2018年(平成30年)3月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1125 四面
名古屋徳洲会総合病院
閉塞性動脈硬化症の情報共有
名古屋徳洲会総合病院は2月17日、愛知県内で第5回春日井心臓血管セミナーを開催した。今回のテーマは「閉塞性動脈硬化症」。毎回テーマに合わせ第一人者を迎え、地域の医療従事者と最新の研究や治療戦略などを共有するのが目的。今回は時計台記念病院の浦澤一史副院長兼循環器センター長が特別講演を行った。
第5回春日井心臓血管セミ開催
名古屋病院の心臓血管外科が20周年を迎えたことに謝辞を述べる大橋総長
同セミナーは2016年2月に第1回を開催して以降、年2回のペースで開催し今回で5回目。解説する治療戦略や機器、薬剤などに偏りが出ないよう、企業協賛を募らず自主開催の形を取っている。医療の進歩が目まぐるしいなか、同じ地域の病院と診療所の医師がともに最先端の医療に触れ、情報共有することで、患者さんへの最適な医療の提供につなげるのが狙い。今回は160人ほどの参加があった。
冒頭、名古屋病院の大橋壯樹総長が、同院の心臓血管外科が20周年を迎えたことを報告し、謝辞を述べ開会。まずは同院の只腰雅夫・心臓血管外科部長が「透析・糖尿病性足病変への当院の取り組み」と題し講演した。
閉塞性動脈硬化症の外科的治療を解説する渋谷部長
日本では糖尿病や閉塞性動脈硬化症が原因で足病変が重症化し、下肢切断に至るケースが年間約1万件あることを指摘。課題として①細分化された診療科、②少ない透析ベッド、③平均在院日数の制約―を挙げた。これに対し同院では、①心臓血管外科が主科となり、治療コーディネーターとして他科と連携、②透析ベッドは28床あり、緊急透析は年中無休・24時間対応、③一般病床と療養病床を組み合わせて長期間の治療環境を確保―という取り組みを行っていることを解説。苦労や工夫した点なども紹介した。
続いて吹田徳洲会病院(大阪府)の渋谷卓・心臓血管外科部長が「閉塞性動脈硬化症の外科的治療について」をテーマに講演。同疾患の治療目的は、間欠性跛行(はこう)では症状の軽減・消失、重症虚血肢では足趾(そくし)の温存・疼痛(とうつう)コントロールであると説明。そのうえで人工血管、薬剤、糸、画像診断などに言及しながら、さまざまな術式について解説した。
動脈硬化症の最新情報に真剣に耳を傾ける参加者
この後、浦澤副院長が「閉塞性動脈硬化症の内科的治療について」と題し講演。内科医が行う血管内治療と外科医が行うバイパス術を比較したうえで、浦澤副院長が実際に行った血管内治療について動画を用いて説明した。新しい治療技術および治療デバイス(医療機器)により、重症下肢虚血症例に対する血管内治療は、高い初期成功率、救肢率、創傷治癒率が期待できるとし、「数年内に国内に導入が予定されている薬剤塗布バルーンを用いることにより、血管内治療の成績がさらに高まることが期待されます」とまとめた。
最後に大橋総長が次回セミナーを案内。第6回は「心不全に対する最新の治療」をテーマに9月15日、愛知県内で開催予定だ。