
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2025年(令和7年)05月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1492 1面
大和徳洲会病院(神奈川県)が実施しているWAVE治療(経尿道的水蒸気治療)が好評だ。これは前立腺肥大症に対する新しい低侵襲治療で、WAVEはWAter Vapor Energy Therapyの略。「Rezumシステム」という2022年9月に保険適用となった医療機器を使う。細い管状の器具(デリバリーデバイス)を尿道から挿入し、高温の水蒸気を前立腺に放出することで、標的とする前立腺組織を壊死させ、前立腺による尿道の圧迫を低減する。出血のリスクが小さく身体への負担が少ないが特徴だ。同院を含め徳洲会グループでは9病院が実施している(表)。
「新しい低侵襲治療を提供し、地域医療に貢献」と遠藤部長
デリバリーデバイスを持つ遠藤部長。これを尿道から挿入し、高温の水蒸気を放出して治療を行う
WAVE治療は全身麻酔下で行う。デリバリーデバイスに膀胱鏡をセットし、経尿道的に挿入。尿道前立腺部を診察しながら、治療する前立腺の長さ(膀胱頸部から精丘まで)を確認する。
デリバリーデバイス先端からニードルを出して尿道壁に穿刺し、高周波電流で生理食塩水を加熱、高温(103度)の水蒸気をニードルの先端から前立腺組織に放出する。これにより前立腺組織を壊死させ、尿道を広げるという治療だ。
1回の穿刺で9秒間、水蒸気を放出する。ニードルは1cm間隔で穿刺する。壊死した組織は1~3カ月かけて徐々に体内に自然吸収される。通常、術後1~2週間は尿道カテーテルの留置を行う必要がある。
前立腺は男性の生殖器のひとつ。膀胱のすぐ下にあり尿道を取り囲んでいる。加齢などにより前立腺が肥大することで、排尿障害や蓄尿障害を引き起こすのが前立腺肥大症だ。50代前後から増加し、高齢の男性には珍しくない疾患で、QOL(生活の質)に大きな影響を及ぼし、進行すると尿閉など合併症を引き起こす。
前立腺肥大症治療の第一選択は、薬物療法や行動療法など保存的治療だが、薬物療法の効果が不十分である場合や、尿閉、尿路感染症、血尿、膀胱結石など合併症がある場合には、外科的治療を行う。
日本泌尿器科学会、日本排尿機能学会、日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会が連名で、『経尿道的水蒸気治療に関する適正使用指針』というガイドラインを策定・公表しており、手術療法の対象となる患者さんのうち、次の項目に該当する患者さんがWAVE治療の適応となる。
①前立腺肥大症にともなう下部尿路症状を訴える患者さん、②手術療法が適用される患者さんのうち、全身状態や手術侵襲を考慮し、従来の手術療法(TURP=経尿道的前立腺切除術、HoLEP=ホルミウムレーザー前立腺核出術など)が困難な以下のような症例。全身状態不良のため合併症リスクが高い、高齢もしくは認知機能障害のため術後せん妄や身体機能低下のリスクが高い──が困難な症例にあたる。
ただし、WAVE治療の対象として推奨されている前立腺のサイズは30~80mlであり、これを大きく超えるような大きな前立腺の場合は、他の治療法を選択することになる。
大和病院でWAVE治療を手がける泌尿器科の遠藤勝久部長は「当院では、これまで内服薬による薬物療法やTURPに取り組んできました。TURPは手術時間が1~2時間ほどで入院期間は10日前後、術後の出血のリスクもありました。一方、WAVE治療はTURPのように前立腺を電気メスで削る手技ではなく、針を刺して高温の水蒸気を注入するだけですから、患者さんの負担はだいぶ低減できます。手術時間は5~10分程度、入院期間は2泊3日ですみます」とアピール。
同院は昨年10月にWAVE治療を開始。遠藤部長は日頃連携している地域の内科系の診療所への訪問活動を繰り返し、周知を図ってきた。こうした成果が実り、紹介患者さんが増えるとともに、ローカル紙に記事が載り、それを見て来院する患者さんも集まるなど好評だ。
遠藤部長は「他の手術療法を行うのが難しいご高齢の患者さんをはじめ、前立腺肥大症でお困りの地域の方々に、新しい低侵襲治療を提供し、地域医療に貢献していきたいと考えています」と意気込みを語る。