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Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)4月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1129 一・二面

羽生総合病院
5月1日に新築移転オープン
救急やがん医療など診療機能拡充

埼玉医療生活協同組合の羽生総合病院(埼玉県、311床)は5月1日、現病院から800メートル離れた場所に新築移転オープンする。1983年9月に開設以来、救急患者さんをつねに受け入れるという方針を堅持し、地域医療に貢献してきた同院。建物の老朽化、診療機能の拡充を理由に建て替えを実施、HCU(高度治療室)や屋上ヘリポートの新設、放射線治療装置の新規導入などにより、「救急・災害医療」や「がん医療」にさらに力を入れ、地域医療に貢献していく。

健診にも注力し地域の健康守る

旧病院から800m ほど離れた場所に地上6階建てで竣工する新病院 旧病院から800m ほど離れた場所に地上6階建てで竣工する新病院

羽生病院は松本裕史院長が着任した2003年に新築移転プロジェクトが始まった。足かけ14年、この間に新築・新設オープンしたグループ病院などを各部門長と一緒に見学し、検討会を重ね、現場の意見を取り入れた設計をつくり上げた。

新病院を設計するうえで地域の課題としてもち上がったのが、羽生市の高齢化率の高さ。近隣にがん専門病院がなかったことから、がん検診から治療、緩和ケアまで完結できる病院を目指した。また、災害時には災害医療拠点としての役割も求められることから、救急部門の動線整備や診療機能の拡充も必要となっていた。

主玄関の反対側には救急搬入口、屋上にはヘリポートを新設 主玄関の反対側には救急搬入口、屋上にはヘリポートを新設

同院は地域に求められる病院として、また高齢や重症の患者さんに、より温かいケアのできる病院として生まれ変わり、5月1日に診療をスタートする。松本院長は「長い時間をかけてつくり上げた新病院です。救急医療、がん医療、健診を三本柱にして、早期発見・早期治療により、地域で医療を完結できる病院を目指します」と胸を張る。

新病院は約4万8153㎡の敷地に、鉄骨造の地上6階建て。病院本体の延床面積は現病院の約2倍に当たる約3万63㎡、地震に強い耐震構造を採用した。設計は横河建築設計事務所、施工は鹿島建設。

病院の南側にある「ふれあいの庭」はリハビリにも使える 病院の南側にある「ふれあいの庭」はリハビリにも使える

通院する患者さんの多くが車で来院するため、駐車スペースは700台を完備。新病院前の道路には新たに信号機が取り付けられた。また、病院南側には「ふれあいの庭」があり、患者さんや家族は季節の移ろいを感じながらベンチに座りほっとひと息つける。この庭には手すりの付いた緩やかなスロープも設置、リハビリテーション室と直結しているため、患者さんは外でリハビリを受けることも可能だ。

病院の壁や柱の一部には、羽生市の伝統工芸である藍染にちなみ藍色を使用。地域の方々になじみ深く、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

1階エントランスホールの隣には200人収容できる多目的ホールがある。ふだんはテーブルといすを置いて待合ホールの一部として使用するが、壁で仕切ることも可能。奥の壁には60席の可動式の座席も収納し、医療講演やロビーコンサートなどフレキシブルに利用できる。

1階には外来診療部門を集約。待合ホールから扉で仕切り、中待合室をつくり、プライバシー保護にも配慮した。健康情報や雑誌などを備えたライブラリー、イートインスペースなど待合空間を点在させることで、患者さんは好きな場所で時間を過ごすことができる。

健康管理センターへの入口は主玄関とは別に設置。一部の画像検査を除き、ほぼすべての検査を同センター内で受けられるようにし、一般患者さんと動線が重ならないようにした。今後、同院では地域の方々の健康を守るため、健診にも力を入れていく。

2階は救急部門。主玄関とは反対の病院西側にある緩やかなスロープを上がった先に救急センター入口がある。風の強い地理的特徴を考慮し、救急車搬入口は高速シャッターを経た半屋内に設けた。手術室、新設したHCUと近接させることで、より迅速な対応と連携のしやすい「超急性期フロア」を実現した。

多目的ホールに備え付けた可動式の座席は松本院長のアイデア 多目的ホールに備え付けた可動式の座席は松本院長のアイデア

手術室は3室から6室に拡大し、ハイブリッド手術室(血管造影装置を配備した手術室)も完備。血液浄化センターも44床から60床に拡大し、患者さんの受け入れ能力を増強した。また、HCU、血液浄化センターともに柱を減らし、スタッフがひと目で室内全体を見渡せるように配慮した。

3階には10床の緩和ケア病棟を新設。すべての部屋からテラスに出ることができ、外に通じる扉はバリアフリーのため、車いすでも気軽に移動して明るい日差しを浴びることができる。

緩和ケア病棟ではすべての部屋からテラスに出て風を感じられる 緩和ケア病棟ではすべての部屋からテラスに出て風を感じられる

4階から6階は病棟。患者さんが安心して過ごせる「見守られる療養環境」を目指し、壁のないスタッフステーションを取り囲むように病室を配置。全病室の廊下側にはガラス窓を設け、患者さんがスタッフを身近に感じられ、逆にスタッフも患者さんの様子を気軽に確認できるようにした。

さらに、患者さんが自分の病室を認識しやすくするため、フロアを花、方角を色で区別。4階は桜、5階はコスモス、6階は藤をあしらい、北Aは青、北Bは緑、南Cは赤、南Dはオレンジを基調にした。

病棟では壁のないスタッフステーションのまわりに病室を配置 病棟では壁のないスタッフステーションのまわりに病室を配置

災害時の医療機能を維持するため、3日間は診療機能を自立運営できるように貯水タンクや非常用自家発電機など整備。水害対策として、熱源機械室やサーバー室など病院機能の維持に必要な設備は2階以上に配置した。災害時のトリアージ(緊急度・重症度選別)スペースとして使う1階のエントランスホール、多目的ホールなどに医療ガスや自家発電機用コンセントを整備することで、刻々と変化する状況にスピーディに対応できるようにした。

フロアを花、方角を色で表しており、5階南Dはオレンジのコスモス フロアを花、方角を色で表しており、5階南Dはオレンジのコスモス

屋上にはヘリポートを設置。海上自衛隊からの助言により、ヘリポート周囲の突起物を極力減らすことで全方位からのアプローチを可能にした。松本院長は「1~2年以内に地域災害拠点病院の指定を受けるために準備を進めます」と展望する。

「地域の方々に気軽に来ていただける病院を目指します」と大川・事務部長 「地域の方々に気軽に来ていただける病院を目指します」と大川・事務部長

がん医療では、PET―CTを新規導入し、がん検診を強化。また放射線治療装置「トモセラピー」も新規導入した。手術、化学療法を含めた三大療法に対応し、さらに緩和ケア病棟も新設する。これらにより実績を重ね、地域がん診療連携拠点病院を目指す。

大川啓二・事務部長は「地域から見捨てられたら病院は終わりです。〝断らない医療〟の実践はもちろんですが、地域に開けた病院として、地域の方々に気軽に来ていただける病院を目指します。医療講演による情報提供や健診の積極的な実施などにより、地域の皆さんの健康を守っていきたいです」と話している。

早期発見・治療に向け 高性能機器を新規導入

精度の高い放射線照射が可能なトモセラピーはがん治療に威力 精度の高い放射線照射が可能なトモセラピーはがん治療に威力

新築移転を機に高性能の医療機器を新規導入する。目玉は、がん治療に必要不可欠な高精度放射線治療装置のトモセラピーだ。

病変部位への位置合わせのためにCT(コンピュータ断層撮影装置)の機能を組み込み、従来の放射線治療装置よりも精度の高い照射が可能。正常部・臓器への照射を低減し、副作用の少ない治療が期待できる。また、さまざまな角度から強弱を付けて病変部位に放射線を集中的に照射する技術であるIMRT(強度変調放射線治療)の施行が可能だ。

がん検診に有効なPET―CTも新規導入。同装置は微量の放射性物質を含む検査薬が体内を移動し、がん細胞に集まる様子を捉えるPET(陽電子放射断層撮影法)と、病変部位の形などを撮影するCTを組み合わせることで、病気の有無や位置を調べることができる。

PET-CTを新規導入し、がん検診にも注力 PET-CTを新規導入し、がん検診にも注力

同院が導入したPET―CTには、放出される2つのガンマ線が検出器に入る時間差から、病変部位の発生位置を特定するTOF(Time of Flight)システムを採用。画質の改善、検査時間の短縮、検査薬投与量の最適化が可能になり、患者さんに負担の少ない検査を実現。

さらに、核医学検査の分野ではSPECT―CTも導入した。これはCTと一体型となったSPECT(単一光子放射断層撮影)装置。SPECT装置は、微量のガンマ線を出すRI(ラジオアイソトープ=放射性同位元素)で〝目印〟を付けた放射性医薬品を患者さんに静脈注射し、体内のガンマ線の動きを撮影することで臓器の血流や機能の状態を調べる。虚血性心疾患や脳血管障害などの診断に有効だ。

128列CTや1.5テスラMRI(磁気共鳴画像診断装置)も新規導入。充実の医療機器の導入により、早期発見・早期治療に貢献していく。

松本裕史(まつもとひろし)院長
日常の医療を着実に実行

病院の設計時、現場のことは現場で考えるというポリシーを徹底しました。救急医療、がん医療、健診を三本柱に据え、これからもより良い医療を提供していきたいと考えています。とくに、がん医療では放射線治療装置の新規導入により、手術、化学療法、放射線療法の三大療法に対応できるようになりました。

今後の課題としては、まずは医師の確保です。現在、常勤医は40人強ですが、これを倍に増やし、心臓血管外科、神経内科、呼吸器内科などを増強していきたいと考えています。そして将来的には、地域に不足している周産期医療にも力を入れ、安心してお産ができる体制を整備していきたいと思います。

もちろん高度な医療だけでなく、日常の医療を着実に実行することこそ私たちの使命と考えています。療養環境も大幅に改善しました。これからの当院にご期待ください。

関口幸子(せきぐちさちこ)・看護部長
いつでも患者さんのそばに

新病院は入退院支援センターを設置し、看護師4人が専従になります。また、HCU、緩和ケア病棟も新設します。現病院では病棟の看護師が入退院時の説明など業務をこなしながら、さまざまな重症度の患者さんに対応していました。新病院では看護師の業務エリアを病院構造に則して見直せるため、各エリアでより手厚いケアを実践できるようになります。

また、病棟のスタッフステーションは壁をつくらないオープンタイプを採用しました。患者さんの様子を感じやすく、患者さんにとっても私たちを身近に感じてもらえるようになり、安心感を与えることができると思います。

『大切にされている』と感じられる看護・介護を提供するというのが、当院の看護部門の方針。新病院ではこれをより強固に実践できるようになると思います。

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