2021年(令和3年)3月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1280 四面
待望の国産ワクチン 年内実用化に厚い壁
各国で新型コロナワクチンの争奪戦が激化し、東京オリンピック・パラリンピックの開催も迫る日本で待望されるのが国産ワクチンだ。最終段階まで、あと一歩のところまで来ているワクチンもあるが、大規模試験の実施や製造ラインの確保に時間が必要で、年内の実用化は困難との見方も出ている。
試験・生産体制整備がネック
国内では5社が開発を進めている。なかでもバイオベンチャー企業のアンジェスと大阪大学が共同開発しているDNAワクチン*¹は、最終段階まで、あと一歩のフェーズ2/3試験(500例対象)を終えており、急ピッチで開発が進んでいる。同社は昨年実施した60人対象のフェーズ1試験の結果とあわせて6月に結果を発表する予定。
その後を追うのは塩野義製薬の組み換えタンパクワクチン*²で、現在214人を対象にフェーズ1/2試験を実施中。また、第一三共のmRNAワクチン*³、KMバイオロジクスの不活化ワクチン*⁴、IDファーマのウイルスベクターワクチン*⁵も、早ければ今春にフェーズ1試験を開始する予定だ。
とくに先行するアンジェスのワクチンは、年内の実用化が期待されていたが、すでに海外で有効性の示されたワクチンが複数出回っていることから、数万人規模の治験参加者をすぐに確保するのが難しく、ワクチンの大量生産体制の整備にも時間がかかるため、「国産ワクチンが一般に出回るのは来年年明け以降になる可能性が高い」と、徳洲会グループの治験・臨床研究をサポートする未来医療研究センターの歌田直人社長は見越す。
政府も十分なデータがあることを条件に承認時間を短縮したり、研究開発と同時並行で製造ラインを構築できるよう支援したりしているものの、整備に時間がかかっている。
ただ、コロナワクチンは今後、インフルエンザワクチンのように毎年接種するようになるとの見方が多く、国内で独自に変異を遂げる可能性も相まって国産ワクチンの開発は焦眉の急だ。
【用語解説】
*¹ 人工的につくったウイルス表面のタンパク質のDNA(抗体の設計図)を投与する新タイプのワクチン。*² 人工的につくったウイルス表面のタンパク質を投与するワクチン。B型肝炎などで実績あり。*³ 人工的につくったウイルスのmRNA(抗体生成の指示書)を投与する新タイプのワクチン。*⁴ 実際のウイルスの毒性をなくし投与するワクチン。インフルエンザなどで実績あり。*⁵ 無害なウイルスに対象ウイルスの遺伝子を入れて投与する新タイプのワクチン。