
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)10月26日 月曜日 徳洲新聞 NO.1566 4面
医療機関を受診した際、患者さんは場面が変わるたびに自分の名前などを医療スタッフに伝えなければなりません。同じ日、同じ建物内にもかかわらず、何度も確認を求められることに対し、困惑する患者さんも少なくないのではないでしょうか。しかも、なぜ医療スタッフが名前を読み上げて返答するのではなく、患者さんに名乗らせる形式をとっているのか。その理由を一般社団法人徳洲会の深野明美・医療安全・感染管理部部長が解説します。
一般社団法人徳洲会 深野明美・医療安全・感染管理部部長
病院を受診したり入院したりすると、患者さんはスタッフから1日に何度も「お名前と生年月日を教えてください」と言われ、答えることがあります。「さっきも言ったのに…」、「聞かれるたびに答えるのは面倒」、「診察券の番号で管理しているのに、なぜ毎回確認するの?」と思われたことがある方もおられるのではないでしょうか。
じつは、この「何度も確認すること」には大切な理由があります。それは患者さんの取り違えによる事故防止にほかなりません。
医療の現場では診察、検査、注射、点滴、手術、薬の受け渡し、書類の受け取りなど、さまざまな場面で患者さんが間違っていないかを確認します。フルネームだけでなく、生年月日もスタッフに伝えるのは、名前や容姿が似ている方、同姓同名の方もおられるからです。
また、「○○さんですね」など医療スタッフから言われると、患者さんは自分の名前でなくても、自分の名前を呼ばれたと勘違いし、つい「はい」と返事をしてしまうことがあります。

かつて、ある大学病院で患者さんを取り違えて手術を行うという重大な事故が発生しました。当時は、医療者が患者さんの名前を呼び、患者さんが「はい」と答える方法が一般的でしたが、「それだけでは患者さんを確実に確認できない」とわかり、患者さんご自身にお名前や生年月日を言っていただく現在の方法が広く行われるようになったのです。
そして大切なのは、「一度確認したから大丈夫」ではないということです。診察室では診察を受ける患者さん、検査室では検査を受ける患者さん、薬を渡す時には、その薬を受け取る患者さんであることを、その都度、確認します。何度も確認するのは、職員が覚えていないからではありません。患者さんを取り違えることなく、安全な医療を提供するために、それぞれの場面で確認しているのです。
医療安全は、医師や看護師など医療スタッフだけで行えるものではありません。患者さんやご家族もまた“医療チームの一員”なのです。ぜひ安全な医療を実現するために、患者さんには次の協力をお願いします。
①名前や生年月日を聞かれた際には、何度でもお答えください。
②アレルギーや現在服用している薬、これまでの病気など、ご自身の情報をできるだけ正確にお伝えください。
③診察や治療について、わからないことや、「いつもと違う」、「これは自分の薬だろうか」と感じたなら、遠慮なく医療スタッフにお声がけください。
薬や書類を受け取る時にも、ぜひ一緒に名前を確認してほしいと思います。「何度も聞く」、「何度も答える」というひと手間が、患者さんを守る大切な安全確認になります。患者さんと医療スタッフが一緒に確認することで、より安全で安心な医療につながります。皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。