徳洲会グループ TOKUSHUKAI GROUP

徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2024年(令和6年)08月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1454 1面

乳頭乳輪皮膚温存乳房全切除
単孔式内視鏡手術で同時再建
湘南鎌倉病院乳腺外科が早期乳がんへ

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)乳腺外科は、早期乳がんに対する乳頭乳輪皮膚温存乳房全切除および同時再建を単孔式内視鏡手術で実施した。乳房全切除術は、乳房を葉状に20cmほど切開し、乳頭を含め切除することが一般的。内視鏡を用いる手術も以前からあったが、通常は乳房に複数の小切開が必要だ。一方、「単孔式」では、乳房外側に4.5cmの小切開ひとつだけで内視鏡手術が可能なため、乳頭は温存され、正面からは創部が認識できず整容性が格段に高くなる。1例目は6月20日に実施。

正面から傷見えず格段に高い整容性

「乳がんに悩む患者さんの助けになりたい」と神保部長単孔式内視鏡下での乳房全切除術の様子約4.5cmの孔に専用のポートを設置し、そこに内視鏡と鉗子2本を差し込み手術

乳がんの手術では、がんの位置や広がりによって、乳房をすべて切除する乳房全切除か、乳房の形をなるべく温存する乳房部分切除を選択する。手術は乳房を切開して行うのが標準的で、同時に乳房再建を行う場合は、どうしても創部が目立ってしまい、整容性は低くなる。

一方、内視鏡手術では、乳房を大きく切開するのではなく、脇、乳輪の縁、乳房の外側など、腕を下ろすと目立たない場所に複数の孔を開け、そこから内視鏡や鉗子を挿入し、がんを取り除く。

この方法は創部が小さく患者さんの負担も小さいため、術後の回復が早く、整容性も高いのがメリット。しかし、完全内視鏡下手術は、ごく限られた施設のみで実施されており、鉗子を操る主治医のほか、内視鏡を保持する助手の技術も必要だ。

こうしたなか、さらなる整容性を求め、国立がん研究センター中央病院や同センター東病院などを中心に、新たな術式が模索された。それが「単孔式」内視鏡手術だ。これは乳房の外側の目立たない部位に4.5cmの孔(小切開)を開け、専用のポートを設置、そこから内視鏡と鉗子2本を差し込んで行う手術。

乳房全切除で再建を同時に行う症例が対象。湘南鎌倉病院の神保健二郎・乳腺外科部長は、同センター中央病院に勤務していたこともあり、同センター東病院で研修指導を受けた後、同手術をいち早く取り入れた。

神保部長は「乳がんは20~30歳台の若い女性も罹患しますので、がんをしっかり治すことはもちろんですが、手術後の整容性の維持もとても重要です。当院では、これまで通常の乳房を切開する標準的な手術のみ対応していましたが、新たに単孔式内視鏡手術を導入し、乳がんに悩む患者さんの助けになりたいと考えました」と力を込める。

内視鏡を用いることで、術野の細かい部位まで画像をとおして認識できるため、より正確な手術が実施可能。また、乳房内部を二酸化炭素で気嚢(ガスでふくらますこと)することで、内視鏡による視野を確保し、気嚢による愛護的な操作が可能となるため、安全性も増す。ただし、いまだ確立した術式ではなく、高い技術が求められるため、実施している施設は少ない。

湘南鎌倉病院では6月20日、大西達也・国立がん研究センター東病院乳腺外科長の立ち合いの下、早期乳がんに対する乳頭乳輪皮膚温存乳房全切除および同時乳房再建を単孔式内視鏡手術で実施。患者さんは1週間ほどで退院した。また、2例目も同日に実施した。

神保部長は「手術自体は、従来の手術よりも時間がかかり、適応する患者さんも限られます。それでも整容性の高さを求める患者さんの思いには応えたいです」と強調。また、「乳房を切開する手術では、視野を確保するために乳房の皮膚を引っ張って手術するため、場合によっては皮弁壊死を起こす原因となることがありますが、内視鏡手術では皮膚を引っ張る必要がなく、気嚢によって術野が確保されるので、血流障害は少ないと思います」とメリットを実感する。

ラジオ波焼灼療法も導入 乳房の形をそのまま残す

また、湘南鎌倉病院は3月に、早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法(RFA)を導入した(昨年12月に保険収載)。これはラジオ波電流を用い、がんを熱凝固する新しい治療法で、患者選択に適格基準はあるが、手術と遜色ない治療効果が期待できる。低侵襲で、乳房の形をそのまま残せるのがメリットだ。

同院では、乳房部分切除が必要な患者さんにはRFA、乳房全切除が必要な患者さんには単孔式内視鏡手術と使い分け、整容性の高い治療を目指す。

神保部長は「単孔式内視鏡手術は、いまだ確立した術式はなく、また内視鏡の使用も現在は保険収載されていませんので、まずは症例を重ねて、短期的・長期的な成績を積み上げていきたい。そして、国立がん研究センターの先生方と一緒に、将来的な保険収載実現のための一助になれたらと思います」と意欲的だ。さらに、「当院は、乳がんに対する先進的な治療の選択肢を数多く用意していますので、しっかりと地域の方々にアピールして、困っている患者さんに貢献していきたいです」と抱負を語る。

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