徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

病気の治療

medical treatment

泌尿器科の病気:骨盤臓器脱

臓器が膣から出てしまう!?

骨盤の底には子宮、膀胱、直腸などの臓器を支えている筋肉や靱帯があり、腹圧により臓器が骨盤外に出ないように支えています。お産を繰り返したり年齢を重ねていくとこの支えが緩み、子宮や膀胱、直腸が骨盤の中から膣に下がって膣から体外に出てしまう病気を骨盤臓器脱といいます。

脱出する臓器により、子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤、膣脱などに分かれ、これらが単独または同時に出現してきます。進行すると常に股の間にものがはさまった感じとなり、尿や便がすっきりと出なくなります。高度になると膣壁が下着にすれて出血するなど歩行も困難となり、日常生活が大きく制限されてきます。

治療の原則は手術

骨盤臓器脱には薬は無効で、治療の原則は手術療法となります。また、脱出が軽度の方や手術を受けられない方のためには、対症療法として膣にリングペッサリーを挿入する方法もありますが、あくまで補助的な矯正器具なので根本的な治療法ではありません。人によっては違和感を強く感じる方もいます。また、膣の炎症を起こしやすく、出血やオリモノの増加がしばしば起こるので、3~4カ月ごとの定期的な交換が必要です。

手術では、膣から子宮を摘出し、膀胱と膣の間の筋膜および直腸と膣を支える筋肉を補強する術式(膣式子宮全摘術+前後膣壁形成術)が行われるなど、これまでさまざまな術式が工夫されてきましたが、再発率が一般的に30~40%の方にみられるといわれています。

メッシュ手術は再発が少ない

2004年にフランスの婦人科医によって緩んだ筋膜や靱帯の代わりに人工の素材を用いて補強するメッシュ手術(TVM手術Tension-free Vaginal Mesh)が開発され、再発が少なく、わが国でも2005年ごろから行われるようになりました。

この手術は、腰椎麻酔あるいは全身麻酔にて行われます。メッシュは本体とアームからなり、本体を膣と膀胱の間および膣と直腸の間に挿入し、アームを骨盤奥の靱帯や筋膜に貫通させて固定します。前壁メッシュは膀胱と膣の間に置かれ、アームは閉鎖孔を通って骨盤筋膜腱弓に固定されます。後壁メッシュは膣と直腸の間に置かれ、アームは仙棘靭帯に固定されます。

メッシュ本体は痛んだ筋膜の代わりに面として骨盤臓器を支え、アームはそれらを吊り上げる靱帯の役割を担います。痛んだ筋膜を補強に使用しないため、再発が少なく突っ張り感などの違和感が少ないという利点があります。切開は膣壁以外には股部と臀部に5㎜程度4~6箇所行い、術後は約5日間で退院となります。健康保険での治療が可能です。

メッシュ法は術後の再発が少ないことが利点です。また尿失禁に対する手術(TOT手術)を同時に希望する方にも施行できます。術後で最も大切なことは、骨盤臓器脱の再発予防のために腹圧をかけない生活を心がけることです。術後少なくとも2カ月は重い物を持つことは控えましょう。慢性の便秘のある方もいきむ際に腹圧がかかるので便通に注意しましょう。

また、TVM法の再手術はできません。脱出の程度が強ければ、腹腔鏡下に膣壁を仙骨にテープで固定する膣壁仙骨固定術(LSC)を行います。TVM法と比較して成績にも遜色はなく、腹腔鏡で行えば体への負担は抑えられます。健康保険での治療が可能です。

合併症は膀胱内等へのメッシュ露出

メッシュ法の合併症は、膣壁へのメッシュ露出、膀胱内へのメッシュ露出と結石形成などです。術後、比較的早期に生じることもありますが、5年以上経過してからメッシュの露出がみられることがあります。メッシュへの感染、膀胱損傷、腸管損傷、大血管損傷、骨盤内血腫、骨盤痛などがみられます。

他の持病で免疫抑制剤を使用中の場合やステロイド剤を内服している場合、骨盤内の放射線治療後、あるいはコントロールが不十分な糖尿病の方は手術が禁忌になります。

参考
日本骨盤臓器脱手術学会HPの骨盤臓器脱手術

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