
徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest

徳洲新聞ダイジェスト
Tokushukai medical group newspaper digest
2026年(令和8年)10月19日 月曜日 徳洲新聞 NO.1565 4面
南部徳洲会病院(沖縄県)の飯田洋介・放射線部主任(医学物理士、診療放射線技師)と宇治徳洲会病院(京都府)の石原佳知・放射線治療科医学物理士長兼診療放射線技師長は、第132回日本医学物理学会学術大会(8月28~30日、新潟市)で行われた放射線治療の時間制限付き治療計画トライアル(APT)で、好成績を収めた。同学会から選出された医学物理士36人が競い、飯田主任は「トモセラピー」部門で1位、石原・医学物理士長は「OXRAY」部門で2位に輝いた。
表彰式後、大会長の宇都宮悟・新潟大学医学部准教授(中央)と記念撮影する石原・医学物理士長(左)と飯田主任
それぞれ自院で使用している放射線治療装置(OXRAY)
それぞれ自院で使用している放射線治療装置(トモセラピー)
放射線治療では、放射線を照射する前に「治療計画」を立てる。がんなど病変に対する効果は最大限に、周囲の正常組織に対する影響は最小限にするためで、医師の診察後、放射線治療計画専用装置を用いて、最適な照射範囲や照射方法、処方線量、治療回数などを計算、決定する。
一般的に、計画の作成や装置の精度管理、照射は、医師と診療放射線技師が行うが、近年、放射線治療の多様化、高度化にともない計画作成のプロセスが複雑化していることから、両者に加え、医学物理士の活躍が期待されている。医学物理士は物理学や工学のスペシャリスト。その専門知識を駆使して、コンピュータが行う計算や設定についても確認し、患者さん一人ひとりの病変に合わせ、より適した照射を選択する。
日本医学物理学会は主催する学術大会で、医学物理士の治療計画にかかわる技術を競うトライアルを企画。同一症例(専用装置で撮影したCT画像)・共通条件(照射方法など)下で治療計画を作成し、DVHパラメータ(標的や周囲の臓器に当たる線量と、その体積の関係を示す指標)をもとに点数化する。
過去の同様の企画では、約1カ月かけて計画をつくる形式だったが、今回から新たにAPTとして実施。臨床現場で求められる“限られた時間で質の高い計画を立てる力”を競う狙いから、会場で共通の症例と条件が示され、制限時間2時間半で計画をつくり上げる形式に変わった。従来の点数評価に、早く提出するほど加点されるタイムボーナスを加えた。装置ごとに計算方式が異なるため、トモセラピー、OXRAY、TrueBeam、Versa HDの4部門に分かれ実施。

トモセラピー部門で1位となった飯田主任は、日頃から1~2時間で質の高い計画を立てることにこだわってきた。今回のAPTでも、その経験を生かし、4部門の受賞者のなかで最も高いタイムボーナスを獲得した。「日頃から多くの患者さんの治療に対応するため、治療計画のスピードと質にこだわってきました。それが実を結び、素直にうれしいです」と笑顔。
OXRAY部門で2位の石原・医学物理士長も「タイムボーナスのルールと、うまくかみ合いました」と、速さが奏功したと振り返る。「当院で治療計画最適化の担当は基本的に私ひとり。速く、数多く策定するのは、とても大事です」と話す。日本医学物理学会の理事も務めるだけに、「恥ずかしい成績は取れないという重圧がありました」と安堵の表情。
共に、制限時間を約1時間残して計画を提出。飯田主任は「受賞をゴールにせず、得たノウハウを後輩の指導やWEBセミナーを通じて、全国の技師、物理士に還元していきたい」と意欲的。石原・医学物理士長も、アジア・オセアニアの国際大会への参加を予定するなど、学術的な挑戦を続けていく考えだ。
医学物理士は、一般財団法人医学物理士認定機構が認定する資格で、放射線医療の物理的・技術的な課題の解決を担う。1987年に日本医学放射線学会が理工系大学の出身者を対象に認定制度を設け、96年に現在の名称となった。
2002年には、理工系大学の出身にかかわらず一定の条件を満たす診療放射線技師も受験できるようになった。資格保有者は6月時点で1,593人。がん診療連携拠点病院の整備指針で医学物理士の配置が望ましいとされ、医師の負担を減らすタスク・シフトの担い手としても期待が集まっている。