2017年(平成29年)8月28日 月曜日 徳洲新聞 NO.1097 三面
老健あいの郷
在宅復帰に力注ぐ
多職種共有の評価票導入
介護老人保健施設あいの郷(埼玉県)は在宅復帰率50%超などの要件を満たす「在宅強化型老健」だ。老健は病院と在宅の中間施設であり、看護・介護サービスやリハビリテーションを通じ、入所者の在宅復帰を支援するのが第一の役割。在宅強化型はそれを後押しする国の制度だ。地域のニーズに応えながら多職種が一丸となり施設運営に取り組むことで、要件をクリアするとともに、近隣の羽生総合病院との緊密な連携の下、直近1年間で平均92%の入所率を維持している。
直近1年間 平均入所率92%
前列右から荒井・介護士長、羽生病院の関口幸子・看護部長、後列右から勇事務長、五十嵐志織リハビリ部門副室長、坂本主任、長島主任
「残りは3個です。次は左手でもやってみましょう」。作業療法士がカゴを支えながら入所者さんに優しく話しかけた。あいの郷の機能訓練室でのひとコマだ。カゴの中には、たくさんのピンポン玉とともにサイコロ型に切ったスポンジが入っている。これを手さぐりで当てるリハビリテーションのプログラムだ。
同室を入ってすぐ左手には受け付け台があり、そこへ記録用紙を持った方たちが次々と訪れる。自ら用紙に書き込んだ後、体の周囲をぐるぐると両手でボールを回す運動や、エアロバイクをこぐ運動などを行った。こちらは通所リハビリで来所し、“自主トレ”をしに来た利用者さんたちだ。
同施設の入所定員は100人。建物は2階建て。入所やショートステイ(短期入所療養介護)、通所リハビリ(定員70人)に加え、昨年9月以降に訪問リハビリなどを開始。2015年4月には併設事業所のヘルパーステーションあいの郷を開設するなど、施設・在宅サービスの充実に努めている。
「事務職も含め“全職員が利用者様を支援する”という姿勢を大切にし、こだわっています。この共通認識がチームづくりの基盤になっています」(勇仁事務長)
「在宅強化型」施設
開設から今年で20周年を迎えるあいの郷
リハビリスタッフを手厚く配置するなど機能回復に力を入れる同施設は、老健のなかでも「在宅強化型」に分類される。同型には①在宅復帰率(6カ月間の退所者数に占める在宅介護者の割合)50%超、②ベッド回転率(30.4/平均在所日数)10%以上――など要件がある。厚生労働省の調査(16年10月)によると、回答のあった老健1807施設のうち在宅強化型は245施設(13.6%)。
徳洲会では同施設のほか、ゆめが丘(神奈川県)、リハビリケア湘南かまくら(同)、八尾徳洲苑(大阪府)が同型だ。
あいの郷は15年11月に在宅強化型になったが、ベッド稼働率の低下から16年3月にいったんは取り下げた。質の高いサービスを提供するには安定経営も大切な要素。このため地域特性などをあらためて分析し、①入院による退所者さんを減らす、②リピーターを増やす――ことを目指した。①は在宅復帰率を高め、②はベッド稼働率の向上に寄与する取り組みだ。
入院による退所者を減らすには、体調変化を早期にとらえることが肝要。同施設介護部門の坂本敬一主任は「他職種とコミュニケーションを密に取り、肺炎や脱水などに至る体調変化のサインを見逃さないよう注意しています」と話す。それでも入院が必要な場合には連携先の羽生病院が救急の受け入れを含めて対応。
在宅復帰を目指し入所者さんにリハビリ実施
一方、リピーターとは在宅復帰後のショートステイでの利用者さんを指す。「自宅で介護していると家族が疲弊する場面も出てきます。そうした時にはショートステイで、いつでも一時的に戻ってきていただき、家族の方たちが安心して在宅介護を続けていけるようサポートしています」(支援相談員の長島大介主任)。
ショートステイは利用の2カ月前から申し込みを受け付け、多い時には15~20床を占めるという。ショートステイのニーズにも応えながら、羽生病院の相談員と月1回のミーティングを実施するなどし、綿密なベッドコントロールに尽力。こうした取り組みを行うなかで16年8月、在宅強化型に復帰し、維持している。
あいの郷は職員の定着率が高いのも特徴だ(直近1年の離職率4.6%。全国の介護事業所の平均離職率は16.7%「2016年度介護労働実態調査」)。荒井優子・介護士長は「楽しくて、やりがいのある職場にするために、さまざまな仕かけをつくっています」と説明。
介護職、看護職、リハビリスタッフが共通のフォーマットで、入所者さんの状態について情報を共有するツールとして、2年前に独自の評価票を導入。移動や排泄(はいせつ)、更衣など生活動作ごとに自立度を5段階評価している。
同施設は品質マネジメントシステムに関する国際規格「ISO 9001」を05年に取得。以降、更新を続けている。さらに、介護職員が働きながらスキルアップを目指せる環境整備の一環として、県の承認を得て今年度から介護福祉士実務者研修講座を実施。同施設からも4人が受講している。