徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2024年(令和6年)09月23日 月曜日 徳洲新聞 NO.1459 4面

読み解く・読み得 紙上医療講演78
独自手術で漏斗胸治療

今回のテーマは「胸郭変形疾患(漏斗胸・鳩胸)」。漏斗胸は前胸部が陥凹した状態、鳩胸は服の上からでもわかるほど前胸部が突出した状態です。1,000人に1人程度の割合で発症するとされ、遺伝的な要素があると言われています。命にかかわる病気ではありませんが、QOL(生活の質)に大きな影響を与えます。治療として独自の“胸肋挙上術変法”に取り組む葉山ハートセンター(神奈川県)の飯田浩司院長が、漏斗胸を中心に解説します。

葉山ハートセンター(神奈川県)飯田浩司院長

胸郭変形は、胸郭をつくる肋骨と前方の肋軟骨がゆがむことが原因と考えられ、出生時から明らかなケースと、成長にともない変形が目立ってくるケースがあります。小学生以上では精神的な影響があり、成人では60%以上に動悸や胸痛、息切れ、疲れやすさなど身体症状が現れます。これは心臓や肺が胸壁によって圧迫されることが原因と考えられます。

くぼみが左右にずれていたり、突出する部分があったり、形態には個人差があります。外見の診察で診断することが可能なので、当院ではCT(コンピュータ断層撮影)検査は初診時には行いません。また、病名をそのまま用いず、「胸壁外科外来」という名称で診察しています。

治療前の漏斗胸治療後の漏斗胸

漏斗胸は命には影響しないので、手術は必要ないという考え方もあります。しかし、身体的・精神的な影響で悩んでいる方も多くおられます。そこで①症状を軽快させる、②症状の発現を抑える、③胸郭の発育を正常に保つ、④精神的な負担を軽減する──ことを目的に、概ね患者さんの「握りこぶし」と同等以上の体積の陥凹があり、圧迫によって心電図や胸部レントゲン写真で変化が見られる場合には、保険適用として手術を行います。

現在の漏斗胸手術は、側胸部から胸腔内に金属棒を留置し、胸骨を裏側から押し上げるNuss法が主流です。しかし、異物の移動、出血、感染など合併症が10%程度起こることが報告されています。また、痛みが続くため鎮痛剤の長期内服を要し、日常生活への復帰が遅れることがあります。2~4年後に再手術で金属棒を取り出しますが、この期間は運動が制限されます。Nuss法は、成長によって金属棒がずれないよう、思春期の急激な成長が落ち着くまで待ってから実施することが推奨されています。

一方、当院では、1981年に開発された胸肋挙上術を独自に改良した術式を行っています。肋軟骨の一部を切除・短縮した後に再縫合することで、自己の肋骨・肋軟骨が元に戻ろうとする張力が胸骨を両側から引き、胸郭を矯正します。変形の程度、左右差、年齢などにより切除範囲、再縫合の角度を変えるなど工夫が必要です。

手術後の入院期間は6日程度。退院までに痛みはほぼなくなります。約1カ月で登校・勤務が可能で、3カ月目以降は運動制限が必要なくなります。胸郭変形を自覚し、治療を希望する幅広い年齢に手術が可能です。鳩胸でも同様の手術を行います。

これまで胸肋挙上術変法を900例ほど実施していますが、出血、輸血、肺炎、感染、長期入院、疼痛の遷延など、入院中や退院後の合併症はありません。身体症状、精神症状は術後に改善、消失し、多くの患者さんに満足していただいています。同手術は、日本や米国、欧州の胸部外科学会機関誌などに論文が採用されており、国際的に認められた方法です。

漏斗胸や鳩胸を専門にする医療機関は少ないのが現状ですが、悩んでいる方は、ぜひ受診をおすすめします。また、当院ではオンラインで医療講演も行っています。

PAGE TOP

PAGE TOP