徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)4月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1079 一面

難治性潰瘍に新治療
阪大の承認下でPRP療法
生駒市立病院がスタート

生駒市立病院(奈良県)は昨年8月に大阪大学認定再生医療等委員会の承認などを得て、難治性潰瘍に対するPRP(多血小板血漿(けっしょう))療法を開始した。治療の選択肢を増やし、患者さんにとって、より良い医療を提供するのが狙い。同療法は高濃度の血漿を用いて組織再生や創傷治癒を促す再生医療のひとつ。患者さん自身の血液から血漿を作成するため、拒絶反応などのリスクが少ない。同院はすでに12人の患者さんに実施し、おおむね経過は良好という。いずれも高齢の患者さんだが、今後は若年層などへの実施も視野に入れている。

高濃度の血漿を使う再生医療

「PRP 療法を当院の特徴のひとつにしたい」と中西部長 「PRP 療法を当院の特徴のひとつにしたい」と中西部長

難治性潰瘍は治療を行っても十分な効果が得られない「慢性的な創傷」をいう。外傷や褥瘡(じょくそう)、糖尿病性潰瘍、静脈うっ滞(血流などが静脈内などに停滞した状態)性潰瘍、膠原(こうげん)病やリウマチに合併する潰瘍など、さまざまなタイプがあり、多くは下腿(かたい)に見られる。

一般的に、出血したり傷を負ったりすると、血小板が凝集し細胞の増殖・分化調整機能などをもつサイトカイン(免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質で、複数の種類がある)が放出され、組織の再生や創傷の治癒を促進する(表)。このヒトに本来備わっている自然治癒システムを最大限に利用する治療法がPRPだ。

血小板を通常の3~7倍濃縮し、それを患部に用いることでサイトカインが大量に放出され、より高い効果を得ることができる。

各種サイトカイン

  • PDGF(血小板由来成長因子):線維芽細胞、平滑筋細胞、グリア細胞、軟骨細胞などを増殖させる。白血球の遊走を促し、二次的にサイトカインの産生が増加して創傷治癒反応が進行する。
  • TGF-β(トランスフォーミング増殖因子):線維芽細胞、平滑筋細胞を増殖させる。線維芽細胞、炎症性単核球の遊走を促進させる。
  • VEGF(血管内皮細胞増殖因子):血管内皮細胞を増殖させ、血管透過性を亢進させる。
  • EGF(上皮成長因子):線維芽細胞、表皮細胞、血管平滑筋細胞、各種上皮細胞の増殖を促進する。
10年ほど前から難治性潰瘍や歯科関連の治療で行われるようになり、近年は整形外科分野(関節)や美容と多様な分野で用いられている。当初は再生医療ではなかったが、2014年に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(再生医療法)が施行され、PRP療法も対象となったことから、現在は施設基準や定められた機関の審査などをクリアしなければ実施できない。

生駒市立病院は近畿厚生局の許可や大阪大学認定再生医療等委員会の承認を得て、昨年8月にPRP療法を開始。同療法に乗り出した理由について形成外科の中西新部長は「難治性潰瘍の治療は自分の専門分野。以前の勤務先でも行っていました。当地域で困っている患者さんのためにも実施したかったので、準備を進めてきました」と説明する。

同院の場合、PRP療法の対象としているのは難治性潰瘍のみ。「通常の治療を1カ月以上行っても改善が見られないケース」と定義付けている。傷の深さや大きさは問わない。「傷が深いほうが適していますが、浅くても、なかなか治らないような場合、PRPが“最後のひと押し”になります」(中西部長)。

治療はPRPの作成からスタート。患者さんの腕から20㏄採血し、複数回、遠心分離機を使用して血小板を濃縮していく。その過程で血漿層から凝固因子を抽出し、濃縮した血小板に数滴混ぜると、ゲル状のPRPが完成する。所要時間は2~3時間。作成して45分後から8時間が最もサイトカインを放出する時間帯になるため、PRPをあらかじめつくり保管しておくことはしない。

患部とその周囲を清潔にしたうえで、ピンセットでPRPを傷にのせ、その上から貼付薬を貼って、丸2日間経過を観察。その後、貼付薬とPRPを除去し通常の治療を行っていく。

治療を実施するにあたり、厳格なルールを設定。同院の場合、PRPは週に1回、評価しながら最大でも4週間までしか行わない。傷が大きい場合は複数のPRPを用いるが、患者さんの負担を考慮し、最大でも2枚(採血40㏄)としている。なお、患者さんが未成年の場合は家族の同意が必要だ。費用は同院の場合、一般的な入院費程度。通院が可能であれば、入院期間は4~5日。「短期入院を希望される方にも適した治療法です」と、中西部長はアピールする。

骨が見える傷口ふさがる

作成したPRP。これを傷口にのせる 作成したPRP。これを傷口にのせる

PRPの作成は主に同院の検査科が手がける。採血からPRPができるまでに2~3時間を要するが、担当者のマンパワーが限られているため、現在はスタッフの出勤状況などを考慮しながら、ゆとりをもたせたスケジュールで治療を提供。これまで12人の患者さんに計18回実施しているが、経過はいずれもおおむね良好だという。

「基本的に自己血液で作成しているので、拒絶反応など副作用のリスクが少ないのが、PRP療法のメリット。バイオクリーンルームなどで作成するため合併症もありません」と目を細める中西部長。なかには骨が見えるほどの潰瘍が同療法によって傷口がほぼふさがったケースもあるという。

今まで実施した患者さんは、いずれも高齢だが、今後は脊髄(せきずい)損傷などで床ずれが見られる若年層や青年層の患者さんへの対応も視野に入れている。中西部長は「悩んでいる患者さんのためにも、PRPが当院の強みのひとつになるよう努力したい」と意気軒高だ。

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