
直言
Chokugen

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直言 ~
髙橋 暁行(たかはしとしゆき)
羽生総合病院(埼玉県) 院長
2025年(令和7年)05月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1492
当院の院長となり早いもので1年半が過ぎました。この間、全職員で取り組んできた「接遇」について、お話しさせていただきます。私は8時会や朝礼で、「当院の存在意義は地域に対する社会貢献を、医療をもって行うことです」と話しています。社会貢献をするためには、患者さんが「当院を受診して良かった」と思っていただける病院でなければなりません。
赤字で瀕死の状態であったスカンジナビア航空をヤン・カールソン社長(1981年当時)は、顧客と社員が接触するたった15秒間の「真実の瞬間:Moment of Truth」に全社員の目を向けさせることで、わずか1年で蘇らせることに成功しました。「真実の瞬間」を病院に置き換えるなら、「患者さんと当院の職員が接触する瞬間」となります。15秒間で「当院を受診して良かった」と、患者さんに思っていただくために行っていることが「接遇」教育です。
「接遇」は「挨拶」、「共感」、「寄り添うこと」の3つから成り立っていると考えて、教育を開始しました。まず「挨拶」です。挨拶は接遇の基本と考え、私が院長になってから、毎朝15分ではありますが、玄関に立ち、来院される患者さんに挨拶をする「おはよう当番」を始めました。「おはようございます」と挨拶をするのは簡単なようで難しく、初めは職員の声も小さく、ただ玄関に立っている感じでした。今では大きな声で挨拶ができ、患者さんからも返事が返ってくるようになりました。わずか数秒の「おはようございます」の挨拶で、患者さんは笑顔になります。困ったことがあると、すぐに話しかけられ、患者さんとの距離が近くなったと実感しています。
もうひとつ、忘れてはならない重要な挨拶が「お待たせしました」で、この一言を忘れないように徹底しています。診察の待ち時間が長いことが常態化している現在、診察室にお呼びする時には、待たされた患者さんの気持ちを考えた場合、何よりも先に「お待たせしました」と言うべきです。また、病院の電話は日常的に混雑しており、電話での第一声も、やはり「お待たせしました」であるべきです。患者さんを元気にする挨拶、待ちくたびれてイライラしている患者さんに申し訳ない気持ちを伝える挨拶。場面場面での挨拶を大事にすることが、患者さんを大事にすることにつながり、「受診して良かった」と思っていただけるはずです。
次に、「共感」です。共感とは「他人の気持ちや感じたことに自分を同調させる能力」です。当院では朝礼で行っている3分間スピーチの冒頭に、前日のスピーチの感想を言うことを必須としています。経験や立場の違う人のスピーチの感想を言うことこそが共感と考えています。患者さんは、私たち医療者の経験では理解できない悩みや苦しみを抱えられています。受け付けで「今日は嫌な思いをした」と訴える患者さんがおられます。職員一人ひとりが共感ということの意味を理解し、患者さんの訴えに共感できれば、患者さんは病院を味方だと捉え、「受診して良かった」と思っていただけるはずです。
最後に「寄り添うこと」です。私の考えとして「仲間に寄り添うことができて、はじめて患者さんに寄り添える」と職員に伝えています。朝礼で「いつも両隣を見てください、困っている仲間がいたら、すぐに手を差し伸べること。人と人は心と心でつながっています。心と心でつながることこそが寄り添うことです」と伝えています。当院も4月に多くの新入職員を迎え、仲間が増えました。多くの新入職員は知り合いのいない職場で、「どうしよう」と困っていることもあるはずです。そこで先輩が「どうしたの? 大丈夫?」と声をかけたら、その瞬間、「心と心でつながる」はずです。
患者さんは本当に困っているから、来院し受診されるのです。そこで職員が仲間に声をかけるのと同じように「どうされました? 大丈夫ですか?」と一言声をかけることで、患者さんと職員の心と心がつながります。職員が患者さんに寄り添うことができれば、「受診して良かった」病院になるはずです。徳洲会グループのどの病院でも、患者さんに「受診して良かった」と思っていただけるように、皆で頑張りましょう。