徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP 45th

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2017年(平成29年)12月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1113 一面

吹田徳洲会病院
ダヴィンチで婦人科手術
臨床研究として子宮全摘出術

吹田徳洲会病院(大阪府)は内視鏡下手術支援ロボット「ダヴィンチ」による子宮全摘出術を開始した。同院はすでに保険診療下で、前立腺がんに対するダヴィンチによる前立腺全摘出術を行っているが、婦人科領域では初の取り組み。同領域では保険適用がまだないことから、臨床研究として実施していく。ダヴィンチは自由度の高い関節機能や3次元での拡大視野による手術操作など、繊細かつ低侵襲な手術が可能になるため、患者さんへのメリットが期待できる。

先進医療への参加も視野

「ダヴィンチによる子宮全摘出術は術中の出血が少なく回復が早い」と北田副院長 「ダヴィンチによる子宮全摘出術は術中の出血が少なく回復が早い」と北田副院長

対象疾患は子宮全摘出術が適応とされる子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮頚部(けいぶ)高度異型上皮(CIN3)、子宮頚部上皮内がん、子宮内膜異型増殖症、子宮頚がんIA-ⅡB期、子宮体がんIA-ⅡB期。良性、悪性の幅広い婦人科疾患が対象だ。

子宮筋腫や子宮腺筋症は過多月経や臓器圧迫症状によるQOL(生活の質)の低下を引き起こし、子宮頚部高度異型上皮や子宮頚がん、子宮体がんなどは進行すると死に至る恐れがある。

今回の臨床研究による治療を受けるには、20歳以上75歳以下、十分な臓器機能を有するなどいくつかの条件がある。また、病状や年齢に応じ附属器(卵管卵巣)摘出術と骨盤リンパ節廓清(かくせい)術を追加する可能性がある。目標症例数は15例とし有効性や安全性を検討する。

良性・悪性の幅広い疾患を対象に施行 良性・悪性の幅広い疾患を対象に施行

ダヴィンチは先端に鉗子(かんし)や電気メスを取り付ける3本のアームと内視鏡カメラを操作する1本のアームで構成される手術支援ロボット。術者は3次元の立体画像を見ながら操作し、切除や縫合など手術手技を行う。国内では現在、前立腺がんに対する前立腺全摘出術と腎がんに対する腎部分切除術が保険適用。

研究責任者を務める北田文則副院長(産婦人科)は「従来の腹腔鏡(ふくくうきょう)による低侵襲手術のメリットを享受しながら、コンピュータ制御下に鉗子を操作するため手振れがなく、手術野に挿入された鉗子の先端部が広い自由度を保持した関節機能を有することにより、小骨盤腔(くう)という極めて狭小な手術野における操作の自由度が高く、3次元かつ10倍の拡大視野で手術操作できるため、神経、血管などの確認が容易で、より繊細な手術を行うことが期待できます。従来の腹腔鏡手術と比べ、手技の習得が比較的容易であることも特徴です」とメリットをアピール。

研究分担者として、同院産婦人科の梅本雅彦部長、大倉良子医長、渥美理紗医師、宮崎綾子医師、馬淵誠士医師が名を連ねている。

北田副院長によると日本では開腹での子宮摘出術が多い。出血や臓器損傷を避けるため十分な視野確保を行うのが目的だが、結果的に内視鏡手術に比較して侵襲度の高い手術になる。

一方、腹腔鏡手術は低侵襲で術後の疼痛(とうつう)が軽いなどメリットがあり、ほとんどの婦人科良性疾患や、子宮体がんで保険適用となっているものの(子宮頚がんに対する手術は先進医療)、「手技の習得に時間を要することなどから、腹腔鏡手術が悪性腫瘍の標準治療法として国内で普及するには制約があると言えます」と北田副院長は指摘。

米国では婦人科領域でダヴィンチ手術が急速に普及し、2012年以降、子宮摘出はダヴィンチ手術が最多を占め、治療成績や合併症、術後のQOLに関して良好な成績が報告されているという。

国内のダヴィンチによる婦人科手術では、16年に子宮頚がんに対する広汎子宮全摘出術が先進医療に指定。実施するには「当該技術の実施症例数:術者として5症例以上」、「10症例以上のロボット支援悪性子宮全摘出術(開腹広汎子宮全摘出術を含めて年間15症例以上の子宮がん手術を施行)」などの要件がある。今後、国内でも普及すると予想されることから、吹田病院は同先進医療への参加要件を満たすことも視野に入れ、臨床研究に取り組む考えだ。

すでに1例目の手術を9月に実施。子宮体がんの前がん状態である子宮内膜異型増殖症の60歳代の患者さんだ。東京医科大学から経験豊富なプロクター(指導者)として井坂恵一・産科婦人科学分野教授を招聘(しょうへい)し、北田副院長と馬淵医師が執刀。

「全身麻酔下で手術を施行し、術後から硬膜外麻酔もなく痛み止めなしで経過し、翌朝から痛がることもなく歩行可能でした。従来の腹腔鏡手術と比べても術中の出血は少なく、回復の速さを実感しました」(北田副院長)。入院期間は安全性を担保して5日間だった。10月には2例目となる子宮頚部上皮内腺がんの手術も施行した。

同院では多様ながん種に対する集学的治療(手術、薬物療法、放射線治療)や、PET-CTなどによる高度な診断、緩和ケアに取り組んでいることから、北田副院長は地域のがん医療の拠点となる“がん治療センター”の立ち上げを構想。若手医師を中心にがん医療に興味をもつ多くの医療人を集めたい考えで、地域の医療機関との連携を重視し、地域完結型のがん医療を目指す。

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