徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

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Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)5月1日 月曜日 徳洲新聞 NO.1080 四面

経カテーテル大動脈弁留置術 TAVI
4月からスタート
札幌東徳洲会病院

札幌東徳洲会病院は4月からTAVI(タビ)(経カテーテル大動脈弁留置術)を開始した。重症大動脈弁狭窄(きょうさく)症(AS)に対する治療法で、低侵襲の治療を望む地域ニーズに応えるのが狙い。カテーテルを用いて心臓に人工弁を留置するため、従来のように開胸手術を必要としない。体力が少ない方や併存疾患がある方など、切開(開胸)手術が困難な患者さんを対象としており、同院は毎週木曜日に2例ずつ治療を実施。すでに4人の患者さんに行い、いずれも経過は良好だ。同院を含め徳洲会では5病院がTAVIを実施している。

徳洲会グループで5施設目

「少しでも良い医療を提供したい」と山﨑医長(左)と山崎副院長 「少しでも良い医療を提供したい」と山﨑医長(左)と山崎副院長

ASとは、左心室と大動脈の間にある弁が硬くなって開きにくくなり、心臓から全身に血液が流れにくくなる疾患。心臓には右心房、右心室、左心房、左心室があり、この4つの部屋を介して全身の血管に血液が送られる。各部屋の間には血液が逆流しないように扉があり、これを「弁」と呼ぶ。4つの弁のうち、全身に血液を送り出す役割を担っている左心室と大動脈の間にある弁を大動脈弁といい、この弁が十分機能しないと血流が妨げられ、ASが起こる。

悪化すると狭心症(胸痛)や失神、心不全症状(息切れ、呼吸困難、疲れやすい、全身のむくみなど)が現れ、これらの症状が見られる患者さんの約半数は2年以内に死亡するといったデータや突然死のリスクを指摘する声があるなど、予後は極めて不良とされている。

重症のASに対する治療には、大動脈弁置換術がある。狭窄した大動脈弁を人工弁に置き換えることで血流を改善する治療法だが、従来は開胸手術により人工心肺を用いて心臓を停止させた状態で弁を置換する「外科的大動脈弁置換術」しかなかった。これに対し高齢や合併症などで外科的な治療が難しい患者さんにも行える治療法として開発されたのがTAVIだ。

TAVIは大腿(だいたい)部の動脈などからカテーテルを穿刺(せんし)して人工弁を留置する。一般的に全身麻酔下で行うものの、手術で胸を開くことや、人工心肺を用いず心停止が必要ないため、患者さんの負担が少ない。

齋藤副院長が見守るなか、1例目を実施。多職種約20 人が立ち会い、それぞれの立場で患者さんをサポート 齋藤副院長が見守るなか、1例目を実施。多職種約20 人が立ち会い、それぞれの立場で患者さんをサポート

外科的手術が困難な患者さんにとって“福音”となる治療法だが、実施するには循環器専門医や心臓血管外科専門医がそれぞれ3人以上、ハイブリッド手術室(手術台と心・血管X線撮影装置を組み合わせた手術室)の設置、PCI(経皮的冠動脈形成術)が年間100例以上など厳格な基準をクリアしなければならず、全国でも実施施設は約120と限られている。

札幌東病院は準備を進め、今年4月からTAVIを実施。山崎誠治副院長(循環器内科部長)は「3年以上前に湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の齋藤滋副院長(札幌東病院循環器センター長兼務)からTAVIの話を聞いたのがきっかけです」と経緯を明かす。

「徳洲会の一員として、当院も24時間体制の救急を行うなかで、他科から術前の検査などで偶然、ASが見つかり紹介されるケースが散見されました。地域的に高齢の方が多いこともあり、TAVIのニーズは高いと考え準備を進めました」。

厳しい施設基準を満たすために病院を挙げて努力。ハイブリッド手術室の設置で改修工事を行ったり、256列のCT(コンピュータ断層撮影)を導入したりした。山崎副院長は「専門医を確保するために道内を奔走しました。当時の清水洋三院長(現・名誉院長)や齋藤副院長も協力してくださり、ようやく施設基準を満たすことができました」と当時を振り返る。

実施に向け、同院は多職種で組織するTAVIのハートチームを設置。齋藤副院長の指導の下、何度もシミュレーションを繰り返した。十分なトレーニングを積み、4月6日に1例目を実施。循環器内科の山﨑和正医長がメインオペレーター、山崎副院長がサブオペレーターを務め、齋藤副院長の立ち会いの下、80歳代の患者さんにTAVIを行った。

ハイブリッド手術室にも基準が設けられており改修工事を実施 ハイブリッド手術室にも基準が設けられており改修工事を実施

患者さんが手術室に入室から退室するまで約3時間。山﨑医長は「とても緊張しました」と言いながらも、「患者さんもそうですが、私たちも待ち望んでいた治療。やっと提供できたこと、無事に終えたことに感動しました」と白い歯を見せた。山崎副院長は齋藤副院長に謝意。「TAVIの前日には目の前でシミュレーションを行いましたし、術前のカンファレンスでもアドバイスをいただきました。当日も直接指示をいただき、無事に終えることができました」。

同院は毎週木曜日に2例実施。すでに4例実施し(4月14日時点)、いずれも経過は順調だ。患者さんは術後1週間程度で退院できる見込み。健康保険や高額療養費制度が適用できる。

山﨑医長は「今後、コンスタントに経験を積んでいくなかで、もっと治療時間を短縮できます」と強調し、「道内ナンバーワンの施設を目指したい」と意欲的。山崎副院長も「世の中の動きとして、TAVIはさらに低侵襲になっています。たとえば、湘南鎌倉病院では全身麻酔ではなく局所麻酔で行い、使用する管の数も少ない」と明かし、「その域に達したい」と目を輝かせる。

道内にTAVI実施施設は8施設(うち6施設が札幌市内)。ASが自覚症状の出にくい疾患であることから、山崎副院長は「早めの相談を」と呼びかけ、「道内の徳洲会病院では、当院と札幌徳洲会病院、帯広徳洲会病院が弁膜症外来を実施しているので、徳洲会のネットワークを生かし、困っている患者さんに対応していきたい」。

徳洲会病院では札幌東病院のほか湘南鎌倉病院、岸和田徳洲会病院(大阪府)、千葉西総合病院、名古屋徳洲会総合病院でTAVIを実施している。

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