2016年(平成28年)7月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1038 一面
脱衣・描線不要の放射線治療
吹田徳洲会病院
独自3S画像誘導システム
吹田徳洲会病院(大阪府)の放射線治療で、昨夏から取り組んでいる“3S画像誘導システム”が好評だ。同院は治療を受ける際に服を脱いだり、照射位置を定めた印や線を患者さんの体に描いたりすることなく、毎回、同位置に正確に照射する独自の方法を開発した。骨レベルでの位置検証も行っており、実施した30例に対して平均誤差は1㎜以下・角度1度以下と高い精度を誇る。現在は骨盤まわりの疾患のみに行っているが、将来は全例への適用を目指す。
将来的には全例への適用目指す
「患者さんの負担を少しでも軽減する放射線治療を」と芝谷主任
吹田病院は2014年の開院当時から患者さんに優しい放射線治療を追求している。放射線治療装置には最新鋭のTrue-Beam(トゥルー ビーム) STx with Novalis Radiosurgery(ノバリス ラジオサージャリー)を導入。正常な組織を守りながら治療効果を上げる機能を生かし、高精度かつ短時間の治療を行っている。治療による直接的な負担の軽減以外に、治療を受ける際の患者さんの心理的負担軽減やQOL(生活の質)の向上にも尽力。なかでも画期的なシステムとして注目を集めているのが独自に考案した「3S画像誘導システム」だ。
同システムは3S画像誘導器と寝台装着器、ボディマーカプレート、アイソセンター(放射線束の集中する点)プレート、ベースプレートで構成している。
3S画像誘導器に赤外線反射マーカを貼付したボディマーカプレートを装着し、これを照射位置照合装置が読み込んで放射線治療装置の中心に患者さんの照射中心位置を誘導する。
患者さんの体とボディマーカプレートを毎回、同じ場所に固定することで、着衣のままで治療が受けられるというわけだ。
吹田病院オリジナルの3S画像誘導システム(上)。3S画像誘導器にボディマーカプレート。簡単かつ正確に装着、さらに揺れないように工夫(中央)。アイソセンタープレートは治療寝台に装着して使用
佐々木・診療放射線技師は現状の放射線治療について、「長い間、照射する位置を定めるため患者さんの体に線を描いてきました。原則、患者さんは裸で、治療する部位を露出して治療を受けます。線が薄くなれば上書きしますが、1㎜もズラさず同じ線を描くのは不可能ですから、患者さんには線を消さないようにお願いします」。
続けて「しかし、そうすると患者さんは治療期間が終わるまで、線が消えないように注意して生活することになり、なかには汗をかく夏や体が冷える冬に入浴を我慢する患者さんも多くいました」と説明。
放射線照射装置は進化を遂げてきたものの、治療を受ける患者さんのスタイルは基本的に変わっていないことを指摘し、「治療室で裸になることもそうですが、治療する部位によっては線が着衣の外に露出する事もあります。患者さんに恥ずかしい思いをさせたくない気持ちがずっとありました」と明かす。
正確かつ効率良く治療を行うために、同システムにはさまざまな工夫を凝らしている。3S画像誘導器は本来、放射線治療の際に患者さんの腹部の動きを抑制するアーチ状の器具を改良したもの。これを治療寝台と治療計画用のCT寝台の双方で使えるように寝台装着器を工夫。赤外線反射マーカを貼付したボディマーカプレートを3S画像誘導器にワンタッチでしっかり固定できるように細かい点にも配慮した。患者さんの体に貼る赤外線反射マーカをボディマーカプレートに貼付することで、あらゆる治療部位に使用でき、患者さんの固定方法も制限しない。呼吸抑制器・呼吸同期用センサーの同時使用が可能だ。また、プレートを一人ひとりに用意することで、患者さんの識別と確認ができる。
アイソセンタープレートは患者さんの皮膚に直接書いていたアイソセンターの線を書き留めるためのアクリル板。万一、照射位置照合装置が故障して誘導機能を使えない時に備える。ボディマーカプレートと同様、患者さん一人ひとりに作成する。ベースプレートは治療寝台に任意に置き、吸引式固定具を毎回同じ位置に設置するために使用する。これにより患者さんの体とボディマーカプレートを毎回、同じ場所に固定できる。
同院では別の画像誘導方法で同システムの精度の検証を行っており、今まで実施した30例での平均誤差は1㎜以下・1度以下。
独自の画像誘導システムを開発した吹田病院
糸乘里紗・診療放射線技師は「画像誘導精度の高いことが確認できています」と自信を見せる。
医師の診療方針などもあり、同システムによる治療は現在、骨盤まわりの疾患のみ。腹部や胸部の疾患では一部のケースでのみ使用している。将来、吹田病院ではすべての部位で着衣での治療を目指している。
芝谷主任も「脱がずに治す放射線治療が当院の特徴のひとつになるくらいに発展させていきたい」と意気込んでいる。
佐々木・診療放射線技師も、「徳洲会グループ内外を問わず、多くの医療者と研鑽(けんさん)していきたいと思います」。