患者さん一人ひとりに合った安心できる環境作りが重要!
高砂西部病院は、徳洲会創設者である故・徳田虎雄名誉理事長生誕の地に開設しました。病床数219床のケアミックス病院として急性期から慢性期、在宅医療まで幅広い医療を提供しています。
また、看護部では以前より認知症ケアとして身体的拘束最小化を進めています。
能美: 私が認知症看護認定看護師を目指したのは、急性期病棟から療養病棟へ異動したころ、自身の知識不足を痛感したことが始まりです。
当時、認知症患者さんとのかかわりが少なかった私は、認知症の進行により徘徊や収集癖、たびたび自宅に帰ろうと離院するA氏に、どう対応して良いのか困り果てていました。そんな時、あるスタッフが見守り、寄り添うことで少しずつA氏の心が開いていきました。
まず、A氏のご家族から生活歴や趣味を聴取し、自宅訪問を行い、A氏が好んでいた音楽を流したり、趣味の道具や棚を病室に設置するなど、療養環境に普段の生活を取り入れる工夫をし、スタッフ全員で一貫したケアを行いました。その後A氏の離院はなくなり、収集癖も減少、表情も穏やかになっていきました。居心地の悪い環境から安心できる環境へ変化したことで改善されたと感じています。この経験を通して、患者さん一人ひとりの背景やニーズに応じたケアを提供し、QOLを向上させるための専門知識と技術を身につけたいと強く思うようになりました。
現在の活動01~勤務状況及び認知症ケアチームの活動
療養病棟で看護師長を務め、専任看護師として週16時間を認知症看護にあてています。2022年に副主任が同資格を取得し、現在は2名体制で活動中。病棟巡回では、認定看護師や社会福祉士が中心となり、患者さんの訴えを代弁し、行動心理症状の原因を分析。多角的な視点から患者さんの状況を把握しています。
また、入院患者さんの包括的な認知症アセスメントを行い、身体的拘束や危険行動のある患者さんに対して、生活歴を共有しながら、可能な範囲で療養生活に取り入れられるよう代替案を検討。
カンファレンスでは、医師やセラピスト、薬剤師、管理栄養士など多職種が参加し、総合的な視点から意見交換を行い、今後の方針を導き出すよう努めています。実際、患者さんの生活歴や趣味を反映したベッド周辺の環境作りや、レクリエーション活動を取り入れている病棟があり、認知症患者さんが安心できる心地良い療養環境を作り出せていると感じています。
現在の活動02~院内教育活動
2014年から認知症看護研修を開始し10年継続しています。これまで「高齢者看護研修」や「トピックス研修:認知症看護」など看護倫理や意思決定支援、退院支援をテーマにした研修を企画。当院ではパーソンセンタードケア(その人を中心としたケア)の考え方を研修内容に積極的に取れ入れ、認知症患者さんが「何を必要としているのか」「何を求めているのか」といった「心理的ニーズ」を理解するとともに、認知症を持つ人々の生活歴や習慣、趣味に着目し、個々のニーズに合ったサポートを提供することが重要であることを発信し続けています。
現在の活動03~院外教育活動
昨年度は、市内小中学校の養護部会の依頼を受け「認知症の理解と学校教育のかかわり」をテーマとした研修会を開催。他施設や地域向けにも認知症に関する講義や医療講演を実施。認知症カフェの運営にも参加し、地域の認知症啓発活動に携わっています。
身体的拘束実施率は平均0.9%
2023年度延入院患者数61,414名のうち約45%が認知症ケア加算対象患者(高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅲ以上)で介護を必要とする状態でしたが、身体的拘束実施率は平均0.9%です。身体的拘束最小化を実現した背景は、 ➀看護部として身体的拘束がもたらす弊害や倫理的感受性を育む教育を意識した研修を継続していること、➁認知症ケアチームのかかわりとして身体的拘束をせざるを得ない原因の見極め、代替策の提示や原因除去の検討、身体的拘束実施基準に沿っているかに着目し繰り返し指導・伝達を行ってきたこと、➂医療安全の観点からも医師や病棟に身体的拘束マニュアルを順守するよう働きかけたこと、➃離床CATCHや座コール・クリップセンサーなど、センサーの種類が充実しており、必要な時に適切なセンサーを即時に選択し使用できることなど が挙げられます。こうした「患者さん中心のケア」「多職種連携」「代替案の提供」「システムの構築」により患者さんの人権と尊厳を最優先し、身体的拘束をできるだけ排除する意識が根付き、身体的拘束をしない組織文化として浸透していったのではないかと考えています。
関西ブロック 認知症看護認定看護師部会を発足!
2024年度より関西ブロック限定の部会活動を開始。横断的活動及び連携により、認知症看護の質の向上・認定看護師のスキルアップを目的としています。「適時調査を終えての情報共有」「離床センサーや認知症マフ※」「眠剤・向精神薬の使用について」「事例検討」など議題は豊富で有意義な会となっています。
※認知症マフ…認知症の人の落ち着かない手を温かく保ち、感覚や視覚のケアに活用するものです。布や毛糸で作成した筒状の中に両手をいれ、中にあるぬいぐるみや柔らかなボール等を握ることで心地よい刺激となり、気持ちが落ち着いていきます。イギリスのオックスフォード大学病院の高齢の患者さんや一部地域の救急車に装備され認知症の方の搬送時に使用されています


