徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2019年(令和元年)5月6日 月曜日 徳洲新聞 NO.1183 一・二面

離島・へき地 研修特集
徳洲会グループ スケールメリットで実現
総合的な診療能力の源

徳洲会グループは〝生命だけは平等だ〟の理念の下、原点のひとつとして離島・へき地医療に精力的に取り組んできた。グループのスケールメリットを生かし、主に都市部の病院から離島・へき地の病院に対し、短期・長期にわたり専門医や指導医クラスの医師を絶え間なく派遣する一方、研修医が離島・へき地で総合的な診療能力を習得するなど、都市部病院と離島・へき地病院は相補的な関係を構築している。今号では全面をとおし、徳洲会グループの離島・へき地での臨床研修をテーマに取り上げる。

違う環境で成長を実感 宮古島病院

「“患者さんありき”の医療を学びました」と林・初期研修医 「“患者さんありき”の医療を学びました」と林・初期研修医

宮古島徳洲会病院(沖縄県)では徳洲会グループ内外から、つねに研修医が4、5人ほど地域医療研修を行っている。指導医の斉藤憲人院長は「離島医療の継続に研修医は必要不可欠です。非常勤の医師にも教育に協力してもらっています」と積極的だ。

「研修をとおし決断力が身に付きました」と住吉専攻医 「研修をとおし決断力が身に付きました」と住吉専攻医

こうした考えは病院全体にも及び、多職種の職員が研修医の働きやすい環境をつくっている。千葉西総合病院の林遼太郎・初期研修医2年目(当時)は「外来看護師さんやクラークさんは研修医が短期間で入れ替わることに慣れていて、いろいろ助かりました」と感謝。同院の研修は「外来で患者さんを継続的に診ることができ、勉強になりました」と振り返る。

約3.5kmにわたる伊良部大橋は宮古島と伊良部島をつなぐ 約3.5kmにわたる伊良部大橋は宮古島と伊良部島をつなぐ

同院に応援に来る専攻医(後期研修医)は、同時に初期研修医の指導も担う。だからこそ斉藤院長は「専攻医には自分で考え、自由に動いてもらうようにしています」と明かす。札幌東徳洲会病院の住吉翔元・専攻医1年目(当時)は「グループ病院だけでなく大学病院などからも初期研修医が来るので、いろいろな考えに触れるのも楽しかったです」。

同時に都市部とは違う環境に身を置くことで、自身の成長を実感。「決断力が身に付いたと思いますが、それに見合うだけの知識も必要だと感じました。これからも磨きをかけていきます」と意欲的だ。

医師としての成長後押し 徳之島徳洲会病院

患者さんを丁寧に診察する山路医師 患者さんを丁寧に診察する山路医師

「胃潰瘍がある時は、鎮痛薬の種類によっては悪化させることもありますので、影響の出にくいお薬を出しておきますね」

徳之島徳洲会病院(鹿児島県)の外来診察室で、山路文範医師(徳洲会湘南外科グループ[SSA]一般外科専門医研修プログラム専攻医)は80代男性患者さんに優しく話しかけた。患者さんは前夜から頭痛が増悪、ふらつきを感じて受診。慢性胃潰瘍も患う。頭痛で睡眠できないことがあり、患者さんが痛み止めを希望したため、山路医師は冒頭の言葉をかけ、全身の身体診察を行った。

前夜からこの日午前の外来が始まるまで、救急外来を担当。朝早い時間帯にウォークイン(独歩)で来院したハブ咬傷(こうしょう)の患者さんを診察する場面もあった。

山路医師は岐阜大学医学部附属病院急性期コースで初期研修、同院高度救命救急センターでの後期研修を修了。外傷外科医としてのスキル向上を目指し、昨年4月、徳洲会に入職。今年度中に外科専門医と救急科専門医の資格を取得する見込みだ。湘南鎌倉総合病院(神奈川県)と東京西徳洲会病院での勤務を経て今年1月から3月に徳之島で研修に取り組んだ。

「徳之島徳洲会病院では外来、手術、病棟管理、退院後のフォローと診療の一連の流れに携わり、胃・大腸の内視鏡検査の技術習得や、訪問診療の実践など多様な分野を経験できました。成長を後押ししてくれる環境に感謝しています」(山路医師)

「地域で暮らす」に応える 瀬戸内病院

患者さんのニーズ把握に努める名嘉専攻医 患者さんのニーズ把握に努める名嘉専攻医

奄美大島にある瀬戸内徳洲会病院(鹿児島県)に昨年8月、患者さんに対応する湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の名嘉祐貴・総合診療科専攻医の姿があった。同院の総合診療専門研修に盛り込まれている離島・へき地病院での研修先として瀬戸内病院を選択、7月から9月までの3カ月間を同院で過ごした。

当直などを除けば、1日のスタートは午前8時。出勤後、当直スタッフからの申し送りや患者さんに関する相談、医局会などをすませ、9時前に当日の“もち場”に移動する。午前中の業務を終え、昼食を取った後は午後5時まで同じく担当する場所で業務にあたる。担当業務は日によって異なり、外来、病棟回診、救急車対応、訪問診療、船で15分ほどの加計呂麻徳洲会診療所(鹿児島県)での活動など多岐にわたる。

業務の合間を縫って初期研修医を指導するなど、後進育成にも余念がない。

専攻医だけあって、インフォームドコンセントを含め診療はほぼひとり。看護師やMSW(医療ソーシャルワーカー)らと話し合い、入院患者さんを地域に戻すためのマネジメントも行う。

「鼻血が止まらない」と救急搬送された患者さんを受け入れ、ひと晩、自院で対応。真菌性副鼻腔(ふくびくう)炎を疑い、その旨を紹介状に記載し、他院で組織検査を受けたところ、同疾患と診断がついた。その後、自院で治療した。「通常の鼻血よりも、奥側で出血していたため不安な部分もありましたが、無事に治療が終わってホッとしました」。

名嘉専攻医は研修期間を振り返り、「患者さんの回復ぶり、さらに回復後まで“診きる”ことができました」と満足げ。「地域の医療の限界を知りつつ、それでもそこで暮らしたいという患者さんのニーズに応えていく大切さを学びました。指導してくださった上山泰男院長(現・神戸徳洲会病院顧問)、前野博・外科部長(当時)、西輝人内科医師(当時)、朴澤憲和・加計呂麻診療所所長に感謝しています」。

当番制で業務の基本経験 名瀬病院

平島センター長(左から3人目)にアドバイスを求める清水・初期研修医(その左) 平島センター長(左から3人目)にアドバイスを求める清水・初期研修医(その左)

奄美大島の名瀬徳洲会病院(鹿児島県)では、毎週水曜日の午前7時45分から平島修・徳洲会奄美ブロック総合診療研修センター長が研修医を連れて、新規の入院患者さんや状態が気になる患者さんを中心に病棟を回診する。取材で訪れた4月10日、その研修医のなかに湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)の清水悠仁・初期研修医はいた。

同期の初期研修医との昼食は良い気分転換 同期の初期研修医との昼食は良い気分転換

清水・初期研修医は地域医療研修で4月から名瀬病院に勤務。毎朝、出勤するとカルテを確認し、医局会に参加した後、その日の担当業務に臨む。初期研修医の業務は、指導医の下、主に外来、病棟回診、救急、リハビリテーションや透析での相談対応、訪問診療があり、これらを当番制で行う。このほか当直も週1回程度担当。

取材当日は平島センター長による病棟回診の後、カルテを記載し、午前中は再び病棟を回診。急性期や回復期にある受けもちの患者さん20人のベッドを訪れ、食事の摂取量や尿量に着目しつつ、手足に触れながら体の状態を確認した。会話する際は、目線の高さを合わせ、時には患者さんの隣に座ったりするなど、コミュニケーションを取りやすいように配慮する姿が印象的だった。

救急搬送された患者さんを外で迎える清水・初期研修医 救急搬送された患者さんを外で迎える清水・初期研修医

回診した結果をカルテに記載し、昼食。午後もこの日は病棟回診を中心に行い、午後3時半からは、平島センター長による病棟回診で回りきれなかった入院患者さんの回診を行った。

「離島は初めてです。まだ少ししか経験していませんが、地域事情が異なることがわかり、来て良かったと思っています」と清水・初期研修医。「できない医療もあり、責任の大きさを感じる場面があります」と言いながらも、「“離島だから”という特別感はありません。患者さんが来て、最善を尽くすだけです」と言葉は力強い。同院での研修は5月末まで続く。

訪問診療など経験が糧に 庄内余目病院

病棟回診で患者さんのベッドサイドを訪れる佐々木・初期研修医 病棟回診で患者さんのベッドサイドを訪れる佐々木・初期研修医

「おなかのこのあたりに炎症が起きているため、痛みが出てくるかもしれません。痛みが強くなってきたら我慢せず、すぐに言ってくださいね」

ここは庄内余目病院(山形県)の病室。佐々木赳至・初期研修医が横になる90代女性患者さんに優しく話しかける。湘南厚木病院(神奈川県)に所属し、今年2月から3月に地域医療研修のため庄内余目病院で診療に励んでいた(現在は徳洲会湘南外科グループ[SSA]一般外科専門医研修プログラム専攻医)。

豊かな自然に囲まれた庄内地方。遠方にそびえるのは鳥海山(標高2,236m) 豊かな自然に囲まれた庄内地方。遠方にそびえるのは鳥海山(標高2,236m)

患者さんは腰椎(ようつい)圧迫骨折の治療とリハビリテーションのため入院、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行ったところ、膵臓(すいぞう)に腫瘤(しゅりゅう)状の病変を認め、胆管炎を疑う画像所見も得た。病室を訪れる直前、患者さんの家族と面談し、病状や治療方針などを説明。膵臓を精査するため、この日、MRCP(胆管膵管撮影)検査を実施することを伝えた。

佐々木・初期研修医は続けて病棟回診を行い、15人ほどの患者さんのもとを訪れ「調子はいかがですか」、「リハビリは頑張っていますか」など声をかけながら診察した。

2カ月間の研修を振り返り「一人ひとりの医師に任される業務が幅広いため、救急搬送の受け入れに始まり、患者さんの入院から退院に至るまでの一連の流れや訪問診療を経験できたのは、地域医療研修ならではだと思います」と充実した表情。

悩み考えて自信を付ける 日高病院

指導医の上原部長(左)は平井・初期研修医の積極性を尊重 指導医の上原部長(左)は平井・初期研修医の積極性を尊重

日高徳洲会病院(北海道)で地域医療研修を行う湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の平井直樹・初期研修医2年目(当時)は、「2カ月間とても勉強になりました。コメディカルの方々と距離が近く、コミュニケーションが取りやすかったのも良かったです」と振り返る。

研修では、救急搬送患者さんに対応し、治療方針を決め、入院が必要なら患者さんに説明、さらに病棟管理まで一連の流れを経験。「検査はできても、診療科がなくて治療できないケースがあります。患者さんの負担を考えたら、遠く離れた専門病院に紹介するのも申し訳ないので、その線引きが難しかったです」と悩むことも多かった。

指導医の上原明彦・循環器内科部長兼内科部長は「研修医の主体性に任せ、自発的に考えてもらうよう指導しています。とくに気を付けてもらっているのが、患者さんの退院後の生活です」と話す。悩み考えて2カ月を過ごした初期研修医は皆、自信を付けて帰っていく。

平井・初期研修医は「4月から専門病院で専攻医研修を行い、今度は紹介を受ける立場になります。その際も、日高病院で経験したことを生かし、患者さんの背景まで考えられるようになりたいです」と意気込む。

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