徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)9月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1100 一面

湘南鎌倉総合病院
医師が救急車に同乗し支援
派遣型救急ワークステーション
鎌倉市と協定締結

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は7月31日、鎌倉市役所で「救急救命士再教育病院実習にかかる派遣型ワークステーションに関する協定」を締結した。これは病院実習を行う救急隊員が、有事の際に医師とともに救急車で現場に向かい、病院前救護体制を強化することで救命率の向上を図るのが目的。締結式には松尾崇・鎌倉市長、同院の篠崎伸明院長らが出席し、さらなる連携強化を誓った。

救命率や社会復帰率が向上

協定書を手にする篠崎院長(右から4人目)と松尾市長(その右) 協定書を手にする篠崎院長(右から4人目)と松尾市長(その右)

協定は救急救命士が生涯学習として行っている「再教育病院実習」を、救急車とともに救急隊員(3人チーム)ごとに派遣することで実施し、必要に応じて救急医が同乗した救急車で現場に出動、医師から直接指導・助言を受けることにより、救急技術や知識の高度化を推進する。

救急現場では、早い段階から医師による医療介入ができるため、救命率の向上を図ることが可能になる。徳洲会グループの病院では湘南厚木病院(神奈川県)が2013年4月から、福岡徳洲会病院が15年4月から実施している。

締結式で互いの連携強化を誓う 締結式で互いの連携強化を誓う

締結式で松尾市長は鎌倉市の救急車出動件数が14年に1万件を超え、年々増加していることを明かした。今後、ますます救急需要が高まる見込みであり、そのなかに含まれる重篤な救急患者さんに対し、適切な対応が必要になると強調。「病院前救護体制の充実と強化を図ることは、市民の救命率の向上につながります。市民の安全のため、今回の協定はとても心強いです」と挨拶した。

これに対し篠崎院長は「市民に貢献できるのは、嬉しく思います。救命率に加え、社会復帰率をさらに高めるため、救急隊員としっかり協力していきたいです」と、さらなる連携強化を約束した。

看護師も同行

救急車の備品を確認する大淵センター長(車内右奥) 救急車の備品を確認する大淵センター長(車内右奥)

救急ワークステーション(WS)は8月7日から毎週月曜に実施し、全29回を予定。鎌倉市消防本部にある各出張所からローテーションで同院に救急隊員が派遣され、救急車は同院敷地内に待機。出動要請がかかるまで救急隊員は、さまざまなプログラムからなる病院実習に取り組み、有事に備える。

出動要請がかかると、同院の場合、救急隊員に加え医師と看護師も一緒に現場に駆け付ける。

本来、WSは救急隊員の教育的な側面が強いため、同乗するのは医師のみで、現場でも医師は直接医療行為を行わず、救急隊員に指導する立場を取ることが多い。しかし、今回の協定では、教育的な側面をふまえつつも救命率の向上を第一に考え、医師は積極的に医療介入し、そのサポートとして看護師も同行することとなった。

救急隊員に再教育実習の内容を説明する山本医長(左) 救急隊員に再教育実習の内容を説明する山本医長(左)

医師が同乗するメリットについて、同院の大淵尚・救命救急センター長は救急救命士の職域を指摘する。救急救命士は静脈路の確保、医療器具を使用した気道確保、薬剤投与といった特定行為を行うことができる資格がある。

これは医療行為であるため、医師と無線で連絡を取り、医師の許可を得ないと行うことができない。「一分一秒を争う救急現場で、医師の指示を待つのはもどかしいものです。医師が現場に駆け付けたほうが、スムーズかつ高度な病院前救護を実施することができます」と説明する。

救急車への同乗は、大淵センター長をはじめ山上浩・救急総合診療科部長、梅澤耕学・同科医長、山本真嗣・同科医長の4人がローテーションで実施。同院のWSの責任者である山本医長は「現場での処置には経験が必要であり、急な出動要請にも対応できる役職スタッフが担当します」と経緯を説明する。看護師も7人を固定メンバーとし、ローテーションで対応するという。

病院実習では救急隊員が、搬送された患者さんへの処置をサポート 病院実習では救急隊員が、搬送された患者さんへの処置をサポート

WSでの出動要請には判断基準として「(脳卒中を疑う)突然の激しい頭痛」、「喘鳴(ぜんめい)呼吸」、「多量の吐血」などキーワードが決まっている。これをふまえ通信指令室が総合的に判断して出動要請を行う。8月にWSは4回実施したが、そのうち出動要請がかかったのは2回のみ。山本医長は「始まったばかりなので、いまだ遠慮があるのかもしれません。こちらはいつ出動要請があっても対応できるよう、万全の体制を整えておきます」と胸を張る。

今回の協定について大淵センター長は「私たちが救急医療をできるのは、救急隊員のおかげです。これまで私たちは病院で待っているだけでしたが、これからは外に出ていって救命率の向上に励みます」と誓い、さらに「まずは週1回の派遣型で課題などをあぶり出し、ゆくゆくは常設型の救急ワークステーションができれば良いと思います」と展望を語っている。

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