徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)3月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1125 一・二面

和泉市立病院
4月1日に新築移転オープン
救急・急性期医療と専門医療へ注力

医療法人徳洲会が指定管理者として管理・運営している和泉市立病院(大阪府、307床)は4月1日、新築移転オープンする。これにともない名称を和泉市立総合医療センターに変更。1963年に公立和泉病院分院として開院した同院は、一部の建物を除いて建築後50年超が経過し、老朽化してきたことから建て替えを実施。免震構造で災害に強い病院にしたほか、高精度の放射線治療機器などを新たに導入する。「救急・急性期医療」と、「がん医療など専門医療」を二本柱と位置付け、地域から信頼される病院を目指す。

和泉市立総合医療センターに改称

公園との一体整備で新築した和泉市立総合医療センター 公園との一体整備で新築した和泉市立総合医療センター

徳洲会が和泉市立病院の指定管理者になったのは2014年4月。和泉市は「06年に受け入れを停止した救急医療の再開」、「慢性的な赤字体質」、「施設の老朽化」という同院の課題を解決するため、病院改革策として民間ノウハウを活用する指定管理者制度の導入を決定。公募の結果、徳洲会が指定を受けた。

吹き抜けの開放的なエントランスホール。受付カウンターに地場産材の「いずもく」を使い、壁面は「和泉木綿」をイメージして装飾 吹き抜けの開放的なエントランスホール。受付カウンターに地場産材の「いずもく」を使い、壁面は「和泉木綿」をイメージして装飾

新病院は現所在地から南東方向に約500mの位置に立地。市内を流れる槇尾川(まきおがわ)に面した市民球場の跡地に建つ。今回の新築移転は、槇尾川公園と一体整備する形で実施した。病院西側にはテニスコートを含む公園が整備され、緑あふれる周辺環境となっている。

新病院は2万1476㎡の敷地(公園を除く)に、鉄筋コンクリート造・一部鉄骨造の8階建て。病院本体の延床面積は現病院の約1.5倍となる3万1532㎡。このほか、敷地内に院内保育園と院外薬局用の建物を整備した。

5階の緩和ケア病棟は各病室のそれぞれに専用のテラスを設置 5階の緩和ケア病棟は各病室のそれぞれに専用のテラスを設置

建設工事は設計施工一括発注方式(デザインビルド方式)を採用。基本設計・工事監理は内藤建築事務所、実施設計・施工は清水建設。

強い地震による揺れを低減し、建物を守る免震構造を採用。大規模災害時に地域の中核的な医療拠点となることが期待されている。発災時には、正面玄関前のロータリーなどを一次トリアージ(緊急度・重症度選別)スペースにする計画で、外来の待合スペースなどには軽症患者さんの処置を行えるよう電源や医療ガス、LAN設備を分散設置した。

地震の揺れを低減し建物を守る免震ゴム。建物の下に多数設置 地震の揺れを低減し建物を守る免震ゴム。建物の下に多数設置

また同院は、オール電化を採用。異なる方角からの2回線で、電力の供給を受ける。

さらに地下水の濾過(ろか)システムを導入し、井水を利用したり、下水管が損傷した場合に備え7日分(400t)の下水を貯留できる緊急排水汚水層を設置したりするなど、ライフラインの多重化を図った。

屋上に非常用自家発電機を設置、電気の供給が断絶した場合でも3日間は7割程度の電力を賄い、病院機能を維持できるだけの燃料も常時備蓄する。

構造的な特徴としては、敷地内の地面は正面玄関のある建物北側と南側で高低差があり、北側のほうが高いことから、正面玄関やエントランスホールは2階部分に設置。ホールは吹き抜けの開放的な空間が広がり、受付カウンターには地場産材である「いずもく」を用い、壁面は天然織物の「和泉木綿」をイメージした装飾や、和泉市の特産品である人造真珠を用いて、槇尾川をイメージした陶器製の大きな飾りをあしらい、和やかな空間を演出した。

各フロアの構成は左上に揚げたフロアガイドの通り。病棟の大部屋は4床室で、1床当たり8㎡の広さを確保した。個室は計96床。

ER(救急外来)と放射線診断部門が隣接しているため、CT(コンピュータ断層撮影)検査を要する場合なども移動による時間のロスを最小限に抑えることができる。刻一刻を争う救急医療の現場では大きなアドバンテージだ。

また救急用(兼非常用)エレベーターが1台あるため、上階の手術室への移動もスムーズに行える。

緩和ケア病棟のある5階には屋上庭園をつくった。さらに同病棟は病室ごとにテラスを設けた。室内にミニキッチンも付いている。テラスに通じる扉はバリアフリーで段差がないため、車いすでも気軽に出て外気に触れたり、晴れの日には日差しを浴びたりすることができる。

畳の部屋で布団に寝たいという患者さんのニーズに応えられるよう、畳の部屋も一部設けた。同病棟は移転前の22床から24床に2床増床した。

外来化学療法室は12床、内視鏡室は3ブース、透析室は12床。手術室は計6室で、うち1室はハイブリッド手術室(血管造影装置のある手術室)仕様とし、将来的に同手術室として運用する計画だ。もう1室はBCR(バイオクリーンルーム=通常よりも清浄度の高い手術室)。ERは初療室が3床、観察室が2床などとなっている。

各病棟の中心にスタッフステーションを配置。スタッフステーション近傍の6床はスタッフの目が届きやすいことから、常時注意を要する患者さんなどが入る重症個室とした。

「敷居が低く地域から頼りにされる病院を目指します」と櫛引事務長 「敷居が低く地域から頼りにされる病院を目指します」と櫛引事務長

新築移転により、建物が新しく生まれ変わるのに加えて、特筆すべきは常勤医数が約80人に大幅増加することなどにより、診療科目が16から32に拡大することだ。今まで以上に幅広い患者さんを受け入れ、地域医療の充実に貢献できる体制が実現する。

櫛引健一事務長は「敷居が低く地域から頼りにされる病院を目指します。同時に、地域の診療所や病院などとの連携を大切にし、機能分担しながら地域で完結する医療を提供していけるよう尽力していきたいと考えています」と話している。

高精度トモセラピーなど導入 診断・治療機能が向上

精度の高い放射線照射を特徴とするトモセラピー 精度の高い放射線照射を特徴とするトモセラピー

新築移転にともない高性能の医療機器を新たに導入する。

目玉は高性能放射線治療装置のトモセラピーだ。CTのような形状をした装置で、実際に、位置合わせのためのCTの機能を組み込んでいる。中央放射線科の谷川原竜乙主任は「従来の放射線治療装置よりも精度の高い放射線照射が可能で、正常部位や重要臓器への照射を低減し、副作用の少ない治療が期待できます」とアピール。

トモセラピーは、さまざまな角度から強弱を付けて放射線を病変部分に集中的に照射する技術であるIMRT(強度変調放射線治療)の施行が可能。また、既存の1.5テスラMRIに換えて、3.0テスラMRIを導入。高画質な検査結果を得ることができ、より正確な診断に寄与する。

高画質な検査結果で、より正確な診断に寄与する3.0テスラMRI 高画質な検査結果で、より正確な診断に寄与する3.0テスラMRI

さらに今回、SPECT―CTを新規導入。これは、CTと一体型になったSPECT(単一光子放射断層撮影装置)装置。SPECT装置は、微量のガンマ線を出すRI(ラジオアイソトープ=放射線同位元素)により“目印”を付けた放射性医薬品を患者さんに静脈注射し、ガンマ線を捉えるカメラで撮影、映像化することで、臓器の血流や機能の状態を調べるRI検査装置のひとつ。狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳血管障害などの診断で用いる医療機器だ。

CTに関しては16年に導入した320列CTを新病院に移設する。多列化が進むCTのなかでも320列は最高峰。1回の撮影で16㎝幅をカバーできるため、拍動の影響をほとんど受けずにぶれのない心臓の冠動脈撮影が可能。撮影データから3Dの立体画像を描出することもできる。

臓器の血流や機能の状態を調べるSPECT-CT 臓器の血流や機能の状態を調べるSPECT-CT

このほか、新しい血管造影装置(アンギオ)を新規導入。既存のアンギオも4月末には移設し2台体制となる見込みだ。心臓カテーテル検査・治療などに活用する。

新規導入するのは、バイプレーンシステム(X線の照射装置と検知器を両端にもつCアームが2台)のアンギオで、1回の撮影で2方向から同時に撮影でき、被ばくや造影剤量の低減、撮影時間の短縮といったメリットがある。

村上城子院長
信頼される病院目指す

「救急・急性期医療」、「がん医療をはじめとする専門医療」を2本柱として、地域の方々から信頼される病院を目指していきます。新築移転にともない常勤医は50人ほどから80人ほどに増え、診療科は32に増加します。ご高齢の患者さんは複数の疾患を抱えているケースが少なくありませんが、各科の医師が協力することにより、新病院では今まで以上にさまざまな疾患・病態の患者さんの受け入れが可能です。また当院は10年ぶりに基幹型臨床研修指定病院として再指定を受けました。4月から大阪府南部出身の2人の初期研修医が当院での研修をスタートします。

さらに、高精度放射線治療装置トモセラピーの新規導入など医療機器の更新による診療機能の向上も図りました。公設民営の自治体病院として、小児医療や学校健診など政策医療も積極的に担い、回復期や慢性期病院、診療所など地域の医療機関との連携や機能分担も推進していきます。

福岡正博総長
全人的な医療を重視

当院は一貫して、診療の柱のひとつとして、がん医療に注力してきました。新病院に移転してからも、診療科や部署の垣根を越えて、医師をはじめメディカルスタッフが協働し、一丸となって徹底したチーム医療に取り組んでいきます。各科にまたがる症例に関しては、週1回開催しているキャンサーボード(多診療科の医師や多職種が最適な診療方針を決定するために行う会議)で検討し、一人ひとりの患者さんに合った医療を合議で決めています。

4月から血液内科など新たに開設する診療科が複数あり、キャンサーボードの体制も厚みが増します。診断後早期からの緩和ケアにも力を入れており、全人的な医療の提供を重視しています。さらに当院は標準治療の提供に加え、多分野の臨床研究や治験に積極的に取り組み、患者さんが先端的な治療を受けられる機会の提供にも努めていきたいと考えています。

山上美恵子副院長・川口いずみ看護部長
患者さんに優しい病院

山上副院長(左)、川口・看護部長 山上副院長(左)、川口・看護部長

当院は55年の歴史があります。その間、増改築を重ねてきましたが、患者さん1人当たりのスペースなど、今の時代にはそぐわない造りとなっていました。ようやく新築移転が実現し、患者さんに優しい病院として生まれ変わることができます。緩和ケア病棟に畳敷きの病室も用意するなど、少しでも多く患者さんのニーズに応えられるよう、さまざまなアイデアや患者さんへの思いを形にしました。

地域から求められる役割をしっかりと担い、これからも地域の方々との信頼関係の構築に努めます。患者さんに寄り添うケアの提供に尽力するとともに、看護スキルの向上のため教育システムの充実や専門性の追求にも取り組み、市民の方々から選ばれる病院を目指します。

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