徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)9月11日 月曜日 徳洲新聞 NO.1099 一面

湘南藤沢徳洲会病院
10月から乳がん遺伝子検査
人間ドックのオプション

湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)は10月から乳がん遺伝子検査を開始する。人間ドックのオプションのひとつで、徳洲会グループで初めて。カウンセリングと採血によるDNA(デオキシリボ核酸)の検査を通じ、乳がんや卵巣がんに罹患(りかん)するリスクの度合いを測定、結果次第では予防的な観点から乳房の切除・再建などを提案する。検査を手がける橋口和生・産科・婦人科部長は今後、医療講演などにより地域への周知を図っていく。

「ご家族に乳がんなどを患った方がおられたら、ぜひ遺伝子検査に関心をもっていただきたいです」と橋口部長 「ご家族に乳がんなどを患った方がおられたら、ぜひ遺伝子検査に関心をもっていただきたいです」と橋口部長

遺伝子は遺伝情報の1つの単位。ヒトの体は約60兆個の細胞からなり、その細胞一つひとつに細胞核がある。その核の中にある46本の染色体(母親、父親から23本ずつ受け継ぐ)を1本ずつほどいていくと、二重のらせん状のひもの形をしたDNAが現れる。ひもの間にはグアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、アデニン(A)という4つの塩基物質があり、この塩基の配列を遺伝情報という。

ヒトには約2万種類の遺伝子があり、つねにGとC、TとAの組み合わせで並んでいるが(図1)、ヒトによって「G - C」が「C - G」だったり、「G - C」「G - C」「T -A」が「G - C」「T - A」「G - C」の順だったりするため、髪や皮膚の色が違うなど個人差が現れる。

遺伝子を解析し、特定の病気にかかるリスクなどを調べるのが遺伝子検査だ。2013年、米国の女優が、乳がんを患った家族がいることから遺伝子検査を受けた結果、乳がんの発生確率が87%と判定され、発症していないにもかかわらず、左右両方の乳腺を全摘出。日本でもメディアなどで報じられ、大きな話題を集めた。

湘南藤沢病院では、人間ドックのオプションのひとつとして10月から乳がん遺伝子検査を開始する予定。遺伝学の研究で米国に留学、日本の臨床遺伝専門医の資格ももつ橋口部長が準備を進めている。「がんに対する世間の関心が高まっているのをふまえ、経験がある私に当院の近藤哲理・副院長兼人間ドック・健診センター長から提案していただきました」。

乳がんは、他のがんに比べ遺伝との関係が明らかになっていると橋口部長は説明する。「乳がんや卵巣がんの1割前後は遺伝が関係しているとされ、遺伝的な原因がはっきりとした乳がんや卵巣がんをHBOC(遺伝性乳がん・卵巣がん症候群)と言います」と指摘。続けて「がんの遺伝要因には弱いものから強いものまで、さまざまなものがあると考えられていますが、乳がんでは20年ほど前から17番染色体にあるBRCA1遺伝子と13番染色体にあるBRCA2遺伝子の異常が、とくに強く影響するとわかっています」と解説する。

このBRCA1、BRCA2は修復遺伝子(図2)。修復遺伝子は通常、傷ついたDNAを修復し腫瘍化を防ぐ役割をもっているが、異常があると歯止めが利かず、がん化を促進させる。この2つの遺伝子のどちらかに異常があると「乳がんや卵巣がん、さらに前立腺がんや膵(すい)臓がんなどにもなりやすいことがわかっています」(橋口部長)。

同院の遺伝子検査では2~3回の来院を予定。初回に1時間程度のカウンセリングを行い、希望をすれば2回目に採血をして血中のDNAの異常を検査。結果が出る2~3週間後に、その後の対応などを相談する。

「最初のカウンセリングで家系図を書いたり、近親者内のがん罹患者の有無などを聞いてスコアを付けたりします。その結果、ご本人が希望すれば遺伝子の検査を受けていただきます。採血は5㏄程度。修復遺伝子に異常があってもなくても、最後のカウンセリングで対応を考えます」と橋口部長。現状では橋口部長をはじめマンパワーに限りがあるため、開始後当面は週1回、予約制にする考え。費用は15~20万円の予定だ。

橋口部長は「ご家族に乳がん、卵巣がん、膵臓がんなどにかかった方がおられるのであれば、検査に対する興味をもっていただきたいと思います」と呼びかける。今後は自院で実施している医療講演などを通じ、積極的に遺伝子検査の認知度向上を図る方針。

同時に遺伝子検査を提供する機会を増やすことにも意欲的だ。臨床遺伝専門医などスペシャリストが少なく、がんセンターや大学病院など一部の医療機関でしか遺伝子検査を実施していない現状を指摘し、「徳洲会グループでも倫理的な部分などを整え進めていきたい。関心がある医師と一緒に取り組んでいければいいですね」と意気込みを見せる。

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