徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)12月24日 月曜日 徳洲新聞 NO.1165 一面

札幌病院
小切開のVANS法を実施
甲状腺内視鏡サージセンター開設

札幌徳洲会病院は甲状腺内視鏡サージセンターを11月に開設した。同院は甲状腺良性腫瘍やバセドウ病に対する内視鏡下甲状腺手術(VANS法=Video-assisted neck surgery)が保険適用となった2016年4月に同術を開始。今年4月に保険適用となった甲状腺悪性腫瘍の切除術にも取り組んでいる。甲状腺の病気は女性に多いが、従来の手術では創痕が患者さんの精神的な負担になることが課題だった。一方、VANS法は創痕が小さく高い整容性(見た目)を期待できることからニーズが高まっている。同院は、これまで以上に患者さんへの認知度を高めるため同センターを設立、より多くの患者さんに貢献していきたい考えだ。

整容性損なわずに手術可能

「今後も術式をバージョンアップしていきたい」と片山センター長 「今後も術式をバージョンアップしていきたい」と片山センター長

甲状腺は喉(のど)ぼとけの下に蝶の羽のように左右に広がる10~20gほどの臓器で、全身の代謝を調節したり成長を促進したりする役割のある甲状腺ホルモンを分泌している。甲状腺の疾患には、甲状腺にしこりができる良性・悪性腫瘍や、ホルモン分泌に異常が生じる甲状腺機能低下症・同亢進症などがある。甲状腺機能亢進症を引き起こす代表的な疾患がバセドウ病だ。

これらの甲状腺疾患は男性よりも女性に発症しやすいことが知られている。良性腫瘍でも、のどへの圧迫感が強い場合や、大きくなり見た目が気になる場合には手術を行う。

従来の外科手術は首元を横に10㎝ほど切開して行うが、術後、目立つ位置に手術の創痕が残るため患者さんの精神的な負担になったり、整容性の面で手術に踏みきれない要因になったりしていた。

一方、目立たない位置に小切開で施行できるのがVANS法。経口腔(こうくう)アプローチ、鎖骨下アプローチ、腋窩(えきか)アプローチと複数のアプローチ法がある。札幌病院は鎖骨下アプローチを採用している。

単独術者によるVANS法を実践 単独術者によるVANS法を実践

札幌病院甲状腺内視鏡サージセンターの片山昭公センター長(兼耳鼻咽喉(いんこう)科部長)は「鎖骨下アプローチによるVANS法は、鎖骨(右側)のすぐ下に2.5㎝程度の皮膚切開を行い、内視鏡を挿入するため首に5㎜ほどのわずかな切開を行うだけで施行できます。創痕が小さいうえに、通常の着衣によって隠れる位置のため、整容性を大きく損なわずに手術が可能です」とアピールする。

このほか鎖骨下アプローチには、さまざまな甲状腺疾患に対応可能であることや、切開創から術野までの距離が近く、用手的操作(手指で直接触れて行う手技)の併用が可能であることから、安全性が高いなどのメリットがあるという。

通常の手術では入院期間は1週間前後だが、VANS法は小切開で手術を行うことができるため、これまでほとんどの患者さんが術後3日目には退院しているそうだ。

片山センター長は、鎖骨下アプローチによるVANS法を開発した日本医科大学付属病院の清水一雄・外科学主任教授(現・名誉教授)に師事し、同法を修得。前任地の旭川医科大学で研鑽(けんさん)を積み症例を重ねてきた。現在までに同法を約500症例(札幌病院に赴任後は約200症例)経験。

「甲状腺の手術は、一般的に耳鼻咽喉科、頭頚(とうけい)部外科、内分泌外科といった診療科で行われています。当院ではこれまで耳鼻咽喉科が実施してきましたが、患者さんから見て、ややわかりにくい印象があったため、甲状腺内視鏡サージセンターの看板を掲げることにしました」とセンター設立の理由を説明する。

VANS法による鎖骨下アプローチは創痕が小さい(赤丸で囲んだ部分) VANS法による鎖骨下アプローチは創痕が小さい(赤丸で囲んだ部分)

甲状腺内視鏡手術を保険診療として実施するには、外科、内分泌外科、耳鼻咽喉科、頭頚部外科のいずれかの診療科の経験年数が10年以上で、かつ当該技術の執刀医としての経験症例数が良性腫瘍は5例以上、悪性腫瘍は8例以上の常勤医が在籍していることが条件。

これらのハードルに加え、技術習得の機会が限られていることなどから、全国でも取り組んでいる施設は少ない。こうしたなか片山センター長は全国の大学やがんセンターなどから、同法の習得を希望する多数の医師の研修を受け入れている。

また片山センター長はVANS法を円滑に施行するための手術器械を考案したこともある。これは、皮膚切開部に金属の棒を差し込み、皮膚を吊り上げて術野や手術手技を行う空間を確保するための器具。医療機器メーカーからも販売されている。吊り上げ法は二酸化炭素を注入する送気ガスが不要となり、空気塞栓や縦隔(じゅうかく)気腫といった合併症のリスクを回避できる。

既存のエナジーデバイス(組織の切離や凝固を行う医療機器)の改良にも貢献。凝固・止血用の手術器具に関し、ハンドル部分から先端までのシャフトの長さが既存タイプのものだとVANS法では短かったため、片山センター長の提案で、より長いタイプの器具が誕生、メーカーからの市販も決まったという。このほかタイやベラルーシなど海外に赴き、技術指導にも携わってきた。

臨床、教育・指導、デバイスの進化と多方面で活動する片山センター長。術式の改善を重ね続け、現在では単独術者によるVANS法に取り組んでいる。「これからも創意工夫を重ね、術式をバージョンアップしていきたい」と意気軒高だ。

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