直言
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直言 ~
荒賀 直子(あらがなおこ)
学校法人徳洲会 湘南鎌倉医療大学設置準備室室長(東京都)
2019年(令和元年)9月16日 月曜日 徳洲新聞 NO.1202
大学設置準備室に着任し、開設準備を始め、はや2年3カ月が経過、ようやく文部科学省から開設認可の通知をいただき、2020年4月に湘南鎌倉医療大学の開学が決定しました。
大学を開設するにあたり“生命だけは平等だ”という理念の下、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療・ケアを受けられる社会の構築を目指し、日々研鑽(けんさん)する医療人を育成すること」を建学の精神としました。
看護職は対人サービスの仕事であり、ケア・生活支援の専門職でもあります。ゆえに社会人に必要な常識・マナー・ルールとともに、支援者として必要な生活能力、幅広い教養と哲学的思考を基盤とする豊かな人間性や、高い倫理性を身に付けておくことが重要であり、とくにコミュニケーション能力は必要不可欠と考えています。
看護学は学際的な学問であることから、本学では次のような人材を養成することとしました。
①人間として必要な他を思いやる豊かな人間性、幅広い教養、倫理観、生活能力、マナーを身につけている。②チーム医療に関心が高く、実践現場において関わる人々との十分なコミュニケーションが取れ、多職種連携において看護の専門的役割が果たせる。③修得した最新の看護学の知識・技術をもとに科学的根拠に基づいた判断力・思考力をもって看護実践ができる。④地域特性を理解し、地域における看護活動発展への意思を持ち、地域看護活動の基礎能力を身につけている。⑤グローバル化の進展を視野に入れつつ看護専門職者として生涯にわたって人間の尊厳を擁護する看護を実践し、看護ケアの質向上について探求・研鑽していく基礎能力を身につけている。
看護学部を開設する時に最もエネルギーを必要とするのは、実習病院・施設の開拓です。本学の場合、病院・施設の実習に、すべて徳洲会グループの協力を得られ、非常にありがたく思っています。救急医療や先端的な医療、国が展開しようとしている地域包括ケアシステムに相当するサービスを、地域で実践している徳洲会グループの病院・施設と連携し、臨地実習を実施。これにより社会環境の変化に対応できる看護実践能力の育成、高度化した医療に対応できる高い技術力を持った看護職の育成が図れると考えています。
特色ある授業をいくつかご紹介しますと、「島嶼(とうしょ)看護」、「災害看護」、「体験学習」などが挙げられます。なかでも「島嶼看護」は、今後さらに進行していくと思われる都市部周辺を含む過疎地の拡大を視野に入れています。医療資源の乏しい環境下にある方々の療養生活支援や健康の保持・増進などに必要な看護活動のあり方を、離島をモデルに学修し、地域包括ケアシステム構築への理解を深め、医療過疎地や地域での看護活動の応用力を養います。
「災害看護」は、国内外で頻発する災害への救助・援助を実践しているNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)の協力により、学修を進めます。「体験学習」は、学内だけの“閉じた”教育活動のみならず、離島生活や農村体験などを通じ、地域で暮らす方々と交流、マナーや社会ルールなどを学修します。これらの学修については大学説明会などでも、参加者から「面白そう」、「もっと知りたい」といった感想が聞かれました。
今後の展望としては、大学としての品格を保ちつつ、より大きく羽ばたくために、開学した看護学部をさらに進化させ、イノベーション(革新)の創出にかかわる教育能力・研究能力を高める環境を整備したいと考えています。具体的には、大学院の開設、国内外の大学との連携や高大(高校と大学)連携の推進。また学校法人徳洲会の鈴木隆夫理事長(一般社団法人徳洲会理事長)が以前から構想されている国際化にも視座を置き、海外留学生を受け入れるなどグローバル化や、医療経済学を学べる学部の創設などが考えられます。もっとも、これらを実現するには、開学した看護学部が教育を含め軌道に乗り、安定した社会的評価を得られるようになることが必要ですから、まずは看護学部の運営に尽力します。
1年生が卒業後、果たして本学が養成を目指す人材像に沿い、どれだけの看護職に育っているのか、大いに期待して、皆で頑張りましょう。