
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)11月02日 月曜日 徳洲新聞 NO.1567 4面
中部徳洲会病院(沖縄県)は多様な搬送業務を安全に担うため、病院救急車の緊急走行を担う救急救命士を対象に、「一般救急自動車運転技能者課程」の受講を継続して行い、体制強化を図っている。同課程では茨城県の安全運転中央研修所で4日間、座学・実技訓練を受講する。また、同院は消防隊からの救急搬送を受け入れるため、下り搬送などによる病床の確保を強化。こうした取り組みが評価され、自動車安全運転センター沖縄県事務所から感謝状を受け取った。
リニューアルしたドクターカーと医師、看護師、救急救命士
出動要請に対し、全力で駆け出す救急救命士
より一層の安全運動を誓う大城吉則院長(中央)
感謝状を受け取る大城院長(右)
同院の緊急走行訓練の取り組みは、2011年に地域連携室の職員が受講したことから始まる。当時、ドクターカーの運用自体は行われていたものの、運転手を務めていたのは同室職員。緊急走行に関する体系的な教育環境が院内になかったことから、外部の専門機関である同研修所での課程を受講した。
その後、19年から救急救命士の採用を本格化。現在は救急救命士が病院救急車やドクターカーの運行業務全般を担っている。一般的な運転免許を保有していても、公道で患者さんを搬送し、サイレンを鳴らしながら緊急走行をするには、高い安全性が求められる。そのため新採用となった救急救命士は、入職後半年以内に同研修所へ派遣、4日間の課程を修了する方針だ。
こうした運転技術の習得には、専用のコースと設備を備えた環境での集中訓練が欠かせない。同課程では、時速100kmを超える高速域での旋回挙動や車体制御をはじめ、濡れた路面でタイヤが空回りして操舵が利かなくなるハイドロプレーニング現象の体験など、限界領域での車両特性を座学と実技の両面から学ぶ。
受講経験について森田尚伍・救急救命士は「一般道での教習では体験できない高速走行時の挙動や路面状況に応じた車両の限界を体感できることは、非常に大きな学びになります。また、緊急走行中は『こちらが優先される』という思い込みに陥りがちですが、研修を通じ、その危険性を強く自覚させられました。サイレンを鳴らしていても、周囲のドライバーには音楽や遮音性によって届いていない場合があります。交差点や見とおしの悪い場所では減速を徹底し、つねに危険を予測して走る意識が身に付きました」と振り返る。
こうした長年の安全運行への取り組みと継続的な人材育成が認められ、今回の感謝状授与へとつながった。森田・救急救命士は「これまで地道に訓練を継続し、無事故での運行を積み重ねてきた実績が公的に認められたことは、うれしく思います。救急車の緊急走行を自前で訓練できる施設や環境をもつ病院は少なく、当院の取り組みが周知されることで、安全運転講習への関心が高まるきっかけになればと思います」と力を込める。
同院は満床になることが多く、病床確保のため、院内で病態が安定した患者さんを地域の連携病院などへ送る「下り搬送」を積極的に進めている。その実績は昨年度が326件、今年度は4~7月までの4カ月間で161件(前年同期間比65件増)とハイペースで推移。さらに、今年度からは医療・介護施設などで病状が悪化した患者さんを、自院の救急車で迎えに行き同院へ受け入れる「自院救急搬送」にも取り組んでいる。
救急救命士が自院の外へ踏み出して初期対応を行うため、コミュニケーション能力や迅速な病態判断が不可欠となる。現在、同院には12人の救急救命士が所属し、夜間帯を含めた常時待機体制を構築。保有する2台の救急車が同時に出動する事態も日常的に発生しており、状況に応じて事務職員らと連携しながら柔軟な運行体制を整えている。下り搬送や自院救急搬送など多様な搬送業務に対応できるよう、人員の拡充も視野に入れている。
月に1回開催の救急委員会では、日々の搬送で生じた課題やヒヤリハット事例を徹底的に検証し、情報共有とプロトコルの改善を継続。
今後の展望について、森田・救急救命士は「搬送件数が急増している現状だからこそ、第一に求められるのは確実な安全運転です。走行頻度が増えればリスクも高まるため、スタッフ同士で声をかけ合い、安全意識を高く保ち続けたいです。同時に、下り搬送や自院救急搬送など多様な搬送業務に対応し、地域の医療・介護施設からより一層頼りにされる病院を目指します。救急救命士一人ひとりの技術と対応力を磨き、地域医療の安全な架け橋として貢献していきます」と意気軒高だ。