
直言
Chokugen

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直言 ~
石川 真(いしかわまこと)
白根徳洲会病院(山梨県) 院長
2026年(令和8年)07月20日 月曜日 徳洲新聞 NO.1552
AI革命、社会保障費の逼迫など、我々を取り巻く環境は激流のごとく変化しています。社会保障費の削減を意図する医療制度改革は、その最先鋒であることは間違いありません。そうした中、公的病院群の約7割が赤字経営であることが取りざたされています。この状況を不可避とするか、時代の潮流を読み取り変化を求め、闘いを挑んでいくかによって、今後の医療を持続可能なものにできるか否かの大きな岐路に今、立っていると思います。
ダーウィンは「環境圧力によって近視眼的な目標のみに囚われた行動を取る生物種」や「環境の変化に追従できない生物種」は絶滅すると言っています。今、医療制度改革という環境圧力に対し、耐えられず逃げ出すか、近視眼的変化にとどまるか、未来に向かって持続可能なシステムを模索するか、選択を迫られています。今こそ歴史を振り返り、学び得たことを次世代への糧とすることが、時代の変化に追従する要諦だと思います。
53年前、徳洲会は大学病院をヒエラルキーの頂点としたシステムから、はみ出した組織として、“生命だけは平等だ”を理念に掲げスタートしました。当時の医療界では異質な存在であったことは論を俟ちません。グループの創世記をつくられた幹部の先生方の労苦は、筆舌に尽くしがたいと推察いたします。50年余り、医療活動の中心を庶民の目線に落とし、いつでも、どこでも、手を差し伸べる救急の実践に不断の努力を重ねました。そこに患者さんからの信望が熱く寄せられたのです。「あのグループなら、いつでも診てくれる。私たちの立場で考えてくれる」。このような周囲の医療者や患者さんからの評価は、素直に我々への大きなリスペクトと受け止めていいのではないでしょうか。信望とは不思議なものです。求めれば求めるほど逃げる一方、我々がつくってきた歴史のように、むしろ見返りを求めず、ただ人のために働く者の上に自然に集まってくるものなのです。
公的病院の赤字経営、医療施設の老朽化など、山梨県の医療事情も悲惨な状況にあります。老朽化しても建て替え困難、継承者不在による倒産危機に陥った病院群が、医療の現場から退場していく現状を見るにつけ、地域医療を守るためには「官」に頼らず、「民」による持続可能な医療オペレーションシステムを構築することが、喫緊の課題であると強く思いました。
そこで、当院を含む民間3病院で地域医療連携推進法人を立ち上げ、これら病院間で医療機能分化の明確化、限られた人的・物的医療資源の有効活用を掲げ、医療経営の効率化を図ることにしました。医師会からは「徳洲会による寡占・独占を危惧する」といった声も聞こえますが、ある医師会の長老からは「元気のある徳洲会が中心となり、民間病院の生き残りを考えることが大切」といった応援の声もいただきました。私は行政や医師会などへの対応の中で、「徳洲会が民間の雄として、行政の成すべき施策を肩代わりするのです」と言い続けてまいりました。今後、社会情勢を見極めながら、今回の試みを成功に導きたいと思っています。
社会保障費の逼迫、過疎化、高齢化などに対する医療体制整備は、抜本的変革が必須です。こうした社会問題に真正面から対応できるのは、我々のグループのみであると考えます。過去50年余り、徳洲会は断らない医療を地道に展開し、過疎地域・島嶼医療を軌道に乗せてきました。地域医療のみならず、昨今は時代の潮流を読み取り、ロボット手術、異種移植など先進医療にもチャレンジし、世に還元していく姿勢を追求しています。恵まれない人々に医療の光を届けながら、先進医療にも取り組む医療集団は、徳洲会以外にないと言っても過言ではありません。歴史は断絶することなく、今という時間も過去の積み重ねの中にあります。
徳洲会は発足以来、“生命だけは平等だ”を実直に実践し、医療の世界に誰もが認める轍をつくってきたことに、我々は自信を持つべきです。先輩方の日々の努力のつながりの上に、今の私たちがいるのです。過去の努力が芽吹き大きく育っている今、日本の医療界の新しい秩序の形成に、全職員が努力し向かっていく気概が必要です。
皆で頑張りましょう。