徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

松本 裕史(まつもとひろし)(羽生総合病院院長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

松本 裕史(まつもとひろし)

羽生総合病院院長

2017年(平成29年)9月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1100

新病院は一人ひとりの“私の病院”
日常医療の着実な実行こそが使命
設計理念は「現場のことは現場で考える」

羽生(はにゅう)総合病院(埼玉県)は新築移転工事を行っており、外観はほぼ出来上がりました。徳田虎雄・前理事長に新病院をつくるように言われてから丸14年。新病院は鉄骨造り・耐震構造の地上6階建てとなります。

設計にあたり湘南鎌倉総合病院をはじめ、各地の徳洲会グループ病院を見学し参考にさせていただきました。新病院は救急医療の拡充とがんセンターに準じたがん治療の実施を2本柱としています。このため、新たに心血管系の救急医療に対応できる手術室と集中治療室を整備、また、がん治療ではPET―CTおよび放射線治療装置を新たに導入する予定です。

病院全体を癒やしの空間にして、患者さんの不安感を少しでもやわらげる造りにしたいと考え、病棟では現場で働く看護師たちの意見を取り入れ、中央にナースステーションを設け、まわりに病室を配置する構造を採用しました。プライバシーの尊重は重要で、具合が悪くなると看護師がそばにいる気配を感じるだけでも安心できます。さらに、今後増加する重症化した患者さんや、高齢患者さんに十分目が届くメリットがあります。

また、一般の外来患者さんと救急患者さんの動線が重ならないよう、八尾徳洲会総合病院をお手本にして、救急車の入り口を手術室や集中治療室のある2階に設置。さらに、1階のほぼ中央に患者さんための図書館を設けました。

屋上にはヘリポートを設置。防衛医科大学校卒の副院長の尽力により、海上自衛隊のパイロットから助言をいただいたことから、実用に耐え得るものとなっています。ゆくゆくは関東圏の徳洲会グループの病院と広域連携を図っていく考えです。

私たちの病院の設計には、現場のことは現場で考えるというポリシーを徹底しました。私たちは、この10年ほどの間に、各部門長と一緒に数施設を見学し、検討会を重ね、共通認識を醸成し、ゆるぎない信頼関係を築きました。新病院は上から与えられた施設ではなく、設計に参加した一人ひとりの「私の病院」になるはずです。

がん治療完結できる病院へ 地域の方々の期待に応える

羽生市の高齢化率は現在、約27%です。一方、亡くなる人の3人に1人が、がんという時代でもあります。高齢のがん患者さんが増えていくのは目に見えていますが、近隣のがん専門病院に行くには車で1時間程度かかります。高齢で2人暮らし、あるいは1人暮らしの患者さんにはつらい距離です。私が、がん治療を完結できる病院を目指すのも、地域の高齢者の皆さんの期待に応えたいからです。

がんの治療成績を検討するには最低でも10年かかります。当院での治療を望まれた患者さんたちを、丁寧に、長くお世話する姿勢を貫いた結果、がん患者さんのフォローアップ率は8割程度に上っています。これにより、胃や大腸、肺、乳がんなどの5年生存率、10年生存率が算定可能になり、全国集計の治療成績と比較しても、何ら遜色(そんしょく)ない数字です。私が当院に赴任した14年前からお世話しているがん患者さんも何人かおられます。当院には「神の手」をもつ医師はいませんが、治療した患者さんを真摯(しんし)に診察し続ける医師がいて、看取りまで行っています。その診療を支援するため、緩和ケア病棟も新設予定です。

血の滲むような努力の結果 来年5月1日にオープン!

開院から34年、徳洲会グループをはじめとする多くの方々の血の滲(にじ)むような努力の結果として新病院ができることを、すべての職員が一時も忘れてはならないし、病院ができてゴールではなく、次の世代に安定した形で手渡すよう使命を果たさなければならないと思います。

新病院前の道路には、新たに信号機が取り付けられます。羽生市当局の温かいご支援の賜物です。また、羽生市の医師会長を介して、開業医の先生方とも協力関係を広げています。

今、院長室の窓から次第に出来上がっていく新病院の姿を見ながら、期待と不安に胸を躍らせています。果たして思い描いたとおりの病院が出来上がるでしょうか。

その答えは新病院オープンの来年5月1日になります。完成の日を待ちながら、もちろん、私はこれまでどおり患者さん宅への往診にも出かけます。日常の医療を着実に実行することこそ、私たちの使命です。

“生命だけは平等だ”の理念の下、皆で頑張りましょう。

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