2021年(令和3年)3月29日 月曜日 徳洲新聞 NO.1280 三面
職員への接種で得た知見!
地域で今後に生かす 都市・地方部徳洲会病院
新型コロナワクチン特集
都市部や地方部の多くの徳洲会病院で職員へのワクチン接種が始まっている。各都道府県の事情により優先順位が異なるためワクチンが届く時期に差は見られるものの、1回分も無駄なく接種できるよう入念に準備を重ねたうえで、受け取った病院から順次実施。地域の医療従事者や一般の方への接種に協力する病院では、職員接種で得られた知見を生かしていく考えだ。
エコーで皮下脂肪厚測定 インスリン注射器を活用
ワクチン接種に力を入れる宇治病院。気運を高めるためオリジナルTシャツを作成
宇治徳洲会病院(京都府)は、針が短くワクチンロスがほぼないインスリン皮下注射用注射器を活用し、1バイアル(瓶)から7回接種できる方法を考案、実施した。接種の際は超音波診断装置(エコー)で皮下脂肪厚を測定し、針が筋肉に届くか確認した。
当初はワクチンが足りず希望する職員1250人中275人に接種できない見込みだったが、同方法で最終的に1259人に実施、1瓶あたり6・92回だったことがわかった。3月末から同様の方法で職員への2回目の接種を行う。その後、近隣の医療従事者や一般の方向けにも、同院1階ロビーと、併設の特別養護老人ホーム内で接種する予定。「ワクチンが国を救うくらいに思っているので、希望される方にひとりでも多く接種できるよう工夫していきたい」と末吉敦院長。
皮下脂肪厚のデータから、通常用いる注射器の針の長さでは根元まで刺すと、約4割が上腕骨に当たってしまうことが判明したため、末吉院長は皮下脂肪厚を測定する大切さを強調している。
中部徳洲会病院(沖縄県)も宇治病院と同じ方法で職員への接種を実施。それでも接種を希望する職員の約3分の2に接種がとどまったが、「ひとりでも多く早めに接種できて良かったです」と照屋いずみ看護部長。
一般的な注射器用い1瓶から6回分接種
白根病院はバイアルの中で空気抜きする方法を考案
白根徳洲会病院(山梨県)は特殊な注射器を用いずに1瓶で6回接種した。まず注射器の針をワクチンに使用する一般的な21Gより、さらに細い23Gに変更し、力のかけ具合でこぼれる薬液の量を最小限に抑えた。さらに、注射器に薬液を吸い込んだ後に行う空気抜きを瓶から針を抜かずに行うことで、空気抜きの際に落ちる薬液を節約。
この工夫を考案した三阪郁子看護師(医療安全管理室メンバー)は、「当初は6回分採ることより、『万が一、空気抜きに失敗して5回分採れなかったらどうしよう』という思いから考え出しました」と振り返る。テレビで鳥取県立厚生病院が同様の方法を採用していることを後から知り、「各院がそれぞれ工夫している」と感じたという。
県に確認したところ、記録を付けていること、医師の承認があることなどを条件に、病院の責任で行う許可が出た。「最後の6回目は薬液を吸う際に角度の工夫が要りますが、技術的には難しくなく、時間もそれほどかかりません」と三阪看護師は要諦を明かす。
和泉市立総合医療センター(大阪府)も白根病院と同様の方法を実践。予定よりも多く職員に接種することができた。奥田広志・薬剤部長は「ワクチンの確保次第ですが、今後、地域の医療従事者、5月からは65歳以上の方への接種を一部担当します。より良い環境を整えていきたいです」。
訓練重ね入念に準備 患者さん目線で改善
ワクチン接種の開始に備え入念な訓練を実施(大垣病院)
大垣徳洲会病院(岐阜県)は大垣市と安八郡3町の医療従事者、大垣市民のワクチン接種を担う。4月19日の週から地域の医療従事者への接種が始まる見とおし。同院スタッフ約500人を含む約4000人への接種に加え、連携型接種施設8病院に1800人分のワクチンの払い出しも行う。間瀬隆弘院長は「積極的に地域貢献していきます」と意欲を見せる。
これまで訓練を重ね入念に準備してきた。同院コロナ対策特別委員会のコアメンバーである辻量平リハビリテーション科主任(理学療法士)は「訓練の結果をふまえ経過観察の場所を広げるなど本番に備えています」と余念がない。
鹿児島徳洲会病院は3月25日にワクチンが届き、29日から自院の職員に1回目の接種を開始する。基本型接種施設として院内で近隣の医療従事者や一般の方への接種も予定していることから、23日にシミュレーションを実施し、受け付けから問診表の記入と確認、診察、ワクチン接種、接種後の経過観察、接種証明書の発行まで一連の工程を確認した。
反省会では「注射しやすい服装」など、事前に案内が必要な事柄を確認したり、指定の問診票に基づき受け付け表の見直しを提案したりするなど、患者さん目線で改善を検討。倉掛真理子・副院長兼看護部長は「副反応が発生した時のER(救急外来)や観察室の対応スペースなどに課題が見つかりました。安全なワクチン接種ができるよう皆で頑張ります」と準備に励む。
副作用が見られた時の対応を確認(鹿児島病院)
札幌東徳洲会病院では事前に急変時シミュレーションを実施、接種会場が診療エリアから離れていることから、ERへの動線などを確認した。会場には問診などを行う医師とは別に救急医を1人配置し、万が一の事態に備えている。同様にシミュレーションを実施した千葉徳洲会病院は、リハーサルにより急変時のベッドや席の配置など細かな点を修正、スムーズな接種につながった。仙台徳洲会病院でも事前に接種の流れ、急変時の対応など確認。さらに不安点を相談できる体制を整え、何らかの副反応が出た際は少し休むことができるよう接種会場に災害用の簡易ベッドを配置。
古河総合病院(茨城県)は先行接種している病院に赴き接種の様子を見学、受け付け方法や動線など参考にした。
「一般の方への接種も、インフルエンザの企業接種の実施工程をもとに粛々と行う予定です」と堀井勝徳事務長。
静岡徳洲会病院は一般接種時には日中とは別に夕診時間帯にも枠を設け、「少し早めに退勤すれば会社帰りに接種できるようにしたいと思っています」(佐藤篤事務長)と地域に貢献していく方針。
副反応に最大限配慮 変異ウイルス影響も
接種で院内感染抑止につなげたい松本裕史・羽生病院院長
千葉西総合病院では職員に接種した際、呼吸器疾患やアレルギーを持病にもつ3人に副反応が出た。大事には至らなかったものの、ひとり暮らしのスタッフは念のため入院させ経過観察した。「異常を感じたら夜間でもERに連絡するよう全職員に通達しています」と中野康広・事務部長。
羽生総合病院(埼玉県)は当初は発熱外来をもつプレハブ病棟の一部を接種会場に利用する予定だったが、変異ウイルスの影響などもあり、急遽、院内に会場を変更した。スタッフの接種をもって一般接種のシミュレーションとしたところ、カルテの有無の確認、新規作成などに思いのほか時間がかかる可能性があることがわかり、「予約時間より早めに来ていただいたり、一日の予約人数を絞ったりして対応したい」と大川啓二・事務部長。
湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は7日間という短期間で1823人の医療従事者の1回目接種を終了。藤田秀樹・事務次長は職員が接種しやすい時間帯の設定、接種時の動線など充分検討した。そのうえで、「①予診票の生年月日や住所などの各自での事前確認、②肩まで袖を上げられる服装での来院、③予診票や接種記録票の持参――などの徹底が職員接種で必要と感じたところです」と今後、ワクチンが届く病院にアドバイスを送っている。