徳洲新聞ダイジェスト

Tokushukai medical group newspaper digest

2025年(令和7年)08月18日 月曜日 徳洲新聞 NO.1505 4面

前立腺がんの診断精度向上・検査時間短縮
MRIフュージョン生検にAI活用
南部徳洲会病院が西日本で初導入

南部徳洲会病院(沖縄県)は、シーメンスヘルスケアのAI(人工知能)を活用したMRIフュージョン生検(MRI融合標的前立腺生検、アムコ「トリニティ」)を開始した。同検査は、前立腺がんの診断に有用とされる医療技術で、事前に撮影したMRI(磁気共鳴画像診断)画像に経直腸超音波(エコー)画像を融合させて行う。画像を融合する際にMRI画像を元に前立腺の輪郭を抽出する必要があるが、これをAIが正確に解析。臨床検査技師が手動で行うよりも、輪郭描出の精度が向上、検査の所要時間短縮など患者さんの負担軽減、臨床検査技師の負担軽減にもつながっている。

「AIを活用し、より良い検査を」と(左から)向山副院長、稲福副主任、田港みちる看護師MRI画像にAI解析で前立腺の輪郭を描出する稲福副主任ピンク色の線がAI解析による前立腺の輪郭。それをベースに囲い込む(青色の線)

前立腺は男性にのみある臓器。クルミのような形をし、膀胱の下に尿道のまわりを囲むように位置している。前立腺がんは、この前立腺の細胞が何らかの原因で異常に増殖することで起こる。早期の場合、自覚症状はほとんどなく、進行すると排尿に関する症状が見られる。

前立腺生検は前立腺がんの診断などで用いられる検査。がんが疑わしい部分と、その周囲に針を刺し(系統的生検。周囲に潜むがんを見逃さないために行う)、前立腺内の組織を採取する。

事前に撮影したMRI画像をイメージし、エコー画像で確認しながら直腸または陰嚢と肛門の間(会陰)から穿刺して組織を採取する方法が一般的だが、エコーではMRIで描出されたがんの疑わしい部分が見えにくく、限局したケースではターゲットの組織を採取できないこともある。診断がつかない場合、一定期間を置いて再生検するなど、患者さんの不利益につながる可能性も否めない。

こうした課題を改善したのがMRIフュージョン生検。MRI画像にエコー画像を重ね合わせ、融合した画像とエコーで穿刺の位置を確認し組織を採取する。これにより、患者さんに①がんの見逃しや再生検の負担減少、②診断精度が向上し早期治療への移行といったメリットが期待できる。2022年に保険収載。

南部徳洲会病院は同検査を早くから実施、今年6月下旬に検査で使用する画像診断装置にAIを導入した。西日本では初めて。向山秀樹・副院長兼泌尿器科主任部長は「当院では放射線治療、手術も行うことができ、診断から治療まで完結できる環境を整えています。その強みがあるからこそAIの導入が、より生きます」とアピールする。

AIは、MRIとエコー画像を融合する際に行う前立腺の輪郭描出に活用。それまでは撮影したMRI画像を担当の臨床検査技師が装置に取り込み、手動で輪郭をマーキングしていたが、AIの解析システムにより、自動で囲い込むことができるようになった。従来よりも正確かつ短時間で行えるようになり、検査の精度向上、臨床検査技師の負担軽減が実現した。

向山副院長は「輪郭がない状態の画像では、前立腺の位置はわかりません。より正確な位置をAIが示してくれることで、検査の質も上がります」と強調。稲福直美・臨床検査技師副主任も「人が行うと時間がかかるし、日によっても差が出ます。その点、AIは精度が安定しています。かかる時間も短く、技師の負担軽減につながっています」と話し、「その後のMRIとエコーの画像を融合させる作業も、ずいぶん楽になりました。融合の精度自体、以前よりも高まっているように思います」と笑顔を見せる。

前立腺がんの患者数は年々増加。向山副院長は「早期発見の場合、10年生存率はかなり高い」と指摘し、より質の高い検査に意欲的だ。

とくにAIのさらなる進化に期待を寄せ、「MRIフュージョンで言えば、画像の融合や、画像で疑わしい所見のピックアップなどをAIが行えるようになると、さらに検査の質が上がると思います。もちろん最終的なチェックは人が行いますが、人による個々のばらつきをできるだけ減らすことが重要だと思います。AIを進化させるためにもデータを蓄積し、確実な診断をつけられることに協力したいと思います」。

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