徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)04月21日 月曜日 徳洲新聞 NO.1488 3面
第2回医療安全心理・行動学会学術総会が3月8日から2日間、大阪府で開催され、大和徳洲会病院(神奈川県)の遠藤純男・脳神経外科主任部長兼医療安全管理室部長(現・鎌ケ谷総合病院脳神経外科部長)が共同総会長のひとりを務めた。テーマは「医療現場と心理学・行動学の架け橋」。遠藤・主任部長以外にも徳洲会関係者が演者として登壇した。
徳洲会関係者が数多く登壇。前列左から大坪顧問、江口・看護師長、西村・医療安全管理者、松田・看護師長、後列左が遠藤・主任部長、後列右から佐々木主任、山上副院長、佐藤・名誉院長
遠藤・主任部長は総会長シンポジウムで登壇。「医療現場における心理・行動学に関わる問題―臨床医の立場から」をテーマに発表した。はじめに、医療安全管理者について説明し、日本医療機能評価機構や厚生労働省などが作成した指針を用い、目的や役割、業務内容、養成研修プログラムなど紹介。いずれも内容が細かく多岐にわたることを強調した。
そのうえで、全国に点在する病院の「約8割が中小規模(400床未満)」とし、「日本の医療安全の質を底上げするには、中小規模病院の実態を調査し解決策を考えなければなりません」と訴えた。遠藤・主任部長は、北海道から沖縄県まで各地にさまざまな規模の病院を展開する徳洲会グループを“日本の縮図”と捉え、主にグループの中小規模病院に在籍する医療安全管理者を対象に、医療安全管理活動のアンケート調査を行ったことを報告。
その結果、①ひとりで奮闘しながら医療安全活動をしている実態が垣間見えた、②十分な医療安全活動を行うには、病院幹部の理解と協力の必要性、職種間や病院間の垣根を越えて協力し合う多職種連携の重要性などがわかった――など示し、全国の病院で医療安全活動を一層推進していくための「必要かつ重要な問題点・解決策の一部」と指摘した。
また、徳洲会グループには医療安全管理部会、ブロック会議など、組織横断的な取り組みがあり、すぐに相談・情報収集できる環境があることもアピールした。
東京西徳洲会病院の佐藤一彦・名誉院長(包括的がん診療センター長、乳腺腫瘍センター長、外科統括部長)は招聘講演で「グループ全体で取り組む医療安全管理体制の確立―重大事故等検討分科会の活動報告」を行った。
佐藤・名誉院長は医療の高度化・複雑化、患者さんの高齢化と権利意識の向上など医療安全を取り巻く社会が変化し、今や医療事故が起きた際に対応を誤れば組織そのものの存続が危うくなると指摘。医療事故をクライシス(災害)と捉え、医療安全管理の重要性を強調した。
この後、徳洲会グループでは、都市部に比べ人材などが限られる離島・へき地の病医院でも質の高いクライシス管理ができるよう、徳洲会インフォメーションシステム(TIS)の協力の下、グループ内で起きた医療事故を一括管理、スケールメリットを生かした医療事故防止策を展開していることを紹介した。
重大事故は①意図しない異型輸血、②手術の部位、手技、または患者さん間違いによる重大事故、③手術時の意図しない異物の遺存、④薬剤誤投与による重大事故、⑤転倒転落による死亡、⑥重大所見の不伝達──の6つにまとめ、それぞれ実行可能な予防策を提言し、各院に周知、実際に提言が守られているか実地調査も行っていることを明かした。
ただ、多忙な現場で提言を守る負担をできるだけ軽減するため「今後はリスク評価などでAI(人工知能)の活躍を期待したい」と佐藤・名誉院長。また、「提言が本当に医療事故防止に寄与しているか継続的に確認し、よりエビデンス(科学的根拠)に基づいたクライシス管理を実行していく必要があります」とアップデートの必要性も訴えた。
遠藤・主任部長が座長を務めた手術時のトラブルをテーマとするパネルディスカッションでは、まず一般社団法人徳洲会(社徳)医療安全・感染管理部の大坪まゆ美顧問(徳洲会医療安全管理部会長)が、グループ全病院に配置されている医療安全管理者の活動内容を紹介。事故発生時には速やかに本人・家族などに説明し、朝会などで職員にも報告、「隠していると思われないようにすることが大切です」と強調した。
続いて湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の江口陽子・看護師長が自院の年間手術件数やインシデント・アクシデント発生時の対応など説明。同院の山上浩副院長(ER・救急総合診療科)は事例、松田和美・看護主任はその背景と再発防止策を示した。
社徳医療安全・感染管理部の佐々木史博主任は、グループ全職員を対象に実施した安全満足度調査から、ヒヤリハット報告状況と職場・職種の関連性など解析。最後に、吹田徳洲会病院(大阪府)の西村和恵・医療安全管理者はグループ全病院で医療安全に関する相互ラウンドを実施、評価表に沿いチェックしていることなど伝えた。会場からはグループの組織的な取り組みを評価する声が聞かれた。
閉会後、遠藤・主任部長は「当学会は心理学や行動学に着目して医療安全文化の構築を目指す、恐らく世界でもあまり類を見ない学会だと思います。医療者だけでなく、心理学や行動学関係の先生方の話も聞くことができます。今回、総会長を務めさせていただき光栄です。今後も盛り上げていけるように私自身、努力してまいります」と語っていた。