2019年(令和元年)9月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1202 三面
特集 湘南鎌倉医療大学
カリキュラム
島嶼・災害看護など必修 特色ある授業を打ち出す
湘南鎌倉医療大学は豊かな人間性や高い倫理観・コミュニケーション能力、科学的根拠に基づいた看護実践などができる看護師を養成するため、看護学の基礎から応用までを体系的に学修する教育に取り組む。カリキュラム(教育課程)のなかで、徳洲会グループを母体とする大学らしい特色を打ち出している。島嶼(とうしょ)看護や災害看護、徳之島(鹿児島県)や沖縄、地元の鎌倉などでの体験学習がそれだ。これら授業とともに6項目からなるカリキュラムポリシー(教育課程の編成および実施に関する方針)、教員の声を紹介する。
徳之島や沖縄などで体験学習
湘南鎌倉医療大学のカリキュラムは「基礎教養科目」、「専門基礎科目」、「専門科目」の3つの科目群で構成(表1~4)。さらに、選択制の「保健師課程科目」を設けている(表5)。
カリキュラムでは徳洲会を母体とする大学として、また鎌倉に立地する大学として、いくつかの特色ある授業を打ち出している。具体的には、基礎教養科目のひとつである体験学習(選択式授業)と、専門科目で学ぶ島嶼看護、災害看護だ。
体験学習では鎌倉の文化と歴史を学んだり、沖縄や離島である徳之島などを訪れて現地の方々との交流や生活体験などを行ったりする。
鎌倉の文化・歴史の授業は、同大が立地する鎌倉の長い歴史から見た日本文化の流れや、先達が築き上げた鎌倉文化に触れ、鎌倉の風土や人々の生活などを学修する。
また鎌倉での体験学習では、風致保存会が鎌倉の寺社、歴史的建造物に関し講話したり、鎌倉広町の森市民の会が同会の活動について講義したりする。田植え、草刈り、ホタル鑑賞、藍染めなども体験する計画だ。「体験学習を通じ地域の方々とコミュニケーションを取ったり、そうした方々の生活の様子を聞いたり体験したりしながら、看護学を学ぶ際に、その地域の高齢者の方々はどのような看護が必要になるかなど考えつつ授業を受けてほしいと考えています。また地域の方々と交流するなかで、マナーや言葉遣い、コミュニケーション方法などを学んでほしい」と同大設置準備室の荒賀直子室長は期待を寄せる。
徳洲会は離島・へき地医療への貢献を組織の存在意義のひとつに位置付け、重要視している。このため授業では島嶼看護を学ぶ科目を設置。島嶼・医療過疎地で暮らすあらゆる年齢層の方々の健康保持・増進について学修し、看護を実践するための知識・技術の修得を目指す。
さらに、島嶼・医療過疎地に限らず、看護職が少なく医療資源も乏しい環境にある方々の健康の維持・増進に必要なことは何か、生活援助に必要なことは何かを考察し、応用力を養うことを狙いとしている。
大学説明会で実施した衣服の着脱介助に関する模擬授業
また、災害看護の授業では、災害医療の実践経験が豊富なNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)隊員が講師となり、災害時の看護師の役割・活動やTMATの活動などを学ぶ機会を提供する。TMATは徳洲会の職員を中心に構成、国内外の被災地に出動し、災害医療支援活動に取り組んでいる。
カリキュラムポリシー
カリキュラムは3科目群+ 保健師課程科目で構成
同大は6項目からなるカリキュラムポリシーに基づき授業科目の編成を行った。カリキュラムの全体像を俯瞰(ふかん)するのに役立つため紹介する。
Ⅰ.初年次教育を重視し、アカデミック・スキルズを身に付け看護専門職として学び続ける自己研鑽(けんさん)の態度を養う科目を配置する。
Ⅱ.「基礎教養科目」は哲学的思考を基盤に豊かな人間性、教養を培い、高い倫理性を育て、品格を備えた看護専門職者を養成するために「人間の理解」、「コミュニケーションの方法」、「科学的探究」、「社会と文化」、「運動とレクリエーション」の5つに区分して科目をバランスよく配置する。
Ⅲ.「専門基礎科目」は看護学の基盤となる人体の形態・機能を理解し、健康障害を起こす要因や障害・疾病に陥った時の人体の状況、社会環境と人々の健康とのかかわりを学修する科目を「人体の構造と機能」、「健康障害と回復」、「健康支援と社会システム」の3つに区分し配置する。
Ⅳ.「専門科目」は看護専門職として必要な専門的知識・技術を修得するとともに、知識と技術を統合して看護学を発展的に考察する科目を「領域別科目」、「統合科目」の2つに区分し配置する。
Ⅴ.卒業要件を満たすことによって、看護師国家試験の受験資格が得られる教育内容とする。また選択制で保健師国家試験受験資格が得られる科目を配置する。
Ⅵ.学修成果の評価については、到達目標と成績評価基準をシラバスに明示し、筆記試験・レポート・実技試験・実習評価、授業態度や授業への貢献の度合い等で総合的に実施する。
公衆衛生学も必修
専門基礎科目のひとつとして、同大では公衆衛生学を必修としている。これは、看護職が地域に出向いて仕事を行う際に知っておくべき、地域で暮らす方々の健康の保持・増進や疾病予防の考え方、多職種との協働の方法などを学修する。これらを通じて健康課題を考察したり、データを分析して健康被害の要因を抽出したりする方法などを修得する。
公衆衛生看護学概論も必修とした。地域特性と健康課題や、個人と家族の生活をアセスメント(評価)する能力を育て、地域で看護活動を展開する方法や、社会保障制度、保健福祉施策、各種の法律、行政対応などを学修し、地域住民の方々への看護職の働きかけ方などを修得するのが狙い。
基礎ゼミナールⅠは主にアカデミック・スキルズ(学問するための技術)の修得を目指す。また、基礎ゼミナールⅡでは看護職者になる動機付けを明確にする。
専門科目のうち領域別科目は、すべての看護学の基盤となる科目を含む。多様な疾患・障害のある方々への療養支援、健康の保持増進・生活支援や、あらゆる年齢層、あらゆる健康レベルの方々を対象とする看護の知識・技術を修得する。
科学的根拠に基づいた適切な判断力や、質の高い看護ケアを提供できる実践力、計画的に看護を展開する能力、生涯にわたり自己研鑽できる基礎能力の育成を目指す。また、各領域の概論のなかで、地域包括ケアシステム構築についての考え方も講義していく。
統合科目では、これまでに学修した看護学を統合して多角的に看護を捉え、すでに修得した知識・技術をもとに的確な判断力・実践力をもって看護実践ができる応用力の修得が目的。幅広い看護の視点をもち、看護学領域での自己研鑽の基礎となる看護研究能力を身に付け、より専門的に看護学を考察できるように科目を配置している。