徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

直言

Chokugen

渡慶次 賀博(とけしよしひろ)(沖永良部徳洲会病院院長)

直言 生命いのちだけは平等だ~

渡慶次 賀博(とけしよしひろ)

沖永良部徳洲会病院院長

2016年(平成28年)7月4日 月曜日 徳洲新聞 NO.1038

離島の新築移転はグループ初の試み
島唯一の病院は島民たちの最後の砦
島外搬送なしで加療できる病院目指す

皆様、初めまして。名前からご推察いただけるように、私は沖縄生まれ沖縄育ちです。1995年に琉球大学医学部を卒業し、そのまま同大学大学院で研究者の道を歩みました。

沖縄を含む南西諸島には猛毒をもつハブが生息しています。鹿児島・沖縄両県で年間計約100人のハブ咬傷(こうしょう)の患者さんが出ますが、抗血清を用いた治療で、致死的な症例は年間1人いるかいないかです。しかしながら、この抗血清の製造方法は、1900年代に野口英世先生がガラガラヘビの蛇毒に対する抗血清を作成した方法とほとんど変わりません。すなわち、ハブの毒を馬に複数回投与し抗体価が上昇したところで、脱血・精製を行います。そのためハブの抗血清は人間にとっては異物であり、2回目の投与時にはアナフィラキシーを伴う血清病を発症する危険性があります。そこで私は、血清病のリスクを抑えるためにマウス由来モノクローナル抗体の抗原結合部位(Fab)をヒト免疫グロブリンの定常部(Fc)に移植したヒト化抗体を作成する研究を行っていました。

中部徳洲会病院への入職・研修とTMATとの出会い

私は2005年、中部徳洲会病院に入職しました。それまで、一般外来での診察・治療の経験はありましたが、救急患者さんを診察したことはありませんでした。そこで同院の安富祖(あふそ)久明総長(現・一般社団法人徳洲会副理事長)と伊波(いは)潔院長に頼み込み、研修医と同じ研修を受けさせていただきました。

ひと回り年下の研修医たちに気持ちでは負けないよう、初の医局会には丸坊主で臨みました。それからの2年は中部病院名物の〝Hard work, hard training〟が始まり、同期研修医のサポートもあって、初期研修を修了することができました。

厳しい研修生活中の06年5月、インドネシア・ジャワ島中部地震が発生。NPO法人TMATの派遣が決定され、全国のグループ病院に隊員の募集がかかりました。派遣の条件に、TMATが主催する災害救護・国際協力ベーシックコースの受講者が好ましいとあり、そこで同年、四街道徳洲会病院で開催された同コースに、同期の河本宏昭先生(現・中部病院胸部外科医長)とともに参加。TMATは「生命だけは平等だ」という哲学の下、国内外の被災地で災害医療支援活動を行っています。

塩害や台風被害で病院老朽化 雨漏りでフロア水浸しの窮状

当院は1990年にオープン。海岸沿いの丘の上にあり、常に潮風にさらされ塩害などで建物の傷みが激しいことや毎年の台風被害のため、築年数以上に老朽化が進んでいます。台風による雨漏りはすさまじくフロアが水浸しになるほどです。台風の通過前から看護師をはじめスタッフがアルミサッシの隙間に新聞紙を詰める作業を行い、雨漏りのする病室のベッドを他の病室や廊下に移動させるほどです。

徳田虎雄・前理事長の時代から建て替えの話は挙がっていましたが、島の人口減少や建築資材高騰など厳しい現実を前に構想は消えてしまいました。

しかし、鈴木隆夫理事長と安富祖・副理事長の強い思いで、建て替えが実現します。7月10日に地鎮祭を実施し、来年11月に完成予定です。当院の新築移転はスタッフのみならず島民たちの希望です。島唯一の病院で、24時間・年中無休で受診できる病院は、全島民の“最後の砦(とりで)”です。私が当院に赴任した直後、生まれたばかりの赤ちゃんを中心に、ご家族が当院玄関前で記念写真を撮影する光景を見て感激しました。お産のできる施設があることで、出産を控えた妊婦さんが島外に出る必要がなく、ご家族の負担軽減や人口減少の歯止めになると考えられます。

現在、当院は内科、小児科、産婦人科各1人の常勤医と初期・後期研修医各1人に、中部と南部の両徳洲会病院からの外科応援やグループ病院の内科などの応援態勢で診療を行っています。

小さい島でも軽症の患者さんのみ受診するわけではなく、私の赴任後3カ間で、すでに19人の島外搬送の重症患者さんがいます。下は0歳3カ月の髄膜(ずいまく)炎、上は100歳の大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)骨折で、うち5人の患者さんは外科の常勤医がいれば島外搬送せずに加療できた症例です。

今後、当院の病院運営を安定させるには、こういった重症患者さんにも対応できる診療体制を整備し、経費削減やサービスの向上などに努めなくてはならないと考えています。

皆で頑張りましょう。

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