徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)8月28日 月曜日 徳洲新聞 NO.1097 四面

多職種で地域医療の質向上
湘南鎌倉総合病院
脳卒中治療研究会を開催

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)脳卒中センターは7月8日、県内で「脳卒中治療研究会 大磯セミナー2017」を開催した。同セミナーには湘南地域の病院を中心に医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師、管理栄養士、MSW(医療相談員)など182人が集結。製薬会社や医療機器メーカーからの発表も含め演題数は68演題に上り、多くの参加者が熱心に聴き入った。

「脳卒中の患者さんには多職種がかかわります」と森センター長 「脳卒中の患者さんには多職種がかかわります」と森センター長

大磯セミナーは湘南鎌倉病院の森貴久・脳卒中センター長兼脳卒中診療科部長が主催し、今年で18回目。同院や連携先の医療機関、福祉施設、企業などが参加し、脳卒中治療にかかわるさまざまな職種の知見を集めることで、湘南地域全体の脳卒中診療のレベルアップを図るのが狙い。

開会の挨拶で森センター長は「1人の脳卒中患者さんには、多職種がかかわり治療が成り立っています。多領域の知識を吸収し、明日からの脳卒中診療に応用してください」と、同セミナーに託した思いを強調した。

「診断・治療」のテーマで、徳洲会病院からは5演題発表。湘南鎌倉病院の笠倉至言・脳卒中診療科医長は「経管栄養を受ける急性期脳卒中患者の血糖変動」と題し報告した。脳卒中急性期に経管栄養を行うと高血糖が見られるが、血糖値がどう変動するかは不明。そこで持続血糖測定を用いて血糖曲線を観察し、「ピークまでの立ち上がりやピーク後の下降が緩やかで著明な食後高血糖が見られるなど、特徴的な血糖曲線が明らかになりました」と結んだ。

森センター長は「急性期患者に対するSGLT2阻害薬を用いた高血糖管理の有用性」がテーマ。急性期脳卒中に限らず高血糖管理には確立された方法がないため、SGLT2阻害薬の有用性について調査した。糖質40%・カロリー制限食を高血糖患者さんに投与したところ血糖値が大幅に減少。この結果をふまえ、「低糖質食との組み合わせは高血糖管理にきわめて有用です」と強調した。

同院の吉岡和博・脳卒中診療科医師は「前方循環脳梗塞時の経上腕動脈的専用ガイドシース留置の確実性」と題し発表。脳梗塞に対する緊急再開通治療は再開通が早いほど予後が良いと指摘。ガイドシース(太く柔らかい管)を経上腕動脈的に目的頚(けい)動脈に誘導できた成功率と誘導時間を調査し、「前方循環脳梗塞時の経上腕動脈的専用ガイドシース留置は、短時間で確実にできていました」。

同院の丹野雄平・脳卒中診療科医長は「後拡張しない頚動脈ステント留置術直後の残存狭窄(きょうさく)と過灌流(かかんりゅう)症候群」をテーマに発表。術後の残存狭窄と過灌流症候群の関連性を調査。内頚動脈高度狭窄症例で後拡張をしない控えめな頚動脈ステント留置術を施行すると、「約半数の症例でステント内残存狭窄が見られ、その影響か過灌流症候群を起こした症例はなかったです」と推察した。

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の溝上康治・脳血管外科部長は「内頚動脈閉塞に対する急性期血行再建術の2症例」と題し発表。意識障害と重度右片まひの85歳男性、構音障害と軽度左片まひの80歳男性の症例を呈示。「既往歴や臨床症状、検査・画像所見などから病態を想定し、適切なデバイス(医療機器)を選択することで、合併症を未然に防止し予後良好になります」とまとめた。

68演題の発表に知見を深める参加者 68演題の発表に知見を深める参加者

続いて「急性期病院の診療報告」のテーマで、徳洲会病院からは2演題発表。森センター長は、湘南鎌倉病院の脳卒中診療科で昨年1年間に対応した患者さんは1123人で、緊急入院が53%を占めたと報告した。緊急入院の大半を占めた脳卒中患者さん575人(脳虚血78%、脳出血22%)の在院日数は6.4日程度と推察。「新たにできた退院支援加算Ⅰについても救急入院の100%で算定できています」と語気を強めた。

溝上部長は、湘南藤沢病院で総合内科と脳血管外科を合わせた脳卒中の症例数は454人で、「脳梗塞71.8 %、脳出血19.8%で、くも膜下出血、解離性脳動脈瘤(りゅう)などもありました」と内訳を紹介。主な手術件数は脳動脈瘤52例、頚動脈病変23例、緊急再開通療法20例と報告した。

多様な角度から演題発表

薬剤師の取り組み

「脳出血症例における降圧療法の実施状況調査」

宮田祐一薬剤師 脳出血入院患者さんの降圧剤の服用歴を調査。入院前に降圧療法を受けていない患者さんが6割存在し、うち95%は常用薬がなかった。常用薬がない症例は、かかりつけ医がいない症例と推察し、「かかりつけ医による投薬管理は脳出血を予防するうえで重要です」とまとめた。

「消化性潰瘍症例から考える抗血栓薬の使用状況調査」

須賀明輝薬剤師 抗血栓薬は消化性潰瘍のリスク因子だが、同症例から抗血栓薬の使用状況を調査した結果、「脳梗塞既往患者さんでは、抗血栓薬と消化性潰瘍予防薬の併用は他疾患に比べて多いが、消化性潰瘍の発症は明らか」と報告。予防薬投与を継続したほうが良いのか問題提起した。

「脳出血症例の転帰に対する抗血栓薬服用歴の影響」

上野栞薬剤師 脳出血は抗血栓薬服用による重篤な致死的副作用のひとつ。脳出血患者さんの抗血栓薬の服用歴が予後にどう影響したのか調べたところ、死亡率は抗血栓薬なしの5%に対し、ありが20%と有意に高かったことを報告した。

栄養改善の取り組み

「急性期脳卒中患者の生活習慣病管理状況と食事内容:脳梗塞患者と脳出血患者の差違」

中川美幸・管理栄養士 脳梗塞群と脳出血群の食事や血圧値を比較。塩分摂取量はほぼ同じだが、「脳出血群で血圧が高値であるため、厳格な減塩指導が必要。75歳以上にはタンパク質の摂取を推奨する必要があります」とまとめた。

「経口摂取可能な低栄養患者に対するロイシン強化リハサポートの効果」

丹野雄平・脳卒中診療科医長 80歳女性、左片まひで入院した症例で、経口摂取が可能なものの入院初日から栄養状態を示すプレアルブミン値が大幅に低下。このため「3日目からリハサポート(流動食)を追加したところ、7日目から栄養状態の改善が見られた」と効果を報告した。

「経管栄養管理で低栄養患者に対するロイシン強化ロイシン・プラスの効果」

吉岡和博・脳卒中診療科医師 95歳女性、左まひ増悪で緊急搬送。入院2日目から経管栄養を開始したがプレアルブミン値が上がらないためロイシン・プラス(経管栄養)を徐々に増量した結果、「低栄養状態の改善が見られ、14日目に経口摂取のためリハ病院へ転院となりました」という症例を紹介した。

「栄養状態が悪化した腎機能障害患者に対するMCTオイルの栄養改善効果」

笠倉至言・脳卒中診療科医長 中鎖脂肪酸(MCT)は糖質・タンパク質を付加しにくい患者さんのエネルギー源として期待できると指摘。腎機能障害のある脳卒中患者さんの経管栄養にMCTを加えたところ、「短期間で栄養状態の改善が見られ、腎機能や血糖の増悪も起きませんでした」と報告した。

研究ソフトウェア・ME・検査・放射線科

「脳梗塞患者のHBOでの血液変動についての検討」

矢野群幸・臨床工学技士 HBO(高気圧酸素)治療で、2017年2月から血圧計を変更して以降、血圧を理由にした中止・中断が減少した。「BARAMO(高気圧治療モニタ)は精度点検項目が多く、より正確な数値が期待できます。機器の選定はその特性を理解して行うべき」と結論付けた。

「微小栓子シグナル(MES)検査」

立川麻美・臨床検査技師 経頭蓋内エコーを用いてMESの検出を行っており、脳塞栓症の患者さんで右左シャント(血流の異常)疾患の有無を確認。約半年間で40症例のMES検査を実施し、うち10症例が陽性だった。しかし「頭蓋内エコーは描出困難な症例が多い」など課題を挙げた。

「脳梗塞急性期患者におけるFalse negative DWI検出感度と技術的考察」

佐藤博文・診療放射線技師 MRI(磁気共鳴画像診断)検査の拡散強調画像は有用な撮影法だが、描出されない症例もまれに見られる。これらを部位別・病態別に集計すると後方循環領域が有意に多かった。この結果から「微小梗塞や脳幹部付近の歪みなどを考慮した撮像方法が今後の課題」と指摘した。

看護・地域連携・医事

「DVT予防具選択基準の統一化」

島袋愛梨看護師 DVT(深部静脈血栓症)予防には弾性ストッキングやフットポンプなどがあり、これらの選択基準を統一することで予防ができるかどうか調べるため、基準統一前と統一後を比較。有意差は見られなかったが、減少傾向にあり「フローチャートを作成したことで看護師のDVTに対する意識が高まった」と報告した。

「ソーシャルハイリスクを考える 身寄りがない患者の事例を通して」

平野志穂MSW 脳出血を発症した94歳女性の転院支援を紹介。急性期病院では解決できない数多くの課題を抱えながらリハ病院へ転院したと報告し、「身寄りがない患者さんの場合、家族の役割を細分化し、地域を含めた多機関のネットワークで支えていく必要があります」と訴えた。

「診療報酬からみた脳卒中治療」

金内太一・医事課職員 2014年度と16年度の診療報酬点数を比較し、血栓溶解療法(t-PA)に代表される高度急性期医療や緊急の血管内治療は高く評価される傾向にあると説明。「急性期で密度の高い医療を提供することが地域医療における役割を果たすことにつながります」と結んだ。

リハビリテーション

「急性期病院における高齢者脳卒中患者のトランスサイレチンは退院時FIMと関連するか」

中村祐紀・言語聴覚士 トランスサイレチン(プレアルブミン)とADL(日常生活動作)の関連性を検討。トランスサイレチンの高値持続群と低値持続群を比較した結果、退院時FIM(機能的自立度評価表)との関連として、高値持続群のFIMが高かったため、「高値持続群がリハビリしやすい身体環境だったのではないでしょうか」と考察した。

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