徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

原田 博雅(はらだひろまさ)(八尾徳洲会総合病院院長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

原田 博雅(はらだひろまさ)

八尾徳洲会総合病院院長

2017年(平成29年)4月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1079

生活者としての患者さんを知る在宅医療
急性期医療の延長線上にあるものを実感
「2025 年問題」解決のためにも在宅医療推進

今、在宅医療が大きく変化してきています。団塊の世代が後期高齢者に達し、医療・介護・福祉の供給が不足する「2025年問題」解決のために、在宅医療を推進する方針が政府から示されています。私の専門は在宅だと言ってもよいほどで、足かけ32年にわたり行ってきました。

当院は開院以来、「地域医療」を進めて行くという方針で「地域医療部」を設け、在宅医療を行ってきました。初めての在宅医療は、私が初期研修医になったばかりの頃でした。榛原総合病院(静岡県)の佐野潔・徳洲会地域家庭医療総合センター長が、当時の私の指導医で、脳梗塞の患者さんの訪問診療に同行。病院以外に医療の場が存在することに大変驚き、今も忘れられない思い出となっています。

その後、在宅酸素療法を契機に在宅医療と積極的にかかわり、多くの患者さんの多彩な疾患を経験することになりました。最近は、がん終末期や神経難病の患者さんが多くなってきています。当院で在宅医療をお勧めする患者さんは、寝たきりや通院困難で、訪問看護や訪問診療が可能な範囲に住居がある方です。

在宅医療導入には5要素あり若年者の在宅医療も手がける

在宅医療導入には5要素があります。①家で過ごしたい患者さん、過ごさせたい家族の強い希望がある(医療者側から積極的な在宅医療の働きかけがないとできません。最近は介護力がない患者さんがほとんどで、導入が難しいケースが増えています)、②患者さんの状態が安定している(病状が安定していなくても、最期は家で過ごしたいという強い希望があれば可能で、ひと晩だけの在宅もありました)、③患者さんが自宅で過ごせる環境や設備が整っている(ベッドを入れるためタンスを処分した方もいました)、④支える家族がいる(独居の方でも可能ですが、病状が安定し電話での通話が可能であることが必要)、⑤医療供給体制がしっかりしている(病状が落ち着いていて、在宅で使用できる医療機器があれば、病院でできるほとんどのことは在宅でも可能)。

在宅医療というと、高齢の方たち向けの医療と思われがちですが、知っていただきたいのは「若年者の在宅医療」が存在することです。

当院でも10~20歳代に発症した中枢神経系の疾患や、外傷による意識障害をともなうほぼ寝たきりの方に在宅医療を行うケースがあります。前述の5要素はクリアしています。主介護者は両親で、わが子を自宅で看たいという強い気持ちがあります。結果として、在宅医療の導入、その後の管理も非常に良い場合が多く、驚くべきことにほとんどの方が長期存命で、長い人はすでに30年近くの在宅生活を送られています。

一方、若かった主介護者が年を重ね、さまざまな問題を抱える方もおられます。その対応も必要です。家庭のあり方も、病気や結婚、離別などで大きく変化することを、私たちは目の当たりにしてきました。これも在宅医療の現実です。

長期間かかって神経機能が回復する若い患者さんに、驚嘆することがあります。まったく意思表示ができず寝たきりだった方が、時間の経過とともに少しずつコミュニケーションが可能になり、車いすを使用できるようになったケースもあります。急性期だけを診ていたのでは想像もできないことです。あらためて継続することが、いかに大切か思い知らされました。

初期研修医も在宅医療で医療の幅広さを経験する

在宅医療は医療者にとってはきわめて教育的です。急性期医療を担うすべての方は、自分たちが行った医療の結果や、また長期にわたる医療・介護に移行した場合、患者さんやご家族にどのようなことが起きているのか様子を確認していただき、急性期医療のあり方を自分なりに考えてほしいと思います。

当院では初期研修医が指導医と一緒に患者さん宅を回っています。病院に来られる患者さんがどのような地域や住環境におられるかを知ることは医療者にとって大事なことです。病院ではあまり感じることのない生活者としての患者さんの姿を垣間見ることが大切なのです。

とくに「若年者の在宅医療」の現場を見ることで、親子とは、家族とは、医療とは何かを考え、そして医療の幅広さを経験するとともに、急性期医療の延長線上に何があるかを実感してほしいと思います。

皆で頑張りましょう。

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