徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2025年(令和7年)04月21日 月曜日 徳洲新聞 NO.1488 3面

井上・先端医療センター長
核医学の発展へ大きな貢献

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)先端医療センターの井上登美夫センター長の退職記念講演会が3月22日、同院で開催された。先端医療に携わる医師らが集まり、日本の放射線・核医学の発展に貢献した井上センター長の功績をたたえた。

湘南鎌倉病院で退職記念講演会

井上センター長に花束を贈呈する小林院長講演会参加者全員と記念撮影

開会にあたり同院放射線腫瘍科の大村素子・主任部長は「井上先生には横浜市立大学附属病院時代からお世話になっています。先生は2021年にオープンした先端医療センターのセンター長として人材のリクルートや育成、国際交流、学会開催などに尽力されました。どのような状況でも、つねに前向きに取り組まれる姿が印象に残っています」と挨拶した。

続いて放射線部の卯月大輔主任が同院の核医学診療体制を紹介。このうち、年内にも保険診療が始まる前立腺がんのPSMA(前立腺特異的膜抗原)-PET(陽電子放射断層撮影)検査を行っているのは、国内では同院を含め3施設だけで、全国から患者さんが受診していることを明かした。昨年には、同院と国際原子力機関(IAEA)が合同で人材育成トレーニングも実施。「核医学の発展に欠かせない井上先生の退職は寂しいですが、残ったスタッフで次のステージに向かって進んでいきます」と意欲を示した。

特別講演の講師に招聘した日本核医学会理事長で金沢大学医薬保健研究域医学系核医学の絹谷清剛教授は「核医学治療―昔・今・これから―がんが怖くない時代がきっとくる」をテーマに核医学の研究・治療の現状を学術的な観点から解説し、核医学・医薬の市場にも触れた。

絹谷教授によると、核医学診療は米国で甲状腺がんに放射線治療が行われた1941年が幕開けとされ、その後、長足の進歩を遂げ、昨年、同国で行われた臨床試験は271件に上るという。日本では臨床試験はまだ少ないが、大学を中心に大手製薬企業、ベンチャー企業でも活発化していることを紹介した。

今や放射線の利用は科学、創薬医療、産業と、さまざまな分野に広がっている。核医学・医薬の市場規模もふくらみ、放射性医薬品については2033年には136億ドル(約2兆1️,000億円)に達するとの予測もある。

絹谷教授は、「国内の核医学診療をリードする湘南鎌倉病院には、今後、承認が見込まれる小児神経芽腫の放射性医薬品、ヨードベンジルグアニジンをはじめ、新たな治療法を積極的に取り入れることを期待しています。すべてのがんをひとつの核医学治療で治す時代も、それほど遠くないでしょう」と展望した。

これを受け、井上センター長は「力強いメッセージに勇気づけられました。近年、診断と治療を融合させた医療技術であるセラノスティクスは核医学領域でも注目されており、当院でも神経内分泌腫瘍に対し、放射性同位元素(RI)を組み込んだ薬剤のルタテラを用いた治療に取り組んでいます。PSMA-PETに続き、セラノスティクスによる臨床への期待が高まります。この先も先端医療センターの名にふさわしい医療が実践されることを望んでいます」と述べた(寺田茂彦センター長補佐が代読)。

小林修三院長は閉会の挨拶で、「井上先生の仕事を拝見し、どんなにすばらしい器械を導入しても治すのは人であり、優しい心をもつ人が医療機器を使いこなしてこそ、人を幸せにできるということを実感しています。先生が在籍された7年間で、当院に醸成された医療に対する温かい思いを次の世代に伝えていきます」と締めくくった。

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