徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2018年(平成30年)3月12日 月曜日 徳洲新聞 NO.1124 四面

読み解く・読み得“紙上医療講演” ⑫
感染性胃腸炎に要注意

今回は「感染性胃腸炎」をテーマとし、とくに冬期に発生するウイルス性胃腸炎を見ていきます。原因となるウイルスに感染すると、激しい嘔吐(おうと)や下痢、発熱に苦しみます。小児への感染が多いロタウイルスは2~4月の感染例が多く、まだまだ油断できません。ウイルス性胃腸炎の症状や機序、治療法などについて、湘南厚木病院(神奈川県)の市堰浩・副院長兼小児科部長が解説します。

市堰浩・副院長兼小児科部長 湘南厚木病院(神奈川県) 市堰浩・副院長兼小児科部長 湘南厚木病院(神奈川県)

冬期に発生する感染性胃腸炎の多くは、ウイルス感染によるものです。ロタウイルスやノロウイルスが代表的な原因ウイルスです。症状はほぼ同じで、初めに嘔吐が見られ、発熱に続いて水様性下痢という症状が現れます。激しい嘔吐は半日から1日で落ち着いてきます。

サルモネラ菌や病原性大腸菌といった細菌性の胃腸炎によく見られる血便と異なり、ウイルス性胃腸炎の場合は便に血が混じることがほとんどありません。

感染から下痢が起こるメカニズムもウイルスの種類にかかわらず同じです。小腸には栄養を吸収する絨毛(じゅうもう)というひだがたくさんあります。ウイルスは絨毛の表面にある吸収上皮細胞に選択的に感染し、破壊してしまいます。栄養を吸収する能力が低下し、食物が小腸で吸収されずに大腸に運ばれる結果、大腸内の細菌の働きによって酢酸が生じ、腸の蠕動(ぜんどう)(腸管内の内容物を前方に送る運動)が活発になり、酸性の水様便として排泄(はいせつ)されます。

さらに、ロタウイルスの場合は、ウイルスが産生するエンテロトキシンという毒素が、腸管内に電解質(ナトリウムやカリウム)の一種であるクロールの分泌を促します。これにともない水が分泌され、下痢がより悪化すると考えられています。

ロタウイルスはA~F群まであり、流行の大半はA群ですが、タイプが細かく分かれていることから、一度感染してもその後何度か再感染する可能性があります。

11月から4月にかけて流行し、潜伏期間は約2日。生後6カ月から2歳までの小児が最も感染しやすい年齢層です。感染経路は糞口(ふんこう)感染で、感染力が強く10個程度のウイルスで感染します。患者さんの吐物の処理が不十分な場合、それが乾燥して空気中に舞い上がったり、患者さんの便に触れた手の洗浄が不十分だと、その手から口に入ったりして感染します。

ノロウイルスの電子顕微鏡画像(出典:国立感染症研究所ホームページ) ノロウイルスの電子顕微鏡画像(出典:国立感染症研究所ホームページ)

カリシウイルス科に属するノロウイルスも同様に糞口感染です。なかには感染しても症状が出ない不顕性感染者がいます。気付かずに調理などをしてウイルスを広め、集団感染を引き起こす可能性があることを念頭に置いておく必要があります。

潜伏期間は24~48時間で発熱は軽度。一般的にロタウイルスよりは軽症ですが、吐物の誤嚥(ごえん)により誤嚥性肺炎を合併することがあるため、要介護者などの感染には注意が必要。いずれもひどい脱水や痙攣(けいれん)などがなければ入院は必要ありません。

ウイルス性胃腸炎の治療法は経口補液療法と栄養のある食事が中心。嘔吐や下痢で失われた水分や電解質を補うために経口補液剤(ORS)を少量頻回(3~4分おき)に飲み、吐き気が収まってきたら、傷んだ腸管の再生・回復を促すために栄養のある食事を摂ることが大切です。

嘔吐や下痢はウイルスや毒素を体外に排出する必要な行為。止痢薬や鎮吐薬は逆効果なので、投与しないでください。

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