
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)07月20日 月曜日 徳洲新聞 NO.1552 4面
八尾徳洲会総合病院(大阪府)の綾部忍副院長(形成外科専門)が筆頭著者を務める論文が米国形成外科学会学術誌『Plastic and Reconstructive Surgery Global Open , 2026』のWEB版に掲載された。骨格筋電気刺激(EMS)装置を用い、血液透析中の下肢閉塞性動脈疾患患者さんに介入した結果、下肢の筋力と末梢血流の改善を認めた。綾部副院長は「今まで同じような取り組みで、末梢血管に血液を送る動脈系の報告はないと思われます。リハビリテーションが難しい方に対するアプローチの可能性になれば」と、さらなる研究に意欲を見せる。
「研究の手法は比較的安全で幅広い方に生かせると思います」と綾部副院長
掲載された論文のタイトルは「Pilot Study: Electrical Muscle Stimulation Improves Circulation and Strength in Patients With Leg Ischemia on Hemodialysis」(パイロット研究:電気刺激療法は、血液透析を受けている下肢虚血患者の血流および筋力を改善する)。綾部副院長が大学病院の医師らと研究を行い、筆頭著者として成果をまとめた。
論文はWEBで誰でも無料で閲覧できる
研究は、血液透析を受けている下肢閉塞性動脈疾患患者さんに、“SIXPAD”で知られるMTG社の足の筋肉を鍛えるEMS装置を用いて介入し、下肢の筋力と末梢血流への影響を評価する内容。透析患者さんで下肢虚血の場合、下肢の筋力低下や循環障害の併発を予防するために運動療法を行うが、足底(足の裏)の創傷や関節痛といった理由で治療とリハビリの両立が困難なケースも見られる。そうした患者さんに対する代替手段として、綾部副院長は今回の研究に取り組んだ。
研究で使用したEMS装置『SIXPAD Foot Fit2』(現行モデルはSIX PAD Foot Fit3)
対象は、八尾病院で透析を受け同意が得られた下肢閉塞性動脈疾患の高齢患者さん6人。週3回の透析中にEMS装置を使用し、装置に組み込まれた1回20分程度のオートプログラム(段階的に運動強度が変化)を行い、筋力や筋量(足底屈、背屈、足趾力、ヒラメ筋筋厚)、循環動態(皮膚灌流圧、最大静脈血流速度、時間平均静脈血流速度、静脈血流量)を初回前、使用開始4週後、8週後に評価した。静脈血流は安静時、随意収縮時、EMS実施時に測定。
体重計のように裸足で乗ると電気刺激で足の裏やすね、ふくらはぎなどの筋肉が収縮する。透析中の患者さんには立てかけて使用
結果は、足底屈筋力は有意に増加。足背屈筋力、足趾力、ヒラメ筋筋厚の変化に有意差は見られなかった。最大静脈血流速度は、随意収縮が安静時、EMS使用時と比較し、すべての時点で有意に高値を示した。EMS は8週目で安静時と比較し有意に高く、また時間平均静脈血流速度では、EMSがすべての時点で安静時および随意収縮時よりも有意に高値だった。静脈血流量でも、EMSがすべての時点で安静時、随意収縮時よりも有意に高かった。8週目には随意収縮時が安静時よりも有意に高値を示した。
皮膚灌流圧の改善など他の結果もふまえ、論文では、透析中のEMSが糖尿病や下肢閉塞性動脈疾患などを合併する高齢患者さんの筋力と末梢循環を改善する可能性や、補助療法になり得る可能性を指摘。創傷治癒に強く影響する皮膚灌流圧については、EMSで改善することを示す「世界初の報告」としたが、「今回の研究は少数例での検討だったことから、より大規模な研究が必要」と課題を指摘した。
綾部副院長は、「EMS装置に興味をもったきっかけは、小児まひの患者さんの話です。“自宅で使用していたら少し踏ん張れるようになった”と聞き、実際に歩いてもらうと確かに体のふらつきが少なくなっていました。自分でも体験したうえでMTG社に連絡し、徳洲会グループの倫理委員会を経て研究を開始しました」と説明。
「当院では創傷ケアセンターを設け、糖尿病や閉塞性動脈硬化症による下肢切断を防ぐ治療を行っていますが、治療中や治療後のリハビリが難しい方も少なくありません。使用したEMS装置は医療機器ではないため病院では使用しませんが、何かのヒントになれば」と期待を寄せ、さらなる研究の発展に意欲を見せる。