2019年(令和元年)8月5日 月曜日 徳洲新聞 NO.1196 三面
首藤・神奈川県副知事
未病関連施策など紹介
価値を可視化・体系化
7月度の徳洲会グループ医療経営戦略セミナーの初日、長崎大学の重藤和弘・研究開発推進機構教授は「日常診療から研究開発へ」をテーマに講演した。日本では基礎研究から実用化までの間にさまざまな障壁があることを指摘したうえで、打開策として医師主導治験を提案。医療分野の研究開発には日常診療からのアイデアがきわめて重要であることを強調した。また、神奈川県の首藤健治副知事(医師)は「ヘルスケア大転換時代における神奈川県の取り組みについて」と題して講演を行い、県が力を入れている未病への取り組みなどを発表した。
「症状が出る前に介入・改善す るのが未病概念の狙い」と首 藤副知事
首藤副知事は人口構造の変化などメガトレンド(影響力の大きな出来事や現象)などに言及したうえで、“未病”をキーワードとする神奈川県の取り組みを紹介した。
メガトレンドとして挙げたのは少子高齢化や長寿化など。WHO(世界保健機関)のデータをもとに、2050年には先進国を中心に中国なども含め、多くの国で人口に占める60歳以上の割合が30%を超えるとの見とおしを提示。「高齢社会をどう乗り越えるのか、日本は世界から注目され、期待もされています」と指摘した。人生100歳時代の到来や生産年齢人口の減少、日本のグローバルGDP(国内総生産)比の低下にも言及した。
次に首藤副知事が説明したのは、情報が価値をもたらすという話題。18年、世界の株式時価総額トップ10のうちIT(情報技術)企業が7社を占めた。これはITや情報が世界に価値をもたらしていることを端的に示している。IT業界が本気で参入を狙っているのがヘルスケア分野であり、とくに、本格的な医療処置が必要となる以前の健康管理にかかわる将来予測や早期介入などに対し、価値の創造を見出そうとしているという。
医療は健康保険や税金によって賄われる“コストモデル”であるとし、持続可能性を高めるためにも、官民連携の下、新たな情報基盤やヘルスケア産業を活用しながら、利益を生み出すバリューモデルをコストモデルにつなげていくことの重要性を強調した。
国から都道府県への権限移譲が進められるなか、神奈川県は「健康・未病産業」、「最先端医療産業」、「ロボット産業」を軸に、国家戦略特区を設定して推進。全国に先駆けて同県が力を入れているのが未病対策だ。未病とは「心身の状態は健康と病気の間を連続的に変化するものと捉え、このすべての変化の過程を表す概念」。「症状が出る前に、身体の状態変化に介入し改善していくのが、未病という概念を提示した狙いです。エビデンス(科学的根拠)のある最新のテクノロジーを駆使しながら、ヘルスリテラシー(健康に関する適切な意思決定に必要な能力)を高めていくことが、これからの時代は求められます」
未病関連の施策として16年3月に運用開始した「マイME―BYOカルテ」(スマホアプリ)や、「神奈川ME―BYOリビングラボ」、未病対策として有用な血糖値常時モニタリング、歩行姿勢の数値化、疲労・ストレス測定システムなどを紹介。同県のグローバル戦略や、湘南鎌倉総合病院が参画するヘルスイノベーションの最先端拠点形成に関しても概要を説明した。
最後に首藤副知事は「価値を可視化(経済的効果、市場規模)・体系化し、テクノロジーが、その実現に向かうよう導いていくことが行政の役割だと考えています」。