徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)9月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1100 四面

第5回EZO-GIMER
診断後診療テーマに研鑽
札幌東徳洲会病院が開催

札幌東徳洲会病院は8月26日、救急と総合内科領域の教育セミナー「第5回EZO-GIMER(エゾジャイマー)」を開催した。テーマは「診断後診療」。道内の病院に勤務する医師、初期研修医を中心に薬剤師や診療看護師、医学生ら35人が参加、会場は熱気に包まれた。

徳洲会内外の初期研修医ら35人が参加 徳洲会内外の初期研修医ら35人が参加

EZO-GIMER は札幌東病院救急科の増井伸高部長が発起人となり2013年に開始。蝦夷(北海道)、GIM(総合診療)、ER(救急外来)が名称の由来で、増井部長を含め道内の病院で救急や総合診療の第一線に立つ医師が講師を務める。研修医など若手医師を主な参加対象に位置付け、現場で役立つ実践的な知識・スキルをレクチャー、北海道の医療の質の向上を図るのが狙いだ。

「北海道では医師向けの実践的なセミナーの開催が少ないことから、ニーズのあるテーマを探りながら開催を続け、道内の若手医師向けにスキルアップの機会の提供に努めています」と増井部長。

また、今回のテーマ設定については「一刻を争う医療現場では診断をつけた後の迅速・的確な治療が重要であることは言うまでもありません。最近テレビなどでは医師が病名を当てる診断中心の番組がはやっていますが、今回はあえて“診断後診療”をテーマにしました」と企画意図を説明。

開会挨拶する増井部長 開会挨拶する増井部長

講師は増井部長、木村眞司・札幌医科大学医療人育成センター教養教育研究部門教授(英語担当)、臺野巧・勤医協中央病院総合診療センター長、松浦武志・同院同副センター長、岸田直樹Sapporo Medical Academy 代表理事、佐々尾航・北海道立羽幌病院副院長、合田祥悟・札幌市立札幌病院救命救急センター医師が務めた。

増井部長の開会挨拶に続き、まず佐々尾副院長が「Snap Diagnosis 一発診断してみよう!」と題し、一発診断のメリットや弱点を解説したほか、症例に即して一発診断と診断後の方針に関しクイズ形式で講義を行った。佐々尾副院長は一発診断について「一発で確定診断するということではなく、一発で可能性が高い疾患に絞り込むこと」と説明。少しでも早く診断にたどり着けることや、無駄な検査を減らすことが可能になるとメリットを強調した。

続いて、増井部長が「診断後診療~呼吸・循環編~」をテーマに心原性、心外閉塞・拘束性、循環血液量減少性、血液分布異常性の4つに分類されるショックに対する治療方針や対応方法などをレクチャーした。

増井部長は「治療は方法を知っているだけでなく、実際に自分で実施できることが重要です。そして、それ以上に“Who(誰がすべきか)”を意識することが大切です」とアピール。専門医による検査・治療が必要な場合、いかに早くその医師に来てもらうかが大事と解説した。このほか、カテコラミン製剤(末梢(まっしょう)血管を収縮させる作用などがある医薬品)の使い方や心不全の治療などについても実践的な講義を行った。

臺野センター長は「専門医が来るまでの治療 脳卒中・意識障害」と題し、意識障害で救急搬送された50歳代女性患者さんや70歳代男性患者さんの症例を挙げ、①次に行いたい検査は何か、②脳神経外科専門医に連絡するまでに何をするか、③病歴上、確認すべきことは何か――など質問を受講者に投げかけながら講義を進行。

重症度判定基準や脳卒中ガイドライン、血圧のコントロール方法、鎮静・鎮痛への対応、リファーラル(患者さんのケアに関する権限の移譲)のタイミングなどを確認した。

ロールプレイも実施

骨折治療のシーネ固定を実習する参加者ら 骨折治療のシーネ固定を実習する参加者ら

木村教授は「診断がつかないときの説明」と題し、受講者をグループ分けして、それぞれ医師、患者、家族の役を演じるロールプレイ(役割体験)に取り組んだ。木村教授はシナリオを3つ用意。役割を交代しながら1つのシナリオを3回ずつ実施した。それぞれ「こだわりが強い」、「ネガティブ」、「ポジティブ」、「心配性」など登場人物の性格に変化をつけて行い、最後にグループごとに振り返りを行い、気付きや学びを共有した。

松浦・副センター長は「コンサルテーションスキル」をテーマに講義。コンサルテーションとは医師が他診療科の医師に相談したり、研修医が指導医に相談したりすることをいう。松浦・副センター長は多忙な指導医が電話で研修医のプレゼンテーションに耐えられる時間は30秒が目安であるとし、限られた時間内でコンサルテーションを行うためのコツを披露した。

「まず何をしてほしいか要件を伝え、患者像や具体的な鑑別診断がパッと浮かぶよう必要な情報を簡潔に伝えることが大切です」と松浦・副センター長。参考として、その際の定型の文例を提示。簡潔に伝えたあとは、特徴的なキーワードを入れながらSOAP(症状経過、身体所見、仮診断、方針)を相手にわかりやすく伝えるという流れだ。受講者は例題に取り組みながらコンサルテーションスキルを習得した。

岸田・代表理事は「症例から学ぶ その“診断”だけでは不十分」と題し講義した。初診時診断で転倒・頭部打撲、誤嚥(ごえん)性肺炎、片麻痺(まひ)と意識障害から脳梗塞疑いなどと考えられたものの、病歴聴取やさらなる検査結果などから、異なる病名の最終診断に至った複数のケースを解説。症状や病歴から真の診断に至るための心得などをレクチャーした。

最後に、合田医師が「今日から使えるシーネ固定(手ver.)」をテーマに講義。シーネは骨折治療のため患部を固定する医療材料。合田医師は手の骨折部位に応じたシーネによる固定方法を解説し、参加者はボール紙をシーネに見立てて包帯で巻く演習を行った。

参加した1年次初期研修医のひとりは「コンサルテーションをまとめて学ぶ機会はこれまでありませんでした。ちょうどコンサルテーションの型がほしいと思っていたところでしたので、とても参考になりました。参加して良かったです」、医大5年生の学生は「将来、医師になった時に役立ちそうな講義ばかりで、有意義な時間を過ごすことができました」と満足げだった。

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