
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)01月14日 火曜日 徳洲新聞 NO.1474 4面
成田富里徳洲会病院(千葉県)の院内急変対応チーム(RRT=Rapid Response Team)の活動が活発だ。RRTは患者さんのバイタルサイン(生命兆候)の急変を察知し、状態の悪化がわかった時点で迅速に介入、院内CPA(心肺停止)の発生を未然に防ぐための取り組み。同院では医師、看護師、診療看護師、理学療法士、診療放射線技師、救急救命士の多職種でチームを構成している。人口の高齢化とともに、急変のリスクが相対的に高い高齢患者さんの入院比率が高まるなかで、RRTの重要性はますます高まっている。
院内急変に対応するRRTメンバー
BLS委員会が職員向けに講習会を実施
専用ジャケットの右そでにはRRTの文字
成田富里病院では1カ月間のプレ運用期間を経て、2023年4月にRRTが正式に発足した。同院は一般急性期病棟、ICU(集中治療室)、HCU(高度治療室)、回復期リハビリテーション病棟、療養病棟を有し、多様な患者さんを受け入れているケアミックス病院で、高齢の患者さんを含め、さまざまな病態の患者さんが入院している。
「ドクターブルー(院内で心肺蘇生が必要な事態が発生した場合に医療者を招集する緊急コール)の対応チームはすでに活動していましたが、患者さんの状態が急変する前に早期に介入し、院内CPAの発生を未然に防ぐ仕組みは当時、当院にはありませんでした。そこで、患者さんの急変対応に遅れることがないよう、RRTを立ち上げました」(荒澤恵子・副看護部長)
発足当初のメンバー構成は医師、看護師、診療看護師、救急救命士で、その後、リハビリテーション科や放射線科のスタッフも加わり、少しずつ体制を強化してきた。
リハビリ科の氣田俊輔主任(理学療法士=PT)は「当院には医療安全管理部門のひとつの組織として、職員への心肺蘇生技術の普及などを目的として活動するBLS(一次救命処置)委員会があります。その中で主にリハビリ科の職員が活動の中心を担っており、AHA(米国心臓協会)認定のBLS・ACLSインストラクターの資格を取得した職員もいます」と説明する。
同インストラクターの資格をもつ佐藤優美PTは「蘇生技術は、命を預かる医療職にとって必要なスキルです」と意義を強調。RRT活動にとって蘇生技術は欠かせないスキルのひとつであることから、BLS委員会を巻き込みながらRRTの拡充を図ってきた。
インストラクターは全職員向けのBLS講習会や、病院祭の開催時には来場者向けのBLS講習会の運営も担っている。職員向けの講習会は年間6日間(各日2回開催)に分けて実施。BLSの受講経験が少ない新入職員や非常勤職員の受講を必須としている。RRTメンバーでは、看護部の山村巧眞・救急救命士も同インストラクター資格を有する。
急変を察知するために活用しているのがNEWS(National Early Warning Score)という英国で開発された早期警戒スコア(EWS)だ。患者さんのバイタルサインを点数化し、状態変化を知らせるツールで、院内急変による死亡リスクの低減に有効とされる。院内CPAは多くのケースでバイタルサインの変化という前兆があるとの考えに基づく。同院以外にも約30の徳洲会病院が導入している。
NEWSは呼吸数、SpO₂(動脈血酸素飽和度)、酸素投与の有無、体温、収縮期血圧、心拍数、意識レベルの7項目を指標としている。客観的な基準に基づき点数化することから臨床経験に左右されず、一定の質でシステムを運用できる利点がある。
合計点によって、低リスクの緑、中等度リスクの黄、高リスクの赤と色分けし、3段階で24時間以内の生命予後リスクを評価する。電子カルテに組み込まれているため、点数はバイタルサインを入力すると自動計算される仕組みだ。山村・救急救命士が講師を務め、NEWSの点数化の仕組みなどに関する勉強会の開催を通じ、RRTの周知や理解を深める活動にも取り組んできた。
NEWSで黄や赤と評価された患者さんがいた場合、看護師がRRT専用の院内PHSに連絡し対応を依頼する。これによってRRTの介入が発動する。
現在、月曜から金曜の午前9時から午後3時まで、専用PHSを運用。RRT発足から、しばらくは尹玉姫・看護副主任(診療看護師)がPHSを持つ時間が多かったが、最近ではRRT発足時からのメンバーである幸坂友香・看護主任(ICU所属)、あるいは尹・看護副主任がサポートする形を取りながら、病棟看護師がPHSを持つようにするなど、“院内の仕組み”としてRRTを回せるような体制づくりも進めている。
PHSで連絡を受けた病棟看護師は、RRT担当医師である小長谷健介・外科医師や他のRRTメンバーに連絡を取って対応を行う。
「NEWSで黄や赤と評価された患者さんだけでなく、『何かおかしい』、『いつもと違う』などデータには出ていないけれど気になる異常を感じた場合や、主治医による対応が困難であるため相談したい場合など、気軽に連絡してもらえればと考えています」(尹・看護副主任)
開始から2年と経っていないことから、院内CPAの発生低減などRRT発足による効果の検証は、これから行う予定だが、「主治医の先生に相談するほどではないけれども、気になる患者さんがいた場合、相談先としてRRTがあるため、病棟看護師の心理的安全性を高めることにつながっています」と幸坂・看護主任は効果を実感。
倉田靖丈・放射線科副主任(診療放射線技師)と山村・救急救命士は「チーム内でしっかりと情報を共有しながら、急変対応に貢献していきたい」と抱負を語る。同院RRTは専用のジャケットを作成、院内でのさらなる認知度向上に努めながら、急変対応に尽力する方針だ。