
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)03月03日 月曜日 徳洲新聞 NO.1481 1面
南部徳洲会病院(沖縄県)は、放射性医薬品(放射線を放出する能力をもつ元素を組み込んだ薬剤:RI)のルタテラ(一般名:ルテチウムオキソドトレオチド)を用いた治療を開始した。体内に投与し、体の中から病変に放射線を照射する内照射療法(放射線治療のひとつ)で、対象は神経内分泌腫瘍。2021年8月にルタテラが保険適用になった。あわせて、去勢抵抗性前立腺がん骨転移を対象とする内照射療法も開始。平安名常一・副院長兼放射線部統括部長は「沖縄本島だけでなく、先島諸島や鹿児島県の奄美群島を含めた広い地域の患者さんに、より良い医療を提供していきたいです」と意気込む。

「患者さんに一層良い医療を」と放射線チーム(後列右が平安名副院長)
神経内分泌腫瘍は、神経内分泌細胞(ホルモンなどを分泌する細胞)から発生する腫瘍。膵臓や腸、肺、前立腺など全身の臓器に起こり得る。まれな腫瘍ではあるものの、年々、増加傾向を指摘する声もある。
治療は一般的に手術や化学療法などだが、21年8月にルタテラが保険適用になり、治療の選択肢が拡大した。ルタテラは、ソマトスタチン(ホルモンの一種)に似た物質「ソマトスタチンアナログ」に、放射線を放出する能力をもつ元素「ルテチウム177」を結合させた医薬品。
神経内分泌腫瘍の細胞表面には、ソマトスタチンを選択的に受け入れる物質(ソマトスタチン受容体)が高頻度で発現していることがわかっており、ルタテラを点滴で体内に投与すると、ソマトスタチン受容体に結合してルテチウム177が腫瘍細胞内に取り込まれ、放射線のβ線やγ線を放出、細胞の増殖抑制が期待できる――という仕組みだ。
このため、適応は神経内分泌腫瘍と診断され、かつソマトスタチン受容体陽性(検査で発現していることを確認)の症例でなければならない。
治療は、基本的に8週間ごとの投与を最大4回繰り返す(約6カ月間)。1回当たりの投与時間は30分だが、腫瘍細胞に結合しなかったルタテラは主に尿で排泄されるため、腎臓の被ばくを軽減する薬剤を点滴で同時に4時間投与する。腎臓を保護する薬剤の副作用として嘔吐があり、嘔吐物には放射性物質が含まれることから、制吐剤も投与する。
ルタテラ治療用の隔離室。スタッフが入れるエリアを赤い線(写真下)で提示
ルタテラ投与後は患者さんの身体から放射線が放出されるため、周囲の人の被ばくを防ぐために、患者さんを個室に隔離。身体から放出される放射線量が基準を下回るまでは退出できない。スタッフも部屋の出入り口までの対応となり、患者さんには自立した食事や排泄などが求められる。患者さんが退出した後は、スタッフが部屋の除染作業や患者さんの排泄物管理などを行う。
南部徳洲会病院は平安名副院長を中心に準備を進め、昨年9月にルタテラ治療を開始。現在まで4例実施した。平安名副院長は「隔離個室を整備するのに看護部に相談したり、薬剤部の協力を得て薬剤調整を行ったり、診療放射線技師が入院前後の部屋の養生や除染作業を行ったりするなど、多職種の協力があって実現しました」と強調。
「ルタテラ治療は全国でも実施施設が限られており、沖縄県も最近まで患者さんは県外でなければ受けることができませんでした」と指摘し、「当院で実施できるようになったことで、県内はもちろん、沖縄に近い奄美群島の患者さんの負担も軽減できると思います」と期待を寄せる。思うような治療効果が得られなかった場合でも、平安名副院長が手がけてきた他の治療を複合的に組み合わせ、さらに選択肢を増やす考えだ。
同院以外でルタテラによる内照射療法を実施している徳洲会グループ病院は湘南鎌倉総合病院(神奈川県)のみ。
また、同じく昨年9月に放射性医薬品「ゾーフィゴ」(一般名:塩化ラジウム〈223Ra〉)による内照射療法も開始した。同医薬品は、放射線のα線を出す「ラジウム-223」という放射性物質を含んだ注射薬で、16年に保険適用された。対象は去勢抵抗性前立腺がん骨転移(前立腺がんに対するホルモン療法の効果がなくなり骨に転移した腫瘍)。
ラジウム-223には、カルシウムと同じように“骨に集まりやすい性質”があり、注射で体内に投与すると、代謝が活発になっているがんの骨転移巣に多く運ばれα線を放出、がん細胞を攻撃する。
治療は4週間ごとに1回、最大6回まで。α線はβ線やγ線に比べ透過力(物質を通り抜ける力)や飛距離が小さいため、原則、入院する必要はない。ただし、実施するための施設要件があり、全国どの病院でも同治療が受けられるわけではない。徳洲会グループでは、現在、8病院が実施している。
同院では現在、5例実施。ルタテラ同様、着実に治療件数を増やしている。「今後はPET(陽電子放射断層撮影)装置の導入も目標に掲げ、さらなる新規治療法の開始を考えています」(平安名副院長)。