徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2016年(平成28年)9月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1049 一・二面

アフリカへ“生命だけは平等だ”
徳洲会視察団が歴訪
エチオピア・ジブチ・タンザニア

アフリカへ“生命だけは平等だ”――。一般社団法人徳洲会の福島安義・副理事長を団長とする徳洲会アフリカ視察団は8月30日から5日間、エチオピア連邦民主共和国、ジブチ共和国、タンザニア連合共和国を訪問、医療施設の見学や医療関係者との会談などを行った。3カ国の医療関係者はともに、これまでの徳洲会の医療支援に対する謝意や今後のサポートに対する期待感をあらわにしていた。今号は「アフリカ特集」とし、1、2、4面で、その模様をリポートする。

エチオピア

ハムリン医師(左から4人目)を囲んで談笑する福島・副理事長(その左)、ミランガ顧問(右から2人目)、海老澤係長(右) ハムリン医師(左から4人目)を囲んで談笑する福島・副理事長(その左)、ミランガ顧問(右から2人目)、海老澤係長(右)

徳洲会アフリカ視察団のメンバーは福島・副理事長以下、ムワナタンブエ・ミランガ顧問(アフリカ担当)、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)国際医療支援室の海老澤健太係長、本紙編集長の上田昇の4人。

一行は8月30日にエチオピアの首都アディスアベバに到着、まずアディスアベバ・フィスチュラ病院を訪ねた。同院は1974年にオーストラリア人のキャサリン・ハムリン医師らによって設立。建設資金は全額を各国からの寄付によって捻出した。

ハムリン医師は、医師である夫とともに、短期間、同国を旅行する予定だったが、現地の医療事情に触れ、以来、半世紀以上、同国にとどまり、主にフィスチュラ患者さんの治療にあたっている。

フィスチュラとは、医療アクセスなく若年で出産したり、暴行を受けたりしたことで、産道に孔が開き、膀胱(ぼうこう)や腸との壁が損壊、糞便が垂れ流しとなる疾患。日本では産科瘻孔(ろうこう)と呼ばれるが、産婦人科が専門の福島・副理事長によれば、「日本では、ほとんど聞いたことがない」という。

WHO(世界保健機関)は世界に200万人以上のフィスチュラ患者さんが存在すると推計している。エチオピアでのフィスチュラの90%は妊娠・出産に由来。多産を願い若年での妊娠が多く、自宅での出産が伝統となっていることが影響している。また、山岳地帯に住んでいる患者さんが多く、病院へのアクセスが困難なことも、症状の悪化を招いている。加えて経済的な理由がそれに拍車をかけている。

同院の最高経営責任者であるテスファイ・ヤコブ医師は、「フィスチュラの原因には出産時に鉗子(かんし)を入れた際に起きたアクシデントによるものもあります」と、適切な医療を受けられなかったケースも紹介。

エチオピア政府は18歳未満の出産を禁じているが、多くのフィスチュラ患者さんが今もって存在していることから、「伝統や習慣を変えることは大変難しい」とヤコブ医師は嘆く。

こうした状況を改善するため、同院は開設以来、一貫して無料で治療を行っている。現在では同院を含め国内6カ所に診療拠点があり、これまでに5万人のフィスチュラ患者さんの手術を実施。昨年1年間のフィスチュラ手術は2000件で、今年は2100件を目標にしている。フィスチュラ以外の婦人科領域や泌尿器の手術も手がけるようになったという。

アディスアベバ・フィスチュラ病院の病棟。入院患者さんが並んで座っている アディスアベバ・フィスチュラ病院の病棟。入院患者さんが並んで座っている

同院は国内外の人材育成にも積極的で、FIGO(世界産婦人科連合会)のトレーニングセンターの認証を取得し、昨年はアフリカのコンゴ、ルワンダ、ジブチをはじめ、アジアのパキスタン、ネパールから研修生を受け入れた。

また、フィスチュラ予防のために4年制の助産大学も創設。国際基準の教育プログラムを施行しており、卒業した助産師たちがかかわった直近12カ月の通常分娩(ぶんべん)は2万1000件。このうち死亡例は2件にとどまっている。今後は博士課程もスタートする予定だ。

さらに同院の特筆すべき点は、治療後の患者さんの経済的自立を支援するため、裁縫技術などを教えていることだ。これはフィスチュラを発症すると、異臭を放つため、離縁されたり、家族や地域社会から見放されたりする患者さんが多いからだ。同院の一室では、患者さんが制作したショールやクロスが展示販売されている。ハムリン医師は「主人と手術を続けるうちに、患者さんが次々と来院し、見過ごすことができなくなったのです」と、長きにわたり現地で医療活動に従事してきた理由をこう明かす。

福島・副理事長は「徳洲会の“生命だけは平等だ”の哲学と合致する行いです。徳洲会の若手産婦人科医を貴院で研修させたい」と申し出たところ、内諾を得ることができた。今回、徳洲会は中型の段ボール箱3箱分の医療器具と現金100万円を同院に寄付した。

ジブチ

CNSS(社会保険基金)のアソウェ長官(左から3人目)らと病院建設プロジェクトを協議 CNSS(社会保険基金)のアソウェ長官(左から3人目)らと病院建設プロジェクトを協議

31日、視察団はジブチに入り、国民保険と社会福祉を担うCNSS(社会保険基金)を訪問、ハナ・ファラ・アソウェ長官らに会い、病院建設プロジェクトについて協議した。この時点での計画では、病床数220床、オンコロジー(腫瘍学)領域以外の診療科をもつ総合病院の開設を目指している。総費用は約83億円で、イスラム開発銀行、アフリカ開発銀行、ジブチ政府が負担。両銀行からの融資の最終決定は、それぞれ9月30日、11月30日。建設会社は中東のゼネコンを予定しており、来年1月に入札を計画。

アソウェ長官は「前回、徳洲会に5人の研修生を受け入れていただき、ありがとうございました」と謝意を表し、引き続きサポートを要請した。具体的には①今後、継続的に1人または2人の研修生を徳洲会に派遣する、②派遣する職種の優先順位と必要研修期間を徳洲会とCNSSが今後、協議する、③病院のマネジメント経験がある徳洲会職員を2年間、CNSSに派遣する――の3点。

病院建設地で固い握手を交わすアソウェ長官(左)と福島・副理事長 病院建設地で固い握手を交わすアソウェ長官(左)と福島・副理事長

福島・副理事長は「帰国したらすぐに理事会で検討します」と前向きな姿勢を見せた。

会談後、視察団はCNSSが運営する病院を見学。同院には湘南鎌倉病院で研修した医療者が勤務し、ER(救急外来)などでは研修で学んだとおりに医療機器、医薬品、ベッドを配置、トリアージを実践していた。

なお福島・副理事長、ミランガ顧問はジブチから帰国の途に就いた。

タンザニア

国立ドドマ大学医学部付属ベンジャミン・ムカパ病院 国立ドドマ大学医学部付属ベンジャミン・ムカパ病院

視察最終日の9月2日、タンザニアの首都ドドマにある国立ドドマ大学を訪問。ドドマ大学は2007年に開学、翌年に医学部を設置。付属のベンジャミン・ムカパ病院は病床数380床。建屋は完成しているものの検査室などいまだ内部を整備中だ。診療は一部開始している。すでに廊下にはCT(コンピュータ断層撮影装置)、MRI(磁気共鳴画像診断装置)、アンギオ(血管造影装置)、マンモグラフィー(乳房X線検査装置)、DNA解析装置など、最新の医療機器などが搬入され、出番を待っていた。

アイノリ医学部長兼院長(左から2人目)、マーガレット・ムハンド厚生省臨床サービス部長(その右)らと会談 アイノリ医学部長兼院長(左から2人目)、マーガレット・ムハンド厚生省臨床サービス部長(その右)らと会談

会談ではゲサセ・アイノリ医学部長兼院長が「病院にも透析機器を1台でも2台でも寄贈していただければ、すぐに透析医療が開始できます」と要望。また腎移植をはじめとする総合的な腎臓疾患管理・治療についての教育、腎臓疾患以外の専門領域の教育プログラムについても提供してほしいとの声が上がった。一方、臨床研究や感染症分野については協働の申し出があった。

会談後、付属透析センターを見学。湘南鎌倉病院で研修した医療者が勤務しており、徳洲会が寄贈した透析機器10台は問題なく稼働していた。ME(臨床工学技士)が毎日点検、適宜メンテナンスしているという。同センターの医師は「中古でもいいから、もっと透析機器がほしい」と切望。

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