糖値が140~199㎎/㎗になる糖尿病の前駆症状。厚生労働省の調査によると、約4割の方が糖尿病のリスクがあるものの病院に通わず放置しているそうです。食後高血糖の危険性、日常生活での予防について日本糖尿病療養指導士、日本くすりと糖尿病学会の認定薬剤師でもある千葉徳洲会病院の福井宗憲薬局長が解説します。
福井宗憲・千葉徳洲会病院薬局長
血糖値は誰でも食後には上昇します。ただし正常な場合であれば、血糖値の上昇に合わせてインスリン(糖の代謝にかかわるホルモン)分泌量も上がるため、血糖値はすぐに下がります。一方、食後高血糖を含む境界型(図参照)の場合は、インスリンが分泌されるスピードが遅いため、食後に体内で高血糖の状態が長く続いてしまいます。
この食後高血糖は糖尿病の前駆症状。糖尿病になると腎症、網膜症、末梢(まっしょう)神経障害(手足のしびれ、違和感)を合併するリスクが上昇、さらに悪化すると週3回ほどの血液透析が必要となり、QOL(生活の質)が低下します。また、高血糖は動脈硬化のリスク因子のひとつ。国立循環器病研究センターの調査(国内の報告)によると、心筋梗塞・狭心症の患者さんのなかで糖尿病(境界型含む)にかかっている人の割合は6割を超えるほどです。
これらの合併は血糖値が上昇したら、すぐに発症するわけではなく、10~15年ほどかけ徐々に進行していきます。だからこそ早めの対策が必要であり、まずは自分に食後高血糖の徴候があるかどうか把握する必要があるのです。
ちなみに、健康診断で計測しているのは空腹時(10時間絶食後)血糖値。これが高い場合は、すでに糖尿病にかかっているリスクが高くなります。糖尿病にかかる前段階で気付くためには、食後2時間血糖値も計測すると良いでしょう。
健康診断以外で病院にかかるのは面倒と感じる人は、病院祭や地域の健康イベントなどで実施している無料健康診断を利用するのがお勧めです。自分が何時間前に食事をしたか、測定者に伝えたうえで血糖値を測り、アドバイスをもらってください。
食後高血糖の改善には薬を服用する方法もありますが、まずは賢い食事方法と、ほど良い運動の実践による生活習慣の改善が大切です。
食事方法では食べる順番に気を付けましょう。食事の最初に食物繊維(キノコや野菜など)を摂れば、消化のスピードが遅くなります。境界型の人は血糖値の上昇に対してインスリン分泌速度が遅いわけですが、消化を遅らせて時間稼ぎができれば、体内の高血糖状態を短時間に抑えることができます。また、1日に摂取する総カロリーには気を付けたほうが良いのですが、食べる順番などルールを守っていれば基本的には何を食べても大丈夫です。
運動は軽いものから始めましょう。たとえば、食後に15分ほど散歩したり、部屋の掃除やガーデニング作業をしたり、軽く汗をかく程度を目安にすると良いです。筋肉量が増えれば血糖を消費しやすくなり、体を動かすことでインスリンの働きも良くなります。
食後高血糖の段階であれば、まだ遅くはありません。まずは自分の現状を把握することから始め、継続して管理していくことが大切です。