徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)7月10日 月曜日 徳洲新聞 NO.1090 四面

読み解く・読み得
“紙上医療講演” ⑥
「うつ」は原因特定が大切

今回のテーマは「うつ」です。厚生労働省によると、うつ病を含む気分(感情)障害の患者数は増加傾向にあり、2014年には111万人を突破。内閣府の発表では、自殺の原因が健康問題であった人のうち、うつ病は42.1%を占めていたとの報告もあります。現代病ともいえる「うつ」を、徳洲会グループ唯一の精神科単科病院である日野病院(神奈川県)の馬場淳臣院長が解説します。

馬場淳臣 日野病院院長 馬場淳臣 日野病院院長

うつは目に見える形で症状が現れないため、自分もわからない、まわりも気付かないうちに進行していることがあります。疲れやすい、眠れない、頭の回転が悪くなるなどを自覚し、認知症を疑って脳外科を受診したり、更年期障害と考えて婦人科を受診したりする人もいます。

うつの中心の症状は「抑うつ気分」ですが、うつがあっても「悲しい気分になりますか?」、「理由もなく涙が出ることはありますか?」という質問に「いいえ」と答える人は少なくありません。気分の落ち込みや悲しみを自覚できていないのです。そういう場合、たとえばゴルフが趣味の人に「今、ゴルフに誘われたら行きますか?」と質問すると、「行く気になれない」と答えます。うつが「何も楽しめない」という、「気分の落ち込み」の裏返しの症状として現れることがあることも知っておいてください。

うつを改善するには、原因を特定し取り除くことが大切です。うつの原因として多いのは「過労」ですが、この場合はまわりの人が仕事や家事をサポートし、ゆっくり休養させることが必要になります。

また、うつの人には「認知の歪み」が見られます。これは何か起きたら、すべてダメだと思い込んだり、物事の悪い側面ばかりが目に付いたりする思考の「癖」のことです。自分では気付いていない場合が多いため、本人の自覚を促し、癖を直すと、うつになりにくくなります。

体質や遺伝的な原因によって引き起こされる内因性のうつ病であれば、抗うつ薬が効きます。ただし多くの場合、環境的な側面もあるため、薬を飲むだけで安心せずに、うつになった原因を探っていくことが大事です。

最も気を付けるべきことは「自殺」の予防です。自殺したい気持ちに本人が気付いていないこともあり、「死にたいですか?」という質問には否定の答えを出します。しかし、「今、生死にかかわる重い病気にかかったらどうしますか?」と質問を変えると、「それもいいかも…」と答えたり、暗に死にたいことをほのめかしたりします。

こうした隠れた自殺願望に周囲が気付き、真剣に向き合うことが大切です。軽度な自殺未遂を繰り返した挙句、だんだんエスカレートしていくケースもあります。うつの人は、近しい人には、なかなか死にたい気持ちを言えないため、まわりの人が言動のちょっとした変化に気付くことが自殺の予防につながります。

励ますことが自殺を誘発する場合もあるため注意が必要です。本人は自分なりに頑張ったうえで、つらい思いを抱えているため、励ますのは逆効果。ただし、治療によっては乗り越えなければいけない場面があり、時には励ましが必要なこともあります。これは専門知識に裏付けられてこそ有効で、まわりが自分の判断で励ますのは止めましょう。

該当する症状があったら、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。

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