
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)08月04日 月曜日 徳洲新聞 NO.1503 1面
第29回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会が9月5日から2日間、福岡大学病院福大メディカルホールで開催される。大会長を務めるのは鎌ケ谷総合病院(千葉県)の大渕俊朗・副院長兼呼吸器外科部長。テーマは「新たなC.Q.(クリニカルクエスチョン)への挑戦」だ。日々の臨床で抱く疑問や未解決の課題に目を向け、今と未来を多角的に議論する。約130題の演題がすべて口演形式で発表され、臨床・研究両面から活発な意見交換が期待される。
第29回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会のポスター
気胸は肺に穴が開いて空気が漏れ出し、肺がしぼむ病気。以前は若く痩せ型の男性に多いとされていたが、近年では高齢者にも多く見られるようになった。一方、嚢胞性肺疾患は肺に嚢胞(袋状の空洞)ができる病気で、遺伝性疾患や間質性肺炎など多様な病態を含む。
第29回となる今回は「新たなC.Q.への挑戦」がテーマ。大渕副院長は「既存の治療や知識に満足することなく、つねに『なぜ?』という問いをもち続けてほしい。若手医師にこそ、この姿勢を大切にしてもらいたいと思います」と語気を強める。
実際、気胸の臨床現場では、かつての常識が通用しなくなってきている。若年層よりも高齢者の罹患が増加し、その治療選択が複雑化。基礎疾患を多く抱えた高齢者の場合、保存的治療、ドレナージ、外科手術のいずれを選ぶか、慎重な判断が必要だ。
嚢胞性肺疾患も多様化が進んでいる。喫煙に起因する肺気腫はもちろん、若い女性に多いリンパ脈管筋腫症(LAM)や、喫煙と関連の深い肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)といった希少疾患の存在も注目され、いずれも診断・治療のタイミングが予後に直結する疾患であり、専門的な理解が不可欠だ。
第29回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会のHPは、ここから
さらに、がん治療の進歩によって、肺転移巣の壊死にともなう気胸の症例が増加。これは、治療の奏効の証しとして現れる一方で、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与える新たな問題として浮上している。
こうした課題に対し、同学会では多彩なプログラムを用意。注目は2本の特別講演だ。
ひとりは湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の野口雅之・湘南先端医学研究所がん医療研究部主席研究員。肺腺がんの病理学的分類の「野口分類」は、肺がん手術の縮小化を推進し、予後の改善に大きく貢献した。大渕副院長は「野口分類こそ、『新たなC.Q.への挑戦』から生まれたものです」と太鼓判を押す。
もうひとりは、酒井宏水・奈良県立医科大学医学部化学教室教授。講演では、人工赤血球の開発という前例のない挑戦を紹介。保存・輸送・血液型の壁を越える新しい輸血手段として期待され、2024年度から新たな治験も始動している。
また、「女性の気胸」に焦点を当てた特別セッションも開催。月経随伴性気胸や子宮内膜症との関連など、これまで見過ごされがちだったテーマに対し、認識を深める狙いがある。
コロナ禍で中止となった第24回大会の「幻の会長講演」も復活。丹羽宏・聖隷健康診断センター東伊場クリニック所長が、気胸の近代史をたどりながら、診療の変遷と今後の展望を俯瞰する。
さらに、大渕副院長の大会長講演では、好奇心をもって「新たなC.Q.」を探求し続けた自身の研究の軌跡を紹介。たとえば哺乳類の進化と横隔膜の構造に着目し、ヒトに特有の病態としての気胸を、“進化の代償”として捉える独自の視点を提示。「小さな疑問の追求が、大きな発見につながります」。
発表形式にも工夫が凝らされ、すべての演題(約130題)を口演形式で実施。これにより、ポスターセッションでは得られにくい深い議論と、参加者同士の交流が期待される。参加者は医師だけでなく、看護師、臨床工学技士、研修医、学生など職種も立場も多岐にわたる。
徳洲会グループのブースも設置。徳洲会の歴史や活動の特色、徳洲会体操クラブやNPO法人TMAT(徳洲会医療救援隊)の災害支援活動など、医療以外の社会貢献活動も紹介する。また、会期前日の懇親会には、東上震一理事長も駆け付け、挨拶をする予定だ。
大渕副院長は「どんなに小さな疑問でも、言語化して仲間と共有することで、医療は確実に前進すると信じています。医療にかかわる全員が、医療の発展に貢献する一員であると思います」と意気軒高だ。